。魔弾鬼が行く。
読んで頂き、ありがとう御座います。
「猫の親子!」
遅い!間に合わない‥無理に猫を避けようとして、バイクの体制を倒したが‥無理だ。ガードレールが迫り来る中、私は本棚に隠してあるBL雑誌の事が頭を過った。
「はあぁぁ、こんな山奥の峠下道に猫とは。
運が悪過ぎだ。」
バイクはガードレールにぶつかり大破している。何故分かる?ガードレールにぶつかった反動で私は宙に飛ばされ、バイクが哭き崩れる姿を上から見ていたからだ。去らば私の相棒エリミネーター400SEよ。
私はそのまま20㍍の崖下へと叩き墜ちて行った。
「猫の親子‥無事だと良いなぁぁ‥‥。。」
薄れ行く意識の中で、ぼんやりとそんな事を考えて、私 宮本知江 17才の生涯を終えた。
◇
「‥や‥めや‥娘や、大丈夫かもし。」
「‥ここは?‥あれ私は‥。」
夢?夢にしては何かリアル‥。
「ここは霊界じゃもし。」
‥霊界‥!
「じゃ‥やっぱり‥私、死んだんだ。」
「正確にはまだ、生きておるんじゃもし。」
「‥どうゆう事ってか‥あんたは誰よ?」
「儂は、あの峠下の山神でなもし。あの山猫の親子は儂の使いの霊猫なんじゃよもし。」
「山猫‥霊猫?なんだ普通の猫じゃなかったんだ。通りであんな所に居た分けだ。‥ってコラ!山神のじーさん、どうしてくれるさ!どう落とし前付けるつもりよ!えぇ~っ!」
「口が悪い娘よの~もし。じゃからこうして出這って参ったのじゃもし。」
「で?」
「運良く後続車がおっての、お前さんは瀕死の状態で病院に運ばれたんじゃよもし。」
「ほいで?」
「このままじゃ明け方までには御陀仏じゃもし。」
もしもし煩い神様だ。
「儂の使いが仕出かしたから、彼等に力を借りて娘さんを助け様と思ってなもし。お前達。」
[我等親子を庇い、大変な目に合わせてしまいスマヌ。私は父の魔斬鬼。]
〈僕は息子の魔弾鬼。ゴメンねお姉ちゃん。〉
申し訳なさそうに謝る親子猫を見ていると、何だかどうでも良く‥全然ならない!逆に怒りが沸々と込み上げて来る!
「どうやるのさ?」
「霊猫達の魂を、娘さんの魂を融合させて復活させようとな‥‥」
「チョッと待てぇ~クラァ~私の相棒、私のバイクはどうするつもりで居るんだぁ~ああぁん?」
「いやぁバイクはそのままぁ‥‥」
「おいおいおいおい、白バイ乗りに憧れて、幼稚園の頃からお小遣いをセッセと貯めて、爪に火を灯す様な生活を続けて、ヤッと手に入れたバイクを‥まさかそのままて事は無いだろうな?」
「わっ分かった。ならこうしよう、魔斬鬼は娘さんを魔弾鬼はバイクを復活さる。と言うのはどうじゃもし。」
「ああ。それなら文句無いわ。じゃ私は寝て起きるから、後は宜しく!」
「‥ぁぁそれとじゃが‥無邪鬼を‥退‥‥治‥」
最後の方にじーさんが、何か言ってた‥‥
◇
「ピッ~ピッ~ピッィ────────午前3時20分‥御臨終です。」
「ガバッ!復活!ピッ~ピッ~」
「ええぇぇぇぇぇぇ─────────!?」
山神のじーさんは約束を守り、私は一命を取り止めた。と言うか、無傷で復活した。
ママやパパは泣き喜んでいたっけ。
けど、それから病院がてんやわんやの大騒ぎでね、精密検査やで3日間入院して、警察で事情聴取やガードレールの弁償とかで駆けずり回り、高校行けたのは事故から一週間後だった。
バイク?バイクはガレージの中に有る。てか居る。新品同様でね。家に帰ってくるなり、相棒のエリミちゃん‥魔弾鬼だっけ?軽くワックスを掛け、更にピカピカにした。
何時もの日常に戻った。
「ププッププッ‥バン!」
目覚まし時計を止め、2度寝‥をと布団を被ると、ママが‥「ちえ!起きて~学校の時間よ~。」と、1階から叫ぶ声。
死の淵をさ迷い、山神に文句を言ったなんて、今だに信じられないが、ピカピカのバイクを見たら夢じゃ無いと分かる。
家を出て。ガレージ奥の相棒に、
「お早う!行って来ます。」
と挨拶をして学校に向かう途中、そこ角を曲がり歩いていると、後ろから‥
「ちーちゃんお早う。」ほら来た。
「ミカっぺ、お早うさん。」アダ名はミカっぺ。双森ミカは私の幼稚園からの幼馴染みで同じ歳。
「ホンと大丈夫?事故ったて聞いたから、お見舞い行ったら、もう退院しましたって。ビックリよ。」
「病院は大袈裟なんだよ。チョコっと擦りむいたくらいで、大騒ぎでさ。」
「ちーちゃが無事で良かったよ。」
「心配させちゃってゴメンね。ミカっぺ。」
「良いってこったね。」
ミカっぺと登校の途中、公園に差し掛かった時、「貧乏野郎が、俺達と同じ教科書持ってるなんて変だよな?」
ランドセルを取り上げて、中にある教科書を破かれている。それをホコリまみれの少年が泣きながら耐え忍んでいる光景。イジメだ。それもかなり悪質。
私は無意識に少年の側まで駆け出した。
「コラ!ガキが!」私の声に威圧されたのか、イジメっ子達は、「あっ!ヤベェ!変なババァが来たぞ。逃げろ!」
一目散に逃げて行き、残され少年を立たせ、ホコリを払いながら、
「パン!パン!サッサ。少年、大丈夫か?」
「ありがとう‥オバ‥お姉ちゃん‥。」
私は、散乱した教科書をランドセルに戻し、少年に私は、「負けるなよ。少年!」と励ましの言葉を掛けると、少年は涙を拭きながら、
「うん!頑張る!‥けど、あいつ前までは良いやつだったんだよ。最近、人が変わっちゃたんだ‥。」
少年と別れ高校に向かった。
普段通りの授業を受けながら、
(17才の私を捕まえて、ババァとは‥腹が立つ。今度会ったらヤキだなぁ。‥‥それにしても変ね。突然、人が変わる何て‥[無邪鬼です。])私の中で違う声が聞こえ叫んでしまい、
「ワアアァ!」
「どした~宮本。病み上がりの時差ボケか?」
「「「「ワハハハ~!」」」」
私は頭をポリポリしながら「サーセン‥。」
気を取り直して、
(何?誰よ?急に。[ちえ様。魔斬鬼です。]はあ?マジ‥マジか。マジよね。で何、無邪鬼って?[無邪鬼は無垢な魂を操り、人々を陥れる邪の者]それと私、何の関係が有るのよ?[山神様との話で無邪鬼退治をと。]えっ?そんな話‥ん?そう言えば最後の方に何か‥言ってた様な‥けど何で私なのよ?[一瞬の判断力と運動神経。自己犠牲を惜しまない正義感に山神様が目を付けて、です。]はあ~そおぉ‥。)
世の中そんなに甘い話は無いか‥。
生暖かい目で、宜しくお願いします。