聖剣って、人化できたんだな
ターニャの一人称が「あたい」であることを忘れていて、「私」になっているかもしれません。
見つけ次第直しますが、直っていなかったら教えてください!(露骨な感想稼ぎ……?)
俺たちはギルドに行き、広めの部屋を貸してもらい、それぞれ貰って来た物を見せ合っていた。
「あたいは魔剣を貰って来たにゃ」
ターニャは短剣を一本取り出した。
「なんの精霊がいるんだ?」
「火と水の精霊にゃ」
「へぇ、珍しくな。相性の悪い精霊同士が一つの魔剣に収まるとは」
二種類の精霊が宿っているのも珍しいのだが、そのほとんどは火と風か、水と風なのだ。
「だから持ってきたのにゃ」
「それなら遠距離も攻撃できるな」
汎用性も高いし、火があるなら攻撃力も高い。かなりいい魔剣だ。
次はランベルトが魔道具を取り出した。
「これは、回復系の魔道具か」
「ああ、守るだけじゃなく、回復できたら強いだろ?」
盾役兼回復担当。役割が多くなるため、慣れるまで動きが難しいかもしれないが、いつから使いこなせるようになるだろう。
それに、俺を除いて勇者パーティには回復担当がいない。選択としては悪くないだろう。
次はオリヴィアが一冊の本を出した。
「…… 錬金大百科」
「賢者の石は作れるのか?」
「…… さすがになかった。でも、ホムンクルスならできる」
ホムンクルスは作れるのか。後で詳しく聞きたいな。錬金術は使えないが、俺も興味がある。
ソフィは、先程から動かして遊んでいる自立人形を一旦止めて、こちらに見せた。
「私は魔導人形持ってきたんだ」
「戦闘用魔導人形。しかも、百五十センチというのは、かなり大きい部類だな」
これだと、魔力消費はとんでもないことになるだろう。ただそれは、ソフィ以外ならという話だ。
「魔導人形に守ってもらって、その後ろから魔法発動したらいいかなって思って」
「ソフィだからこそできる戦法だな。ただ、長持ちはしないぞ?」
「大丈夫、いらない時は収納できるから」
ソフィが魔力をコントロールすると、魔導人形が折りたたまれていき、手のひらサイズにまで小さくなった。しかも、形は四角形という持ちやすい状態だ。
「さすがは宝物庫にあった魔道具だな。性能が市販の物とは比べ物にならない」
「これなら、必要な時だけ出せるもんね」
普通の魔導人形は、魔力供給を切ることで停止するのだが、それが持ちやすいように小さくなるなんて聞いたこともない。
「アル君はなに持ってきたの?」
「俺はこれだ」
と言い、精霊結晶をポケットから出した。
「…… 魔石?」
「いや、精霊結晶だな」
「…… なにそれ?」
「精霊になんらかの関係があると言われているが、まだなにも解明されてない結晶だ」
「…… なんでそんな物持って来たの?」
「なんか、気がついたら手に取ってた」
そこだけ記憶が曖昧で、あまり詳しくは覚えていないが、なぜか気になってしまったのだ。
「精霊結晶って、使い方もわからないんだよね?」
「ああ、本当になにもわかってない物だな」
「…… アルフレッド、熱でもあるの?」
オリヴィアは、俺のおでこに手を当てて、体温を測る。しかし、熱はないし、風邪をひいているわけでもない。
「俺は、なんでこれを持って来たんだろう……」
「ええと、アル君? いつかは役立つかもしれないし、気にしても仕方ないよ」
「…… よしよし」
少し落ち込み始めた俺を、慰めれくれるソフィ。それと一緒に、オリヴィアも俺の頭を撫で始めた。
「最後はアレックスだぞ」
「ふふ、聖剣、ふふふ」
嬉しさのあまり、完全に怪しい人になっている。心なしか、ターニャとランベルトが引いているように見えた。
「アレン…… アレン!」
「はっ…… ソフィア?」
「聖剣見せて?」
「あ、ああ、わかった」
ソフィの呼びかけにより、正気を取り戻したアレックスは、聖剣を机の上に置いた。
「聖剣って意思があるんだよな?」
「そのはずだ」
「そんな風には見えないが?」
さっきから聖剣の魔力だけは感じるのだが、意思があるようには見えない。
「……ねぼすけ?」
「これって寝ている状態なのか?」
「…… ノックすれば、聖剣もきっと起きる」
「いや、そういう問題じゃないだろ」
「やってみる価値はあるにゃ。アレン、ノックにゃ」
「わかった」
アレックスは聖剣の腹に向かって、二度ノックをする。しかし、聖剣はピクリともしなかった。
「なにも起こらないじゃないか」
「…… なにか起きる保証はしてない」
「なんだと!?」
本日二度目の、アレックスとオリヴィアの睨み合いが発生する。もうここまでくると、逆に仲良しになる的な展開になったり…… いや、ないな。
「クソ! おい聖剣、起きろ!」
アレックスは、聖剣に高速でノックをし続ける。すると突然剣が、柄をアレックスの顔に向けて猛スピードで突進した。
「グハァッ!?」
直撃をおでこで受けたアレックスは、壁に向かって横に吹っ飛ぶ。そして、壁に頭から刺さった。
「おお! 元気な剣だな!」
「突然動いたのにゃ……」
「お前ら! 少しは俺の心配をしろよ!?」
ランベルトとターニャは驚きつつも、いつも通りアレックスをからかっていた。
『んもぉ、うるっさいわねぇ。少しは静かにできないの?』
「「「「「「…… 剣が喋った!?」」」」」」
『私は聖剣よ。喋るに決まってるじゃない』
すると、突然聖剣は光り輝き始めた。あまりの眩しさに全員が目を瞑る。
光が収まった時には聖剣がなくなっており、机の上には百二十センチくらいの幼女が立っていた。
「私は聖剣の精霊、ジュリアよ。しっかり覚えておきなさい」
ジュリアは自分の身長よりも長い金色の髪を、右手でかきあげながら自己紹介をした。
「聖剣って、人化できたんだな。初めて知った」
「そりゃ、人化できる聖剣なんて、私くらいしかいないからね」
どうやらジュリア以外の聖剣は、喋るだけらしい。
「それで、私の主人は誰よ?」
「さっきお前が吹っ飛ばしたやつだ」
「え? あの弱そうなのが主人なの?」
「弱そうだと!?」
「ええ、私を扱うには、まだまだ実力が足りていないわね」
さっき吹き飛ばされていたが、そんなことが一目でわかるのか。聖剣特有の眼でも持っているのか?
「お前なんてすぐに使いこなしてやる!」
「そうでないと、私が起きてきた意味がないわ。せいぜい頑張りなさい」
「偉そうにしやがって……!」
「だって私、偉いし」
確かに、聖剣は人々の願いによって発生した精霊を宿しているのだから、偉いと言えば偉いのだろう。態度がデカイのは性格のせいだと思うが。
というかアレックス、最初から一転してずいぶんと反抗的になったな。あの怪しい人状態はいったいなんだったのか。
「そんなことより、一つ言いたいんだけど」
「今度はなんだよ!?」
「あいつ、倒さなくていいの?」
ジュリアは、俺を指差してそう言った。