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あとは待つだけ 〜リベル〜

 俺がコロネン領から一週間かけて元王都に戻ってきた時、バレンタイン領が魔王に占領されたという情報が入ってきた。


「ヨハン、どういう状況だ?」

「少数の軍隊がバレンタイン軍と交戦した。その部隊自体は負けたんだが、あとから魔王が出張ってきたらしい」

「直接か?」

「ああ、魔法でバレンタイン軍を殲滅して、一気に占領まで押し込んだ」


 魔王が直接手を出した理由がわからないな。少数の軍隊は囮だったってことか? いや、そんな戦い方をするやつじゃないぞ、あいつは。


「意図が読めないな」

「同感だ。だが、事実だけ見れば予定通りだろ?」

「そうだな…… リベリオンの動きは、このまま続行しよう」

「了解だ」


 なにがしたかったのかはわからないが、それがリベリオンに関係するかと言われると、まったくない。気にせずにいようか。

 しかし、バレンタイン領まで占領されたとは。今までの魔王は、アバークロンビー領ですら落とせなかったというのに。

 いや、それも凄いことだが、俺が驚いているのはそこじゃない。一番おかしいのは、攻め込むスピードの方だ。

 たった一週間でもう元王都の目の前まで迫ってきている。この速度は異常なほどに早い。

 俺たちの準備も早く進めないとだな。


「リベル!」

「うお!?」


 俺は考え事をしていたせいで、こちらに高速で接近してきたジュリアの存在に気がつかなかった。そのため、俺は顔にしがみついてきたジュリアに、勢いのまま押し倒されてしまった。


「いてて……」

「リベル! クラリスを連れてきたわよ!」

「おお、ジュリア。ずいぶんと早く戻ってこれたんだな」

「クラリスの魔道具のおかげね。ずっと道案内してもらっていたわ」


 どうやら、スマホ型の魔道具を渡しておいて正解だったようだ。これだけ早く戻ってこれたってことは、相当上手く行ったみたいだな。


「いやぁ、さすがはリベルさん。モテますね〜」

「うるさいぞ、駄魔王」

「駄魔王ってなんですか!? 私のことなんですか、それ!?」

「自分のダンジョンから出れなくなったアホが、駄魔王じゃなくてなんなんだ?」

「あぅぅ…… それは…… 確かにそうですけど……」


 それにしても、久しぶりに自分以外の黒髪を見た気がする。やっぱり日本っぽくて落ち着くな。


「そんなに私の顔をじっと見て、もしかして惚れました? 私をハーレムに入れてもいいんですよ?」

「悪いが、もう枠ないわ」

「酷いですね!?」


 そうそう、このツッコミ。懐かしいな。


「冗談はさておき、ジュリア、よくやってくれた。ありがとう」

「ううん。このくらいなら、いくらやってもいいわよ」

「そういうわけにもいかないだろ。ジュリア一人に負担かけさせるのも悪いしな」


 ジュリアはこの五年間、俺を精神的にも支えててくれた。そして、こんな危険なことまでこなしてくれた。そろそろ休んでもいい頃だろう。


「あの〜、イチャイチャしてるところ申し訳ないのですが、私はいったいなにをすれば?」

「リベリオンの最終兵器になってくれ」

「はい?」

「対帝国、対魔王、対勇者の最終兵器になってくれ」

「つまり?」

「リベリオンの核戦力みたいなもんだな」

「私の扱いは核爆弾と同じですか……」


 俺は、地味にショックを受けているクラリスを無視した。ここまで来て、やりませんなど言わせないのだ。


「ヨハン、暗殺班に指示を出してくれ。教国を圧迫している帝国の貴族を各自で殺せとな」

「もう出しといたぞ。あとは、俺らが上手くやればいいだけだ」

「よし、それじゃあ、できる限り頑張ろうか」


 さて、これで準備は一つを除いて完了した。魔王が元王都に攻め込んでくるまで、じっくり待つとしようか。

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