あの後
会議室には、父様と母様が待っていた。
「アル! 戻ったのか!」
「ええ、さっき戻りました」
俺は魔王軍が元王都に攻め入ろうとした時、アバークロンビー領を取り返し、父様と母様をリベリオンに加入させた。
それのせいでギリギリの登場になってしまったのだが、終わりよければすべてよしだ。
「魔王はどうなったのかしら?」
「俺と一体化しました。これでやっと魔法が使えます」
「アルは大丈夫なの?」
「ええ、全然問題ありませんよ」
二人には、魔王と俺が同一人物だったことを話している。ただ、詳しく説明したわけではないので、これから一緒に聞いてもらう予定だ。
「じゃあ、みんな席に着いてくれ。説明を始める」
『私も説明に参加するわ。その方がわかりやすいだろうし』
ジュリアは、聖剣の状態でふわふわと飛んできて、俺の隣で人化した。
「ジュリア、よろしく。それと、俺のことはアルフレッドでいいぞ。他のみんなも、そっちで呼んでくれ」
さて、どこから説明すればいいのやら。
「そうだなあ。最初は魔王の発生のところからだな。まず、オリヴィアの魔法で洗脳された時、俺は失いかけていた意識の中で、精霊結晶の中にいた精霊に話しかけられたんだ。そして、その精霊に復讐心を植え付けられ、オリヴィアとジンを殺そうとした」
「でも、それは失敗に終わったわ。アルフレッドはオリヴィアの魔法で川に落ちて、私はアルフレッドを助けるために川に飛び込んだのよ。そしたら、アルフレッドの持っていた精霊結晶がいきなり黒く光り始めて、アルフレッドの魔族の部分を持っていっちゃったわけ」
「こうして生まれたのが、あの魔王だ。体のベースは俺の魔族の部分。それを魔力で具現化して、実体を持っていたんだ」
「そして、そのまま魔王として活動して、復讐を果たそうとしていたわけね」
この復讐劇は、ギリギリのところで止めることができた。
実をいうと、魔王と接触した時点で勝ちだったわけだし、結構安全に勝てたんだよな。
「なるほど。だから俺の会ったアルは、別人のようだったんだな」
「父様と会った時の魔王の俺は、人格が精霊ベースでしたからね。見た目だけ俺だった感じです」
その精霊は、俺の魔力の中に溶け込んで、今は大人しくなっている。
もしかしたら、なにかの拍子で出てくるかもしれないな。
「それで、精霊に持ってかれたあとのアルフレッドは、川の流れで王国の方まで戻ってきたのよ」
「そして、そこでヨハンに再開したわけだ」
「おう、そうだな。あの時は驚いたぞ。なにせ、ボロボロのリベル…… じゃなくて、アルフレッドが王城に来たんだからな」
当時のヨハンは、才能を生かして、王宮専属の魔道具師となっていた。
「俺はヨハンに世話になりつつ、国王に帝国であったことを報告した」
「でも、アレックスたちの行いはそこからよくなる一方で、アルフレッドのことを信じなかったのね」
「聖剣があったのに、アル君の話を信じなかったの?」
「私の言うことを真に受ける国なんて、せいぜい教国くらいよ」
「権力者なんてそんなもんだ」
本当、なにをどう言おうと信じなかったな。
王国自体、勇者を好いてはいなかったし、仕方ないと言えばそうなのかもしれない。
「そこで俺は、一度アバークロンビー家に戻り、父様と母様にこれを話して、シャルとフィリップを連れて身を隠したわけだ」
「先代魔王との戦いの本格化が始まってきたからね。危険になる前に隠れたの」
「それで、人類は魔王に勝利して、帝国は王国を裏切って占領した。俺は王城にいたヨハンとリューリク、その護衛を無理やり連れ出し、隠した」
「ここでリベリオン結成。そして、そのボスにあたるリベルの誕生ね」
「そして、五年かけて仲間を集めて、魔王を倒した。あとは王国の再建だ」
次の目的は、王国を再建し、教国との同盟を得ることだ。
「王は誰がやるんだ?」
アレックスが最もな質問を飛ばしてきた。
「俺はなんのために、リューリクを助けたと思う?」
「なるほど。王家の人間か」
「そういうことだ」
元王子であったリューリクに、新王国の国王をさせる。
「そして、そこに魔族を加えるのよね」
「「「「…… え?」」」」
ジュリアの言葉に、勇者四人組による見事なハモリが響いた。これも久しぶりに聞いたな。
「ど、どういうことだ? 魔族を加えるって?」
アレックスは椅子から立ち上がり、少し身を前に出して質問してきた。
「そのままの意味だ。さっき連れてきた四百人の魔族。あいつらは共存に賛同した者たちだ」
「いや…… だがな……」
「なんなら、俺が魔王だし。てか、これが俺の夢みたいなもんだし」
「う、うーん…… なんとかなる…… のか?」
「なんとかするんだよ」
国王リューリクと、魔王アルフレッドによる新王国の建国。魔族と人間の共存する楽園。いい響きじゃないか。
この話は、リベリオンの団員にも伝えてある。みんな、きっと受け入れてくれるだろう。
「さて次にやることは、新王国、ハイタス王国を作ることだ。さあ、頑張るぞ!」