表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
嫌われ者の自分が、HP5000の美少女に転生した。  作者: 御狐
第一章 新しい人生の始まり
23/77

第20話 お腹いっぱい食べられる幸せ。

 朝の日に照らされた広い廊下を歩きながら、私はきょろきょろと周りを見渡した。

「……どうしたんだぜ?虫でもいたか?」

「あ………えっと…ご…ごめん…なさい。……な……何でもない…から。」

私は反射的にアンリに謝った。

どうやらアンリは、私の行動を変に思ったようだ。…実際に自分でも変な行動だと思っている。

この行動は私の悪い癖の一つで、緊張したりすると無意識にあたりを見渡したりしてしまうのだ。

…この癖のせいで中学生の時、クラスメイト達から気味悪がられていた気がする。

アンリは少し考えるそぶりをしてから、ニカッと裏表もなさそうな笑顔を私に見せた。

「アハハハ…なるほどな!…謝る必要なんてないぜ!癖だったらアタシも似たようなの一つや二つあるから、ミカの癖を馬鹿にしたりしないぜ!」

「……!………。」

アンリの反応は正直意外だった。てっきりネタにして笑い飛ばすのかと思ってた。


…もしかして私が気にしている事を考慮してくれたのかな。


もしそうだとしたら、私はアンリに気を使わせてしまったのかな。

あんまりおどおどしないようにしなきゃ。気を使われてばかりでは、いざという時に役に立てない。

「……あ…ありがと。…お腹すいたから……早く行こ?」

「おお!そうだな…早く行こうぜ!」

私とアンリは食事処まで走った。

途中、履き慣れない靴のせいで何度か転んだけど、その度にアンリが起こしてくれた。

またしても私に気を遣わせたことへの申し訳なさと、アンリの優しさへの尊敬で胸がいっぱいになった。

………。

………………。

食事処に着いた私とアンリは、マリアに椅子に座って待つように言われた。

長細いテーブルにお洒落な椅子が並べられている。部屋の雰囲気は…ロココ様式って言うのかな?なんとなく、貴族達が食事会をしているイメージがあるけど…これは偏見かな?

椅子に座って5分ほど待っていると、何やらおいしそうな匂いがしてきた。


ガチャリ


多分キッチンに繋がっている扉が大きく開かれた。ちょっと古臭い雰囲気のワゴンを持った稲穂色の少女と、銀色のトレーを持った小さなメイドさんが、何やら満足したような表情で出てきた。

ワゴンには料理がいっぱい乗っていて、トレーには花の絵が描かれたティーポットと人数分のティーカップがきれいに乗っている。

「お~うまそうだな!早く食べたいんだぜ!」

「えへへ…ご主人様が好きだった料理を久しぶりに作ってみたんだ。みんなの口に合うといいな…て、ミカちゃん!?」

みぃが、まるで信じられないものを見たような様子で驚愕した。

「な…なに?…私の顔に…何か……付いている…?」

「か………」

「か…か?…みぃちゃん…どうしたの…?」

「か…かわいいー!!」

突然、みぃが私をひょいっと持ち上げる。私の目線からだとみぃを見下ろしている状態になった。


あれ?これって遠目から見れば、たかいたかいをされている子供みたいに見えるのでは?


正直ちょっとだけ恥ずかしい…。でもそれより、みぃが何やら聞き捨てならない事を言っていた気がする。

「え…えとえっと…か可愛い…?……私が…?」

「うんそうだよミカちゃん!ミカちゃんかわいい!超かわいい!!メイドさんの服とっても似合ってるよ!!絵本に出て来る精霊さんみたい!!」

みぃは早口で、これでもかと褒め始めた。

早口なのによく聞き取れるのは、みぃの滑舌が相当良いからだろう。…ちょっと羨ましい。

「そ…そう…かな…?………っ…ん…」

褒められる事がすごく嬉しくて、ついほんわかと緩い表情になってしまった。

自分で言うのは難だけど、可愛く転生することが出来て良かったと心の底から思った。


………やばいかも…今の私、すごくキモい。


「…あ………えっと、その…ご飯…早く食べよ…?」

「あ…ご…ごめんね!ミカちゃん、お腹空いているもんね!」

みぃは気を切り替えて、私を椅子に座らせた後に、料理を机に並べ始めた。

並べられた料理はとっても洋風だった。

柔らかそうなスクランブルエッグに、人数分のパン、みずみずしいサラダ…シンプルな献立だけど、美味しそう。あと、マリアがお茶を淹れてくれた。


不思議な香りがする。これは紅茶…いやハーブティーかな?


「ふふ…こちらのお茶は、【サファイアハーブティー】といいます。わたくしの故郷でしか出回っていない大変貴重なものですので、良く味わってくださいませ。そして感想をお願いします。」

「あ………そうなの……ですか…」

貴重と言われると緊張する。私はティーカップを手にとって口に近づけた。深みのある青色の液体が私の舌を撫でて、のどを通って行った。爽やかな香りが頭を軽く刺激させる。

「……!美味しい…です!」

頭に浮かんだ称賛の言葉をそのまま伝えた。

「…うん!美味い!…爽やかで、なんか気分がすっきりしたぜ!」

アンリも本当に良い笑顔で、素直な感想を述べた。

「そうですか。…フフッ。…失礼。率直なご感想にわたくし、感銘を受けました。」

一瞬だけマリアが笑ったような気がする。すぐにクールな感じの表情に戻ったけど。

「マリア、美味しいお茶ありがとう!…さっ!いただきます。」

みぃが手を組んで、祈るような仕草をして食事を始めた。


ほぇー…異世界にも食べるときの挨拶とかがあったんだ。


私も、みぃに習って祈るように手を組んだ。

「い…いただきます。」

前の世界の習慣とは、似ているけど若干違うからちょっと違和感がある。

朝の行水もそうだけど、この世界には前の世界とは違う習慣が多い。


こればっかりは、少しずつ慣れていくしかないかな。


まあ、生活していけばいつか慣れるかな。

そんなことを思いながら、自分のパンに手を伸ばした。

「わあ…ふかふか…」

掴んだ感触が思っていたよりも、柔らかでもっちりとしていた。

「ぁ…はむっ……ん…」

大口でパンに嚙みついて、味わいながら飲み込んだ。

頭に砂糖とかとは違うパンの甘味がほんのりと伝わった。

実を言うと私自身、あまりパンが好きではない。そんな私でもおいしいと心から感じた。

次に私は、スプーンでスクランブルエッグを掬い取った。まだ若干湯気がほのかに立ち上っており、その匂いだけでお腹がすいてくる。早速食べてみた。

「あ…これもおいしい…!みぃちゃん…とっても美味しい…よ……!」

ちょっと行儀が悪いけど、私は食べながらみぃのことを褒めた。

「こりゃーうまいぜ!スクランブルエッグなんて、久しぶりに食べたんだぜ!」

アンリも右手の親指を立てて、グッジョブ!みたいな仕草をした。

「えへへ…みんなの口に合ってよかった~。まだまだあるから、いっぱい食べてね!」

「うん…!いっぱい食べる…!」

私はちゃんと味わいながら満足いくまで食べた。

………。

………………。

三皿目にいったあたりで、私はお腹いっぱいになった。

三皿分の料理なんて本当に久しぶりに食べた。

「お腹いっぱい食べられる……ふぁああ…幸せぇ…」

今回のことで、みぃへの好感度が上がった。今の私にはみぃが神様に見える…。


これから…こんな素敵な毎日があるなんて…なんて幸せなんだろう…


あの地獄の日々が噓のようだ。サディとダストと変態騎士団長もいない。拷問も実験もされない。こんな優しい世界ところに私を連れてきてくれたみぃの役に立ちたいと、改めて思った。

みぃ達は2週間と5日後に来る試練に対抗するために少しでも戦力が欲しいはず。だからそれまでに、私も十分強くなって戦力の一つになる。

私は武器を持って戦うことはできないが…幸いにも魔法は使える。MPが少なくて不安だけど、レベルが上がれば、MPとか攻撃力とかが上がるかもしれない。レベル上げを手伝ってくれる仲間はいる。


…よし!私も頑張るぞ!


意気込んだ私は【サファイアハーブティー】を飲み干した。

爽やかなミントのような香りで口の中がいっぱいになった。

人生で初めての食事描写です。

自分の中では、かなり頑張りました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ