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冒険者ギルドでは、テンプレが起こらなかったよ

 あれから二年が経ち、俺は十歳になった。

 フィリップが五歳になり、そろそろ教会に行くことになる。

 なぜか俺の周りには、魔法の才能が高い人が多いから、フィリップも高そうだな。

 まあ、高ければアバークロンビー家としては嬉しい事だ。存分に喜んでやろう。


 最近、お祖母様とフィリップの母親がフィリップに、俺が無能だと言うことを教え込んでいるようだ。おかげで、フィリップの俺への当たりが強い。父様は注意しているのだが、なかなか直らない。

 影響力の強い母親から言われていることなので、これはどうしようもないだろう。俺はもうほとんど諦めている。


 俺は、ずっと剣術の稽古をしていたおかげで、最近は家にいる騎士にも負けなくなってきた。

 一度、父様が発案したアバークロンビー家剣術大会に出場したのだが、そこで騎士に全勝。調子に乗って、決勝で父様にぼろ負けした。

 騎士には勝ったが、団長には勝てなかった。だが父様は、


「十歳でこの腕なら、俺の歳には王国最強だな。ハッハッハッハ!!」


 と言っていた。嬉しい限りである。

 魔法の代わりに、剣術の才能はしっかりとあったようだ。

 これでなかったら、俺は女神を恨んでいただろう。

 邪念とか呪いとか、あの女神に効くのだろうか?

 試しに少しやってみよう。


(うーむむむむ……)


 何をしてるんだろう、俺。


 ✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽


「ぶぇっくしょん!!!」


 背筋がゾワっとしました! ちょっと怖いです!

 神様の私が風邪引く訳ないのに!あぁ、寒気がぁ……


 ✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽


 毎日魔法の訓練をしているおかげで、魔力操作がさらに上達した。

 具体的に言うと、体の中の魔力を自由自在に動かす事が出来る。おかげで、無詠唱で回復魔法を発動出来るようになった。

 発動出来る回数も増えて、今や初級を一日に十回も発動出来るのだ。そう、嬉しいことに十回である。

 ソフィは千回は発動出来るとか言ってた気がするが、そんなのは知らんな。フハハハハ…… 泣きたい。


 シャルは七歳になって、ますます可愛くなった。

 だが最近は、頭を撫でると恥ずかしがって逃げだすのだ。可愛いのだが、お兄ちゃんはちょっとだけ寂しいぞ。

 それに、氷魔法の方も、詠唱が必要ではあるが発動出来るようになっていた。

 どうやら才能はあったようだ。魔法師団も、これなら余裕で入れるレベルだろう。

 妹が将来安泰で、兄として嬉しいのやら情けないのやら。


 ソフィはこの二年間で、一番俺との関係が変わっただろう。

 なんと、友達から許婚にランクアップしたのだ。

 ソフィはあまり実感が湧いていないようだが、こんな美少女が嫁になるなんて、俺としては今からワクワクである。

 え? 何にワクワクかって? そんなのナニに決まってるじゃないか。フフフフ……


 ✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽


 今日はいつも通り、家にいる騎士と稽古をしていたのだが、町の方が少し騒がしかったので、キリのいいところで稽古を止めて、町に行くことにした。


「一人で町に出るなんて、いつぶりだろうな」


 ほとんどはシャルかソフィと一緒に来ていたので、一人で来ることなどなかったのだ。


「確か騒がしかったのは、こっちの方……」


 街にある掲示板を覗いてみると、そこには、ポスターのような物が張り出されていた。

詳しく見てみると、どうやらアバークロンビー剣闘祭なるものがあるらしい。優勝商品は、ミスリルの剣と書いてあった。

 ミスリルは金属の最高級品で、なかなか手に入るものではない。

ミスリルでできた剣は、とても魔力を通しやすく、切れ味、強度、軽さのすべてにおいて、高い水準の武器を作れる。

 騎士団でも、部隊長レベルでようやく支給されるような高級品が、なんで町の剣闘祭なんかで優勝商品にされているのか、疑問に思ったが、気にしないことにした。

なぜなら、ミスリルを貰えるなら、それに越したことはないのだ。


「『冒険者に騎士、剣に自身のある者は集まれ』か。ほぅ、面白そうだ!」


 自分の剣術がどれだけ通じるか知りたいし、何よりミスリルの剣が欲しい。


「よっしゃあ、絶対優勝してやるぞー!」


 参加登録は、冒険者ギルドでやってるみたいだな。

締め切りは明日の正午までか。今すぐ登録しに行こう。


「それにしても賑わってるなー」


 町の住人達の話題は、どうやら剣闘祭で持ちきりらしい。

 まあ、ろくな娯楽が無いからな。祭りとなれば盛り上がるんだろう。賭け事も行われるみたいだし。

 さて、そろそろ冒険者ギルドのはずなんだが…… あれか。

 木製の作りで二階建てみたいだ。正面に大きな扉が付いている。

そこには、荒い格好をして、武器を持った人たちが行き来していた。

 まさに冒険者ギルドというような見た目の所だ。


「こんにちはー!」


 中に入ってみたが、これまた俺の想像とほとんど変わらない。

 左側から、まず階段があり、あそこから二階に続いていた。二階には個室なんかもあるのだろう。

 正面にはカウンターがあり、そこには受付嬢らしき人がいる。

 その右側には、依頼用の掲示板がある。そのさらに右側に食堂があり、冒険者が昼間から酒を飲んでいるようだ。

昼から酒を飲むのは体に悪いが、この世界の医療技術では、そんなことはわからないのだろう。

 とりあえず、早く参加登録してしまおう。


「すいませーん」

「何かご依頼ですか?」


 受付嬢が笑顔で聞いてくる。

営業スマイルだ。ギルドは信用が大事なため、笑顔も大切だ。


「剣闘祭に参加したいんですが、ここで参加登録出来ると聞いて来ました」

「ああ、なるほど…… ええと、大丈夫ですか?」

「ええ、まあ、これでも毎日稽古しているんですよ」

「そうですか…… 分かりました。ではこちらにサインをお願いします。代筆は要りますか?」


 心配そうな顔して聞いてくる。なかなかいい人そうだな。いや、十歳の子供が参加登録しに来たら、誰でも心配するな。


「いいえ、代筆は大丈夫です」


 手早く登録を済ませて、冒険者ギルドを後にした。

 しかし、誰も絡んで来なかったな。まあこの歳で文字が書けるのなんて貴族くらいだし、無闇に関わりたくはないか。

少し残念だ。テンプレを逃してしまったな。

しかし、気持ちを切り替えて。


「さて、剣闘祭は三日後だ! 帰って素振りするぞー!」


 ✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽


 《ミスリル》


 ミスリルとは、詳細は不明だが、魔力濃度が濃い場所にあり、長年魔力を浴び続けたため、性質が変化した金属なのではないか、という説が一般的である。

 ミスリルの性質は、銅の様にうち伸ばせ、鋼をも凌ぐ硬度を持ち、なおかつ軽い。そして見た目は、銀の様だが、黒ずみ曇る事が無い。そして、魔力伝導率がとても高いというものだ。

 希少価値も高く、魔力濃度の高い場所にある鉱山でもなかなか発掘されない。まさに、金属の最高級品である。


 《魔力伝導率》


 魔力伝導率とは、物質中における魔力伝導のしやすさを表す物性量である。

 これが高ければ高いほど、物体に魔力を通しやすくなる。

 主に魔道具などは、魔力伝導率が高い素材を使っており、少ない魔力で高い効果を得られる様になっている。

 他にも、魔力伝導率の高い金属を武器にすれば、武器の切れ味や硬度などを、魔力を込める事によって上昇させられるため、より壊れにくい武器を作る事が可能となる。

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