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ターニャvs.アルフレッド

 Aブロック決勝。俺とターニャの試合がもうすぐ始まる。

 既に入場はしていて、ターニャは俺の目の前で短剣を二刀流で構えていた。

 〈風流〉の基本の構えだが、ターニャがそれをするとまったく隙がない。一目でわかる、達人の構えだ。

 俺はそんなターニャの目の前で、自然体の状態で立っていた。

 俺は父様から自己流の流派で片手半剣を習った。その中でも〈水流〉の技がお気に入りだ。

 なぜなら、極東では反りのある刀を使うからだ。そう、日本刀である。

 元日本人として、〈水流〉をマスターしないわけにはいかなかったのだ。

 しかし、今目の前にいるターニャは〈風流〉の達人。しかも短剣の二刀流という、完全スピード特化型だ。

 〈水流〉は〈風流〉に弱い。一つ受け流しても、すぐに次の攻撃が来るため、相当な力の差がないと受け流しきれないのだ。

 正直言って、〈風流〉の技で達人であるターニャに勝てる気はしない。

 そして、〈風流〉に強い流派は〈火流〉だ。

 この〈火流〉は、俺が最も苦手としている技を多く含んだ流派だ。

 元々父様のために開発された流派なため、あの巨体を生かした力技の〈火流〉を、俺はあまり会得できていない。

 だからこそ、今回の勝負は完全に〈風流〉同士の速さ比べだ。しかも、短剣二刀流vs.片手半剣一刀流という、超がつくほど不利な戦い。

 剣士として、こんなに面白い戦いは他にない。


「にゃにゃ〜、一体どんな技を出すのかにゃあ〜」

「それは見てからのお楽しみだな」

「ふふ、燃えて来たのにゃ」


 ターニャの方も楽しみで仕方ないらしいな。


「Aブロック決勝戦!! 果たしてどちらが勝つんでしょうか!! では、試合開始!!!」


 試合開始のゴングが鳴った瞬間、ターニャは姿勢を低くしてこちらに突っ込んで来た。

 俺も中段に剣を構えて、どこからの攻撃にも対処できるようにした。

 ターニャの右の短剣は、空中を滑るようにして俺の首へと向かって来た。

 俺はそれを一歩引くことで避け、続いて左の、脇腹を狙っていた短剣を剣で受け止めてはじく。そのまま、ターニャに向かって袈裟懸けに剣を振った。

 ターニャは、その剣の軌道を読んでいたように、綺麗に体を捻って避けた。

 そして、その次の瞬間には、俺の顔スレスレに左の短剣の突きが繰り出されていた。

 俺はそれを顔を右側にずらして避け、一歩前進して横薙ぎに剣を振った。

 するとターニャは、俺の胸に袈裟懸けに振り下ろされていた右の短剣を引き寄せ、剣を受け止めつつ後ろに飛んだ。


「やっぱりアルフレッドは強いにゃあ〜」

「ターニャこそ、俺は毎回避けるのでいっぱいいっぱいだ」

「普通に反撃しといてよく言うにゃ」

「じゃあ、次は俺からだ」


 俺はターニャに向かって走っていき、右下から振り上げる。

 ターニャはそれを横に避け、俺に反撃しようとするも、俺が剣を振り下ろしたことで回避せざるを得なくなった。

 俺は一度剣を引き、ターニャに向かって最短距離で突きを繰り出した。

 ターニャはそれを短剣一本をで受け流し、俺の首に向かって右の短剣を振った。

 俺はそれが振られる前に手首を掴んで止め、右手で剣をもう一度引き戻しつつ、逆手持ちに持ち変えた。

 するとターニャは焦ったように、残った左の短剣を俺の顔に向けて突いてきた。

 俺はそれを紙一重で躱し、剣を右斜め下から振り上げた。

 すると、俺の剣がターニャの右脇腹に当たり、ターニャは痛みで腹を抑えてうずくまった。


「Aブロックの勝者は、勇者パーティの一人! アル選手に決まったぁ!!!」


 スピードの速い闘いの決着に、大歓声が巻き起こった。


「負けたのにゃ〜……」

「悪い。寸止めする余裕がなかった」

「にゃは〜、それは仕方ないのにゃ……」


 俺はターニャに〈ヒール〉を使い、回復させた。

 なんか、ターニャはいつも腹に怪我を負っている気がする。


「これで大丈夫か?」

「ありがとにゃ」


 それにしてもギリギリの勝負だった。途中で少しでも判断をミスれば即アウトだったな。

 猫の獣人族の柔軟さで攻撃は避けられるし、瞬発力が高いおかげで攻撃スピードが速いしで、本当になんとか勝った感じだ。


「次は魔法ありで模擬戦をやってみたいにゃ」

「また今度な」


 魔法ありとなると、防御力の高い俺が少し有利かな? おそらく、ターニャが闇魔法を使って、俺をどれだけ騙せるかどうかで試合が決まるだろう。


 俺たちが戦っている間、Bブロックでも父様vs.仮面の男の試合をしているはずだ。

 俺たちがBブロックの闘技場へ、結果を見に行こうとすると、アレックスとランベルトがこちらに向かって走って来るのが見えた。


「なんかあったのかにゃ?」


 アレックスはどうやら焦っていたようで、俺たちの所へ来るなり肩で呼吸をし始めた。


「どうしたんだ?」

「はぁはぁ、アバークロンビー伯爵が…… あいつに負けた……」

「父様でさえ勝てなかったのか。ソレイユ…… だったか? かなりの腕だな」

「それだけじゃなくて! 伯爵が大怪我を……!」

「なに!?」


 その知らせを聞いて、俺は急いで父様の元へ向かった。

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