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剣闘祭にて、に〜げるんだよ〜

 今日は待ちに待った剣闘祭だ。

 ちなみにこの大会は、全て刃を潰してある剣で試合をする。

 参加者は五十人と少しで、トーナメント制だ。AブロックとBブロックに分かれて、最後に各ブロックの優勝者が闘い、勝者を決める。

 俺はAブロックのようだ。

 トーナメント表で、誰か知っている名前を探したが、残念ながらなかった。

 まあ、当然か。友達…… ソフィしかいないし。

 あれ? ソフィも許婚だから、友達じゃないな…… 俺って、友達いなくね……?


「さあ! 今年も始まりました! アバークロンビー伯爵主催! アバークロンビー剣闘祭!

 今年は銀級の冒険者が三十人も参加してくれました! これは熱い闘いになりそうだ!」


 この大会、父様が主催していたらしい。

 ミスリルの剣なんて高級品を、優勝商品にしても良かったんだろうか?

 それにしても、生実況は初めて聞くが、耳がキンキンするほどにうるさい。だが、盛り上がれば、このくらいの声量で丁度いいのだろう。

 もうすぐ第一試合が始まるらしく、選手が闘技場に出てきた。

 今回は、銀級の冒険者が三十人も出場しているらしいが、どのくらいのレベルの闘いになるのかが、とても気になる。

 銅級や鉄級を含めると、参加者のほとんどが冒険者なのだから、まともに剣術を習っていた者は、ほとんどいないだろう。


「それでは第十二回アバークロンビー剣闘祭! 記念すべき第一回戦! 試合開始!!!」


 第一試合が始まった。

 やはり、冒険者の剣の振りには、型も何も無い。しっかり剣は振れているが、動きに無駄が多い。

 魔物相手には、あの動きでも大丈夫かもしれないが、人間相手となると隙をつかれてしまうだろう。


 しばらくして、俺は順調にトーナメントを勝ち進んでいた。ちなみに今、銅級の冒険者を倒した。

 相手は長剣を使っていたのだが、俺を心配しているのか振りがゆっくりだったのだ。普通に避けて、首に剣を当ててあっさりと終わってしまった。

 相手は、俺が自分以上に剣が使えることにかなり驚いていた。


 次の俺の試合は、Aブロックの決勝戦だ。

 俺が勝つたびに、観客から物凄い歓声が上がっている。十歳の少年がムキムキの大人達を倒すのは、見ていて面白いのだろう。


「さあ! ここまで順調に勝ち進んで来ましたアル選手! 次の対戦相手は…… 銀級の冒険者! 豪速のジョン選手だあ!」


 二つ名持ちか。豪速と言うのだから、やはり速いのだろうか?

 どんな闘い方をするのか楽しみだ。


「おい、坊主。ガキは怪我しないうちに帰りな」


 かなり細身の人物が出てきた。

 武器は片手剣である。盾は持っていない。確かに速く動けそうだが、少し筋肉不足のように見える。

 しかも、初対面でガキ呼ばわりとは、なかなか失礼なやつだ。まあ、実際に見た目はガキなのだが。


「そんなこと言って、俺に負けて恥かいても知りませんよ?」

「なに?」


 怒気を込めた声で聞き返してくる。

 さすがは銀級。なかなかの迫力だ。


「今まで俺と闘ってきた人達は、みんな俺のことを舐めてかかってきましたからね。あなたもそうなら、足元すくわれても知りませんよ?」

「貴様、誰に口を聞いているのかわかっているのか!? 俺は豪速のジョンだぞ!?」


 性格は傲慢で、プライドを傷つけられるのは我慢ならないらしい。

 扱いやすい人だ。激昂して試合に挑んでも、いいことなど一つも無いのにな。


「それでは! 試合開始!!!」


 実況の人が、高らかに試合開始を宣言した。

 何度聞いてもうるさいなと思った瞬間、ジョンは俺のすぐ目の前に来て、剣を右薙ぎに構えていた。


「なっ!?」

「ふんっ!!」


 剣を立てて、なんとか受け止める。ギリギリのところで受けられたが、かなり速い。豪速と言うのも頷ける。

 ただ、やはり筋力不足だな。十歳である俺でも、少し力を入れれば、剣を止めることができた。

 俺はそのまま剣を弾き、右から切り上げる。


「オラァッ!」


 左切り上げに振った俺の剣は寸前で避けられ、空を切った。


「おいおい坊主、そんなもんか?よくできているのは、口の方だけみたいだな」

「……」


 嘲笑しながら挑発してくる。俺はそれを気にしないようにする。

 悔しいが、速さでは完全に負けている。だが、技術は俺の方が上。ならば、狙うのはカウンターだ。

 次こそ捉える。


「…… ふん、つまらんな。では、こちらからいくぞ!」


 ジョンは、挑発に乗らない俺をつまらなそうに見てから、攻撃を仕掛けてきた。

 今度はしっかりと剣筋が見える。大上段からの一撃だ。

 どうやら、自分の筋力不足を察したらしい。どうしても力で押しこみたいようだ。

 こいつは受けられないな。受け止めたら、剣が曲がってしまう。

 俺は、右足を左足を軸にして半歩引き、体の軸を移動させた。ジョンから見ると、いきなりその場から消えたように見えただろう。

 狙いをずらされたジョンの剣は、俺がさっきまでいた場所を綺麗にすり抜けた。


「んなっ!?」


 いきなり消えた俺に驚いている。そんな隙だらけのジョンに足をかけつつ、首元を持ち、思いっきり引く。

 そうするとジョンは、地面とキスする様にうつ伏せで倒れた。あれは相当、顔が痛かっただろう。

 まあ、気にする必要はないなと気持ちを切り替え、俺はそのまま、首に剣を押し当てた。


「口だけなのはあなたの方だったようですね、ジョンさん」

「ちっ! 覚えてろよ!」


 まるで三下が吐くような捨て台詞を言って、ジョンは逃げかえるようにして退場していった。

 逃げ足まで速いな。ジョ○スター一族だったのだろうか?名前の方もジョから始まっているので、完全にジョ○ョである。


「勝者! アル選手ーー!!!」


 うおおおおぉぉぉぉぉっ!!!!!


 おお、すごい歓声だな。嬉しいけど、耳が痛い。

 さてと、次はBブロックの優勝者との試合か。どんな剣士なのか、今から楽しみだな。


 ✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽


 〈冒険者〉


 冒険者とは、魔物を狩り、その魔石を回収してギルドに売ることによって、生計を立てる職業である。

 冒険者には五つのランクがある。

 まずは、一番下の鉄級。冒険者になるときは必ず鉄級から始まる。初心者ランクだ。

 次に銅級。これになると、魔物を狩ることを任される。Eランク、Fランク、Gランクの魔物だ。

 そして銀級。ここまでくれば一人前と呼ばれるレベルだ。一番冒険者の数が多いのも、銀級である。

 狩ることのできる魔物のランクは、基本的にはDランクとCランクだ。

 その次に金級。一流の冒険者と呼ばれるレベルだ。狩ることのできる魔物も、基本的にはBランクとAランク。

 おそらく、父様と闘えば、いい試合ができるほどの実力を持っているだろう。

 最後に白銀級。ここまでくると人外の領域らしい。

 狩ることのできる魔物は、基本的にはSランク以上。竜などを狩ることができる人間達だ。


 ✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽


 《片手剣》


 ショートソードと呼ばれる片手持ち用の剣である。

 盾と共に使用することを前提としている剣であり、軽く取り回しが良い。

 屋内や洞窟などの、閉所での戦闘に優れている。他にも、船上などで使われることも多い。

 基本的に軽く作られている剣だが、突きの威力や切断能力を増大させるために、わざと重く作ることもある。

 長さは八十センチから一メートル。重さは八百グラムから一・八キロ。(重さの基準は鉄製)

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