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嫌われ者の自分が、HP5000の美少女に転生した。  作者: 御狐
第一章 新しい人生の始まり
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第19話 アンリと一緒に……。(挿絵アリ)

 地下から戻ってみぃのご主人様の部屋から出た私たちはそれぞれ別れた。

マリアとみぃは料理を作るためにキッチンへ行き、私とアンリは体を洗うため行水所に行った。

マリア曰く私は体を洗ったほうが良いとのこと。アンリも、マリアから同じことを言われたらしい。

私たちは言われた順路を通り、2分ほどで行水所に到着した。

中に入ってみると銭湯とかでよく見た棚があり、桶とタオルがちょうど人数分置いてあった。

「みぃが時間がかかるって言ってたし、のんびりしようぜ!」

「え?……あ…う……うん。」

アンリは大雑把に服を脱ぎ、桶とタオルを持って入っていった。

私もいそいそと服を脱いで中に入った。

中は、田舎にある銭湯ほどの広さで…つまりすごく広い。

入ってすぐのところにお湯がポコポコと湧き出る井戸のようなものがある。

アンリはそのお湯を持っている桶いっぱいに汲んで、鏡が付けられた壁のところまで行った。

私もアンリと同じ行動をしてアンリから少し離れたところに行って、そこに置いてあった椅子に座った。

鏡が目の前に備え付けられていて、私はジッと鏡の中にいる私を見つめた。

鏡の中にいる私の姿は、自分で言うのもなんだがすごく痛々しい姿をしている。

全身に切り傷の痕、鞭や鈍器で殴られた痣、炙られたときにできた火傷、魔法や呪いなどでできた特殊な傷、実験によってできた凄惨な薬傷…この全ての傷はサディによってつけられたもの。

前の世界で、父親からひどい暴力を受けたことはあったが、ここまで酷い傷はつけられなかった。


転生前の方がまだ幸せだったのかもしれない……。


心の中で呟きながら、タオルにお湯を浸して体を拭き始めた。

「……ぅ。ちょっと沁みるな…」

傷の中には未だに塞がっていないものもある。

だから、あまり水につけたくなかった。

「でも、きれいにしないとだめだよね…」

実際、私は何日も体をまともに洗ってない。

ここで洗っておかないと、みんなからなんて言われるか…

「………。………とりゃ!!」

急に謎の声が聞こえたと同時に何か柔らかいモノが私の背中にぶつかった。

「ひゃぃ……!」

びっくりして私は振り返った。…オレンジ色の濡れた髪が目に入った。

なんと、アンリが後ろから抱き着いてきたのだ。

左手には透明な液が入った瓶が握られている。

「ア………アンリちゃ……んっ?!」

「にへへ!どうだぜ?!アタシの作ったボディソープは!貴重な素材をふんだんに使用しているぜ!金貨1000枚はするものを今なら金貨500枚で売ってもよいぜ!…どうだ、買わないか?!」

アンリはボディソープが付いたヌルヌルする手で、私の身体を隅々まで洗い始めた。

「………っ!!!………っぁ!!」

すごい…とにかくすごい…。この手さばき…すごすぎてよく表現できない。

あたまが……うまくまわらない……とろけちゃう……あれ…?

「いい体してるねえ~羨ましいぜ!………。………なあ。ミカ…聞いてもいいか?」

「ふみゅ?なあにぃ?あんりちやぁ…ん。」

「ありゃ?…効きすぎたっぽいな……すぐに流すぜ。」

ザバァという水の音が聞こえたと思ったら私はハッと我に返った。

今のは…何だったんだろう?一瞬だけ頭がボーっとした感じだった。

それよりも、アンリの声がいつの間にか真剣なものに変わっている。

「えっと…アンリ…ちゃん……?」

「ミカ、この前アタシの店に来た時は、赤髪の姉ちゃんと金髪の兄ちゃんも一緒だっただろ?それなのに……なんで一人なんだ?……あの後、何があったんだ?」

アンリの質問に私は深く悩んだ。答えるべきなのか、黙っているべきなのか。


みぃの時は、つい感情的になってそのことを漏らしちゃったけど…。


こういう事は普通、人に話すことでは無い…と思うけど、話して楽になりたいとも思っている。

数分の間、この場所は私たちの息遣いと体を洗う音だけが支配した。

…私は、決心してアンリの質問に答えることにした。

「私………ダストとサディから……2人から……裏切られた。…いや、嵌められてた…。」

「嵌められてた…?一体どういうことだ?…詳しく教えてくれ。」

アンリに私は全てを打ち明けた。街でサディ達と出会ったこと、森に行ったこと、騎士団長に暴行されたこと、こっちの話を一切聞くことがなかった裁判官のこと、そして…サディに拷問されたこと、全てを吐き出すようにアンリに言った。話しているとアンリが訊いてきた。

「…なあミカ、ミカは街で声をかけられてそいつらの仲間になったんだよな?」

「うん。」

「こんなこと言うのもなんだが………疑ったりしなかったのか?」

アンリの言葉を聞いて私は、冷水を頭から浴びたような気分になった。

そうだ!あの時の私はどうしてダスト達を疑わなかったのか?

そんな事にずっと気が付かなかったどころか、考えてすらいなかった。

「そういえば……そうだ…!私……疑わなかった…?なんで……」

「落ち着いて…。………考えられるのは、ミカの頭が相当なお花畑か………その2人が何かの加護を持っていた…。」

「加護…?加護って、なに…?」

「加護っていうのは…大雑把に言うと、特殊能力みたいなものだ。………そうだ!なあミカ!その2人と会った時、何か気づかなかったか?例えば…体を触られたとか、自分の影を踏まれたとか、何でもいいぜ!!」

「え…えと………」

私は2人と会った時のことを思い出す。

確か、小さく独り言をしながら歩いていたらダストに声をかけられた。その時は……ダストを怪しんでいた気がする…………そうだ。その後…私、確か…。

「………目。………ダストと目が合って、一瞬だけ…ほんの一瞬…頭が真っ白になった…。」

アンリは少し考え込んで、ハッと何か気づいた様子で口を開いた。

「それだな………ダストって言う奴が加護を持っていて、発動条件が相手と目を合わせる…とかなんだろうな…!」

アンリは納得したように「なるほどな」と言いながら頷く。

「ミカ、教えてくれてありがとな!……。………アタシは…そろそろ上がるぜ!」

アンリは私の体に付いた泡を流し、早足で脱衣所に向かった。

「今更だが…傷をえぐるようなこと訊いちまって……その…ごめんな。」

脱衣所とここの間のところでアンリは立ち止まって、私にそう言った。

「………嫌だったら…答えない……私が言いたかったから………アンリちゃんに…言った…だから、気にしないで…」

「…そっか………ありがとな…!」

アンリはニカッと微笑んで、脱衣所に行ったようだ。


…さてと、私もそろそろ上がろうかな。


桶に入っているお湯を頭からザバァと被り、鏡をチラ見した。

「………!!傷が…薄くなっている?」

さっきまであった痛々しい傷がほぼ見えない程、薄くなっている。

その事に私は驚きと喜びを露わにした。

理由を考えていると、さっきアンリが使ってくれたボディソープを思い出した。

おそらくは、あのボディソープには治癒効果があったのだろう。


後でアンリにお礼を言っておかなくちゃ。


私はタオルと桶を持って脱衣所に向かった。

脱衣所に入ると、ちょうどアンリが身体を拭いているところだった。

「あ…アンリちゃん!…さっきはありがとう…!」

傷を治してくれたこと、話し相手になってくれたこと、そして…隔てることなく接してくれたことへの感謝を込めて私はアンリにお礼を言った。


本当だったら、もっといろいろな言葉で伝えるべきなのかもしれない。


だけど、私は…ボキャブラリーに乏しい。

間違って意味の違う言葉で言ってしまったら、アンリに失礼だし何より…恥ずかしい。

だから、ありがとうの一言にたくさんの感謝を込めて伝えた。

「ん?……ああ…!こっちこそありがとな!…。………。」

アンリは何かを見て固まって…いや、困惑しているようだ。

「………?アンリちゃん、どう…したの…?」

「ん?いやさ…戻ってみたら、なんか着替えが用意されてたんだぜ。」

「き…着替え…?」

アンリが私に渡してきた。どうやら私の分もあるみたいだ。


…なんだろう?


服を広げてみた。…なんかひらひらしている服ばっかり。

えっと…子供が履いてそうな下着に、真っ白なエプロンと青色のワンピース?

……これは、ホワイトブリム?あと、白色のニーソックスと小さな靴。


あれ……これって…マリアが着ているアレに似ているような…。


私はアンリの方にゆっくりと顔を向けた。

「………。…まあ、わざわざ用意してくれたものだ。…アタシは、着るぜ!」

アンリは軽く苦笑して、着替え始めた。

「………。………………。」

どうしようかな?私もこれを着るべきなのかな?正直言って…なんか恥ずかしい。

でも、冷静に考えると今の私が持っている服って、ボロボロの囚人服といつの間にかあった古びたフードしかない…。それだったら、これを着るほうが100倍マシかな。


………。うん…着よう!


私は覚悟を決め、その服に着替える。

来たこともない服だからかなり手こずったけど、先に着替え終えたアンリが手伝ってくれたおかげですぐに着替え終わった。

挿絵(By みてみん)

「おおスゲーな!だいぶ似合ってるぜ!」

「そ…そう…?」

私は自分の姿を確認すべく、脱衣所に設置されている姿見の前に立った。

「わあ……」

私は息をのんだ。鏡に映っている少女は、可憐という言葉が似合うほど綺麗だった。

真っ白でサラサラの長い髪、青色の服の上に白いフリル付きのエプロン、頭の上に大きなホワイトブリム、灰色の目は濁った色じゃなくて透き通るような色になった気がする。

一言で表すとしたら、純白の幼いメイドさんって感じだ。

「こ……これ…が、…わ…私………?」

余りのすごさに自分の声が震える。

「ああ!そうだぜ!元々可愛いのがさらに可愛くなったんだぜ!まるでアニメのキャラみたいだぜ!」

アンリは孫の晴れ着姿を見るおじいちゃんのような顔で私の姿をいろいろ褒めてくれた。

「あ…ありがとう。…アンリちゃんも………可愛いと……思う…。」

「アハハ…アタシの場合、何故かコレジャナイ感がするけど………まあ、ありがとな!」

アンリは頭を搔くような仕草をする。

ちなみにアンリは、メイド服姿で頭に青色のバンダナを付けているせいで………店員姿の時と大して変わってない。すごく失礼だけど、なんか……コスプレっぽい。

「さ!そろそろみぃ達の所に行くんだぜ!」

「うん。…そうだね……!」

昨日と比べるとだいぶすっきりした気分で、足取りが驚くほど軽い。

私とアンリは、みぃ達が待っているであろう食事処に向かった。

2023/6/15 1:37 挿絵の追加。ついでの文章の修正と追加。

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