表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
98/169

共存への道

 俺は完全に動きの止まった魔族に向かって、〈クリスタルレーザー〉をちらつかせた。すると、ほとんどの魔族が我を取り戻し、森の方へ一斉に逃げだした。

 それと同時に、帝国軍の片付けの速度も驚くほどに早くなっていた。


「あの精霊、どんだけ強さを強調してたんだよ……」


 だが、そのおかげで早々に終わらせることができた。そこだけは感謝だな。

 手のひらの上の〈クリスタルレーザー〉の圧縮率を変える、という遊びをしながら終わるのを待っていると、四人の魔族が俺の目の前に来た。それぞれ、百人ほどの部下を連れている。


「へぇ、思ったよりも多かったな」

「魔王様、人間との共存というのは本当でしょうか?」


 精霊の記憶によると、ナディアという魔族のようだ。


「ああ、本当だ。お前らは俺についてくるのか?」

「私は、魔王様にどこまでもついていきます」


 …… あの精霊、この子を抱いてやがった。てか、それ以前に命を助けてやがる。なんだこの複雑な気持ちは。怒りと感謝が同時に込み上げてきたぞ。


「それにしても、まさかカルロとステラがついてくるとは、驚いたな」

「俺は、魔王様の持っている力がわかった。自分の欲しいものを手に入れる力だ。その力なら、人間との共存もできると思う」

「へぇ、ずいぶんと信用されたもんだ」

「俺の軍でできなかったことを、一人でやり遂げられたからな」


 あの時に精霊が行った信用を得る作戦、予想以上に効果があったみたいだな。

 共存を望む魔族が多いことはいいことだし、これは素直に感謝だな。


「私も、魔王様ならできると思うんだよねー」

「ステラは俺に怯えてなかったか? てっきり逃げるかと思ったんだが」

「私、命令に逆らったことなかったはずだよー。そう思われてるのは心外なんだなー」

「まあ、言われてみればそうだったな」


 あの精霊自身、ステラに興味がなかったせいで、あまり情報を持っていなかった。これから見ていくしかないか。


「セルジオは、共存に興味があったのか?」

「はい。ずっと前から考えておりました」

「平和主義そうな顔してるもんな」

「魔王様がそうおっしゃるのなら、そうなのかもしれません」


 頭脳派の魔族がいるのはいいことだ。共存に導きやすくなる。


「その他の魔族も、俺についてきてくれるんだな。これからはともに頑張っていこう」


 俺がそう言うと、魔族は少し戸惑いながら膝をついた。


「なんか、優しくなったなー」

「雰囲気が変わっておりますな」

「口調も変わってるな」

「全員、魔王様に失礼ですよ」

「ほら、さっさと行くぞ」

「「「「はっ!」」」」


 俺は魔族の仲間を引き連れ、元王都のリベリオン本部に向かった。


 ✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽


「アル君!!」


 本日二度目のソフィの飛びつき。もちろんしっかり受け止め、ぎゅっと抱きしめた。


「ただいま、ソフィ」

「おかえりなさい! アル君!」


 あれから帝国軍は帝国に帰り、ほとんどの魔族はどこかへ消え去った。俺についてきた魔族は、とりあえずひとかたまりになって、地下の部屋に入ってもらった。

 リベリオン本部。見た目は館だが、地下に大きく深く伸びているため、見た目以上の収容力がある。

 こいつの元は、王城の近くにあったアバークロンビー家の館だ。それを俺とヨハンで大改造を施し、今の形となった。


「アルフレッド、今回のことは本当に助かった」


 勇者を代表してか、アレックスが俺に頭を下げた。


「気にするな、と言っても無理だろうから、これからはリベリオンとして働いてもらうぞ?」

「もちろんだ。なんでも言ってくれて構わない。できる限りのことはやる」

「よし、バカやったぶん、存分にこき使ってやるから覚悟しとけ」

「了解、アルフレッド」


 リベリオンの戦力がどんどん増加していくな。初代魔王に現魔王に勇者。だんだんチートくさい組織になってきたぞ。


「なあ、アルフレッド、一つ聞きたいんだが、いいか?」


 アレックスが手を挙げつつ、俺に言った。


「おう、質問はどんどんしてくれ」

「結局、あの魔王とアルフレッドってどんな関係だったんだ? というか、俺たちが洗脳されてから、いったいなにがあったんだ?」

「話すと長くなるが、それでもいいか?」

「ああ、教えてくれ」

「わかった。じゃあ、とりあえず座れる所に移動するか」


 そう言って俺たちは、館の会議室へと向かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ