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精神力

ソフィ視点です

 私が見たのは、邪教徒を蹴り殺したアル君が、破裂の衝撃で吹き飛ばされるところだった。


「アル君!」


 私はすぐさまアル君に近寄り、抱きかかえる。


「…… ソフィか……?」

「アル君! 大丈夫!?」

「ああ、ちょっと油断した…… もう大丈夫だ……」


 アル君は、自分の体を〈ヒール〉で治し、ゆっくりと立ち上がった。私は、それに肩を貸す。

 大丈夫という言葉に反して、まったく大丈夫じゃなさそうだ。顔色は、青を通り越して白くなっていて、完全に血の気が引いているのがわかる。


「もう少し休んだ方がいいよ! 今のアル君、顔が酷いことになってるよ!」

「はは…… 恋人に顔が酷いって言われると、結構ショックだな」

「冗談言ってないで座ってて! 邪教徒は私がなんとかするから!」


 その言葉に、アル君はピクッと一瞬だけ反応した。


「ソフィが…… 倒す……」

「ア、アル君……?」


 アル君は、少し間をおいて大きな深呼吸をした。そして、思いっきり自分の頰を殴った。


「アル君!?」

「あぁ、やっぱり痛いな。こりゃ人の腹にも穴開けられるわ」


 肩をぐるぐると回し、屈伸をして、私の方を振り向いた。


「悪い。ちょっと覚悟が足りなかったわ。もう大丈夫だ」


 そう言うアル君の顔は、赤みを取り戻していて、口調も動きもいつも通りに戻っていた。どうやら調子が戻ったみたいだ。

 アル君は、私に向かって優しく微笑みかける。その笑顔は、心配かけて悪かったなと、誤っているように見えた。


「よし、行くぞ」

「うん!」


 私は、アル君と一緒に邪教徒を倒しに向かった。


 ✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽


 帝都で暴れている邪教徒を魔法でなぎ倒し、私が魔法の準備に入ったところで、アル君が突撃する。そして、戻ってきたら私が魔法を放つ。

 その繰り返しで、ほとんど邪教徒がいなくなっていた。

 それにしても、さすがはアル君。私が魔法を発動させるタイミングを完璧にわかっていて、私に合わせて行動してくれている。

 まだ人を斬るたびに顔色が悪くなるけど、落ち着く速度がどんどん上がってる。

 メンタルを強化しながら戦うというのは、とんでもなく凄いことだと思う。私には、とてもじゃないけど真似できる芸当じゃない。

 私も、人を殺せば罪悪感が生まれる。それも、最初は胃の中の物をすべて吐き出すくらいだった。でも今では、胸の奥がチクリと痛むくらいに収まっている。

 人殺しに慣れるというのは、道徳的にいけないことだとは思う。でも、勇者の仲間をしている分、覚悟をしなければいけない時が必ず来る。

 アル君は今、それを乗り越えた。あとで、いっぱい褒めてあげよう。


「だいたい終わったな」


 周りを見て、邪教徒がほとんどいなくなったのを確認し、アル君は大きなため息をついた。


「お疲れ様。よく頑張りました」


 私は、座り込んでしまったアル君の頭をなでなでする。少し癖のかかった柔らかい髪が、手に絡んできた。

 最近少し伸びてきてるし、切ってあげようかな。

 そんなことを考えながら、アル君の髪で遊んでいると、アレックスたちがこっちに走ってきた。


「おーい! ソフィア、無事だな! って、なにしてんだ?」

「いちゃいちゃしてる」

「…… ソフィアだけ、ずるい」


 私とアル君を交互に見たオリヴィアは、私も混ぜろという風に、アル君の頭を撫で始めた。


「いい加減、支部の方に向かうぞ。タイマー少佐って人に、エレナを預けてるんだ」


 私とオリヴィアのせいでボサボサになった髪を直しながら、アル君は立ち上がった。

 そして私たちは、タイマー少佐という人がいる、邪教の支部へと向かった。


 アル君が案内してくれた支部までは、そこまで遠くはなかった。


「あ、アルフレッドさん!」

「エレナ、もう大丈夫なのか?」


 到着してすぐに、アル君を発見したエレナちゃんがこっちに駆け寄ってきた。


「もう仲良くなったのにゃ?」

「そりゃ軍人に囲まれてた中で、知り合いに会ったら安心するだろ」


 確かにその通りだけど、なんか、それだけじゃない気がする。これは女の勘だ。


「…… やっぱりロリコーー」

「断じて違う」


 オリヴィアもそんな気がしているらしい。ジト目でアル君を見つめている。


「…… 俺のミスで、一回エレナは攫われたんだ」

「は!?」


 オリヴィアの視線に耐えきれず、アル君のまさかの告白をした。

 これに一番驚いたのは、アレンだった。


「ミ、ミスって…… アルフレッドでもミスするのか……」

「当たり前だ。今回は不注意だった。本当にもし訳ない」


 ダンジョンを攻略した後のアル君は、なんでもこなせるような雰囲気を醸し出していた。アレンが驚くのも仕方ないと思う。


「…… 窮地を救って、好感度アップした」

「まあ、そんな感じだろうな。その窮地を作ったのも俺なんだが。エレナも、怖い思いさせて悪かったな」

「大丈夫」


 そう言うエレナの目からは、アル君への信頼が伺えた。最初は大丈夫か不安だったが、心配無用だったみたいだ。


「タイマー少佐、どうなりましたか?」

「三つの支部すべて取り押さえた。そして、邪教徒もすべて破裂した。一応、安全は確保されたと言っていい」


 つまり、この件は解決したってことでいいだろう。


「では、エレナのお母さんは見つかりましたか?」

「いや、発見されなかった。もしかすると、破裂した邪教徒の中にーー」

「私、お母さんの場所知ってるよ」

「「「「「「「「え?」」」」」」」」

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