表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
91/169

魔王の力 〜魔王〜

 一日。たった一日で第二軍は敗戦した。


「やはり、私の予想を超えられないか」


 バレンタイン軍は強かった。帝国と組んでいるのだから当然なのだが、バレンタイン元伯爵の士気の上げ方は見事なものだった。

 人間の士気の高さに精神をやられ、数で押されと、名将にはなれなかったようだな、カルロ。


「やはり、こうなりましたか……」

「当然の結果ですね」


 セルジオは、カルロの散々な結果に頭を抱え、ナディアは白い目をしていた。


「つまらんものだな。もっと善戦するのを期待していたのだが、そこまでの器ではなかったか」

「どうするのですか?」

「私が直接出よう。この結果は、出撃を許した私の責任でもあるーーなお、反論は認めん」


 ナディアを見て、口を開きかけていたところに一言を加えた。

 ナディアはそれを聞いて、苦い顔をしながら引き下がった。


「馬を用意いたしましょうか?」


 黙ってしまったナディアに代わり、セルジオが話を進め始めた。


「いや、馬はいらん。イービルヒート、背中に乗せろ」

「我はお主の味方ではないぞ?」

「だが、魔族が滅び、私が死ねば、貴様の使命も果たせなくなる。それを考えれば、ここで私に協力することは問題ないのではないか?」

「……わかった。お主を乗せていこう」


 勇者を元に戻すには、私の特異魔法が必要不可欠になる。イービルヒートはそれがないと、役割を果たせなくなるのだ。


 私は外に出て、黒竜となったイービルヒートの背中に乗った。


「それでは、ここから西の戦場へ向かおうか」

『振り落とされないように捕まっておれ』


 イービルヒートは、翼を羽ばたかせて空に浮かび上がり、バレンタイン領へ高速で移動を開始した。


「さすが、竜は速いな」

『その竜の背中に仁王立ちできるとは、魔王の体はどうなっているのだ?』

「魔王とは偉大なものだ。この程度ができなくてどうする?」


 戦場は、アバークロンビー領から馬で三時間程度で到着する近さなのだが、竜の場合は十分程度で着きそうだ。それに加え、背中の乗り心地も悪くない。これはいい乗り物だな。

 数分ほどで、肉眼でも確認できるほどに戦場が近づいてきた。

 第二軍は撤退戦を開始しつつ、被害を最小限に抑えようとしている。だが、バレンタイン軍はそれを許そうとせず、猛攻を繰り出していた。


「やはり、酷いやられようだな」

『どうするのだ?』

「このまま戦場のど真ん中へ飛び込む。そこまで運べ」

『了解した』


 イービルヒートは言われた通りに飛んでいき、私は第二軍とバレンタイン軍のちょうど境目辺りに飛び降りた。着陸と同時に強い衝撃が足から全身に響くが、この程度は問題ない。

 私が落ちてきたことによって、両軍の動きが完全に止まっていた。


「魔王だ……」


 という声がバレンタイン軍の方から聞こえ、それによって指揮官が再起動した。


「ま、魔王を討ち取れ!!!」


 その言葉に呼応するかのように、バレンタイン軍は動きを取り戻し、私に剣や杖を向けた。


「対応が鈍いな。魔王とわかったなら、すぐにかかってくるべきだろうに。〈クリスタルレーザー〉、〈エリアヒール〉」


 私が魔法を発動すると、辺りの光が私の手のひらの上に集まり、周辺が夜のように暗くなった。そして、その光はみるみる手のひらの上で圧縮されていき、正十二面体の白いクリスタル状の物体となった。

 私は、そのクリスタルをバレンタイン軍に向ける。そして、レーザーを横薙ぎに一線。それだけで人を焼き、地を焼いた。

 その逆の方向。つまり、第二軍側には範囲回復魔法を使って、魔族たちの傷を完全に癒した。

 魔族の兵は私の登場で士気を取り戻し、人間の兵は、私の登場で士気がドン底まで落ちた。これで勝負ありだ。


「さあ、第二軍よ!バレンタイン領を占領せよ!」


 魔族の士気が、雄叫びとともに最高潮に達し、次々にバレンタイン軍へと突撃を開始した。

 対して、バレンタイン軍は撤退戦を開始。逃げながら第二軍と応戦し始めた。だが、私の軍は全く止まることなく、バレンタイン軍を引き裂いていった。


「カルロ、これが魔王だ」


 私は、未だ唖然として動けないカルロに声をかけ、バレンタイン軍へ突撃している魔族たちに〈ヒール〉を使い続けながら前進を開始した。


 ✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽


 《クリスタルレーザー》


 周辺の光を手のひらに集め、圧縮することで、強力な光線を発射する光魔法。圧縮したあとの形がクリスタルに見えるという理由で、ナディアが名をつけた。

 光を集めるスピードが早く、広範囲に及ぶため、一瞬夜になったかのような暗闇を作ることができる。

 だが、それでも光りを溜めるために、十秒ほどの時間が必要になる。しかし、溜めがある分、その威力は絶大。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ