再会
名前を呼んだ途端、ソフィは俺を強く抱きしめ、泣き始めた。
「アル君……!」
俺は泣いてしまったソフィの頭に手を乗せ、優しく撫でる。それと一緒にもう片方の腕で、彼女をギュッと抱き寄せた。
「ソフィ…… 久しぶり」
感極まって声が出ないのか、ソフィは俺の胸の中で一生懸命に首を縦に振っている。
俺はそんなソフィの姿を愛おしく思い、そのまま泣き止むまで頭を撫で続けた。
過呼吸だった呼吸も徐々に落ち着いてきて、俺の胸に押し付けていた顔を離す。そこには、涙と鼻水でグシャグシャになった顔があった。
「せっかくの可愛い顔が台無しだぞ?」
「えへへ……」
ポーチからタオルを取り出して、顔を拭いてやる。その間もソフィは俺の背中に腕を回したままだった。
少し拭きにくかったが、顔の汚れをすべて取り、見つめ合う。
「アル君……」
俺が生きているということをしっかり確認できたせいか、また目に涙を溜め始めた。それを俺はタオルで拭き取り、頭を撫でる。
「泣くなよ。俺は生きてるぞ?」
「生きてるからだよぉ……」
そう言って、また胸に顔を埋めてしまった。これはなかなか離れてくれなさそうだな。まあ、俺も離れたくないんだが。
ソフィはまたしばらく泣いていたが、頭を撫でているうちに落ち着いたらしく、顔を上げて俺をしっかりと見てきた。俺も目を逸らさず、しっかりソフィを見る。
すると、彼女は一瞬だけ目を逸らして頰を少しだけ赤く染めると、目を閉じて唇を俺の方に差し出してきた。
俺は、ソフィの望みを瞬時に理解し、彼女の唇に自分の唇をゆっくり近づけていった。
だんだん距離が迫っていき、互いの鼻息がかかる。その生暖かさえ、心地よく感じた。そして、ようやく唇と唇が触れる…… 寸前に
「ちょっと待てぇぇ!!!」
という声で遮られた。せっかくいいところだったというのに。
ソフィを腕から解放して、声がした方向を見る。遮ったのは勇者だ。顔を真っ赤にして、肩で息をしている。
「なんだ?」
「お、お前! なにうちのパーティの魔法師に手を出してやがる!?」
「ソフィは俺のものだ。お前のパーティのものじゃない」
「は!?」
それを聞いたソフィは嬉しそうに顔を緩ませ、俺の腕に自分の腕を絡ませてきた。
「アレン、ひどいにゃー」
「確かに、今のは酷いな」
勇者は、残りの勇者パーティのメンバーからも文句を言われている。というか、アレンって名前だったんだな。
「ソフィア、その人が探してた人なのかにゃ?」
「うん!」
身長の低いシーフのような格好をしたネコ耳の少女が、ソフィに話しかける。
「ソフィ、俺のことをずっと探してくれていたのか?」
「当たり前でしょ! 三年間ずっと、探し続けてたんだからね」
「もう三年も経つのか…… ありがとな」
となると、俺は今十七歳か。そんなに長い時間、あのダンジョンの中にいたんだな。
「と、とにかく! ソフィアに手を出すんじゃねぇ!」
「だが断る」
「なんでだ!?」
「俺もソフィも、お互いに離れたくないからだ」
「ぐぬぬ……」
勇者は、俺のことを忌々しそうに睨みつけ始めた。
すると突然、オリヴィアがソフィの正面に立った。
「え、ええと、どうしたの?」
「…… ソフィアさん、あとで話がある」
「う、うん。わかった」
それだけ言って、オリヴィアはリリーの所に戻って行ってしまった。
「アル君、あの子は?」
「俺が魔法陣で転移した先にいた子だ。一緒に脱出してきた」
「なるほど……」
しばらく経って冷静さを取り戻した冒険者が、俺たちのことで騒ぎ始めたので、場所を変えて話すこととなった。
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勇者と一緒に来た場所は、パスタ店だった。王都に来たらパスタは絶対食べるらしい。ここのパスタは美味いからな。
「アレックス・ダンバルだ」
勇者の名前はアレックスというらしい。アレンというのは略称だったようだ。
赤い髪に金色の目をしていて、武器は長剣。軽く、丈夫な素材でできた革装備をつけている。
顔は普通にイケメンだった。俺よりも年齢が低く、今年で十五歳だそうだ。身長は百六十五センチ程度。
俺を睨みながらムスッとしている。
「オレはランベルトだ。よろしく」
勇者パーティの前衛で、盾役。武器は片手剣と大楯だ。
全身鎧を着ているが、重さを感じさせない歩き方をしている。相当体が強いのだろう。
焦げ茶色の目と髪で、身長が二メートル近い大男だ。年齢は二十五歳で、言葉が乱暴で、顔つきも怖いが、仲間には優しいそうだ。
「あたいはターニャと言うにゃ。よろしくにゃ」
勇者パーティの前衛で、斥候。武器は短剣だ。
種族は獣人族なため、黒の猫耳と猫尻尾がついている。肩あたりまで黒い髪が伸びていて、目の色は紫だ。格好はシーフっぽい。
俗に言う猫耳美少女だ。日本人なら誰もが喜ぶだろう。
身長はソフィよりも低く、百四十センチくらいだろう。目が細く、眼球がほとんど見えていない。
「ソフィアです。よろしくお願いします」
そして、俺の愛すべきソフィ。勇者パーティの後衛で、魔法師。武器は一応細剣を持っているが、基本的には魔法で攻撃する。
銀髪で腰まで伸びている髪に、藍色の目。身長は百五十センチの美少女だ。全身真っ白な服を着ている。
「…… 私はオリヴィア…… よろしく」
初代魔王の作ったダンジョンで死にかけ、俺に助けられた。そのあとは俺と一緒にダンジョンを攻略。
風魔法と闇魔法が使え、魔力も相当多いため、近接武器はナイフしか持っていない。
水色でショートカットの髪と目。それとジト目が特徴。身長はソフィとほとんど変わらない。例に漏れず美少女。
前世は日本人であるが、コミュニーケーションを取るのが苦手らしい。会話をしていても、少し間を置いてから話し出す。
「俺はアルフレッドだ。よろしく頼む」
そして俺。初代魔王のダンジョンで魔石を食べ、魔力を爆発的に増やしたことにより、最上級相当の光魔法を無詠唱、それも一瞬で何度も発動させることができる。
メインの武器は片手半剣だが、ナイフも同時に使うことができる。装備は軽く、動きを阻害しない物を着用している。全身真っ黒だ。
身長は百七十センチくらいで、黒目黒髪。ソフィによると、顔はカッコいいらしい。
前世は日本人で、しがないサラリーマンだった。
書き溜めで、ようやく裏切るところまでいきました。
投稿は一日一本なので、まだ少し時間がかかります。