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コンビネーション

 俺は、光魔法のライトで明かりを作って、洞穴の中を照らし、素振りをしながら少女が起きるのを待っていた。


「ん、んん。あれ……? 私、死んだはずじゃ……」

「勝手に自分を殺すなよ」

「ひゃあっ!」


 俺の声を聞いた瞬間、少女は、自分の手を俺に向けて前に出した。


「待て待て、構えるな! 魔法を使おうとするな! 俺は敵じゃない!」

「…… 敵じゃ、ない?」

「ああ、そうだ。俺が敵なら、お前のことをすでに殺してるだろう?」

「…… 」


 そんなに怯えつつ観察するなよ。なんだか、俺が怖い人みたいじゃないか。


「ほら、脚を見てみろ」

「…… 脚? 私にはもう脚が…… ある!?」

「そいつは俺が治したんだ。これで信じてくれるか?」


 これで信じてくれなかったらどうしよう? 他になにか、信用を得られそうなものはあっただろうか?


「…… わかった。信じる」

「そうか…… それは良かった」


 結構ホッとした。落ち着いてくれてよかった。


「それで、お前はなんでこんなところにいるんだ?」

「……スパム渓谷から落ちて、気がついたらこの洞窟にいた」

「スパム渓谷がここに繋がっているのか!?」


 〈スパム渓谷〉も〈暗闇の洞窟〉のように、初心者向けのダンジョンだ。

 なんでそんな場所と繋がっているんだ? ここは。


「…… あなたは?」

「俺は、暗闇の洞窟のトラップに引っかかってな」

「…… なるほど」


 初心者向けのダンジョン二つに繋がっている、謎の高難易度ダンジョンか。謎ばっかり出てくるな。


「お前、名前はなんて言うんだ?」

「…… オリヴィア・バーナード。あなたの名前は?」

「オリヴィアか、いい名前だな。俺はアルフレッド・アバークロンビーだ」


 薄い水色の髪と目をした少女だ。年齢は俺より少し下くらいだろうか? 特徴はジト目と、ショートカットにしてある髪だ。


「…… 脚、ありがとう」

「ん? ああ、気にするな。あれだと、まともに動けないだろうからな」


 さて、これからどうしたものか。ここを無事に出るには、一緒に連れて行くのが一番いいんだが……


「まあ、とりあえず、体と服を洗ってこい。見張りはしててやるから」

「……?」

「あ〜、すごく言いにくいんだが、それ……」


 俺は、オリヴィアの下半身を指差す。そこには、彼女の威厳を守るために明確には言えないが、ビショビショになっていた。

 オリヴィアは、リンゴのように顔を真っ赤にして、自分の下半身を抑える。


「洗ってこい」


 顔を赤くしたまま、オリヴィアは縦に首を振った。


 ✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽


 オリヴィアが服や体を洗っている間、俺は周辺の警戒をしていた。

 魔物を気配と魔眼で、情報をいち早く察知し、高速で近づいて屠る。

 ここらに出てくる魔物は、ほとんどがBランクなので、剣を振る練習くらいにしかならない。

 それにしても、さっきオリヴィアを魔眼で見ていたのだが、魔力量はなかなかのものだった。おそらく、ソフィの七割程度の魔力は持っているだろう。

 それに、体の中の魔力が緑と黒に見えたから、風属性と闇属性の魔法を使えるはずだ。

 魔法の発動速度も、さっき見た限りではかなり早いようだし、前衛さえいれば輝きそうだな。


「…… おまたせ、アルフレッド」

「おお、ずいぶんと綺麗になったじゃないか」

「…… 全身洗ってきた」


 オリヴィアは、右手の指で髪をいじりながら答える。まだ少し顔が赤い。


「オリヴィアの使える魔法は、風と闇だな?」

「…… なんで知ってるの?」

「俺の左目は少し特殊でな、魔力を見させてもらったんだ。


 俺はオリヴィアに、赤くなった左目を見せる。


「…… 綺麗な目」

「綺麗か? 魔物と同じ色だぞ?」

「…… アルフレッドの目だから、綺麗」

「俺の目だから綺麗か…… ありがとな」

「…… どういたしまして」


 なかなかどうして、嬉しいことを言ってくれるな。


「さて、風と闇の魔法が使えるなら、俺が前衛で、オリヴィアが後衛でいいよな?」

「…… 大丈夫」

「後ろは任せた」


 オリヴィアとともに、十一層を進んで行く。

 俺たちのコンビネーションは、初めてにしては悪くない。まあ、俺が手を抜いて時間稼ぎをしている間に、オリヴィアが魔法を発動させるだけの、簡易なコンビネーションなんだが。


「…… アルフレッド、強い」

「一人でここまで来てるしな」

「…… アバークロンビー家の長男は、魔法が使えないって聞いてた」

「ああ…… まあ、使えなかったな」


 死ぬ思いをして、無理やり魔力を手に入れたが。


「…… どうやって、ここまで使えるようになったの?」

「魔石を食ったんだよ」

「…… 破裂しないの?」

「魔力操作で無理やり抑え込んだ。死ぬほど痛かったが」

「…… 呆れた」


 呆れられた。生きるためには、仕方がなかったことだし、後悔も反省もしていない。


「そういうことだから、前衛と回復と防御は任せておけ」


 十九層までは、Bランクの魔物しか出なかったため、二十層の手前まで、特に事故を起こすこともなく来ることができた。


「おそらく二十層目は、ボス部屋になってるだろう」

「…… ボス部屋?」

「強い魔物が、一体で待ち構えてるってことだ」

「…… キメラみたいな感じ?」

「そういうことだ。そして、今回は実験として、オリヴィアの魔法だけで倒してもらう」


 俺は、オリヴィアの魔法の威力を知りたいからな。これをやるのが一番手っ取り早い。


「…… 一撃で倒せばいいの?」

「そういうことだ。だが、使う魔力は最低限にしろ。一撃で倒したいから最上級を撃つってのは、魔力の無駄になるからな」

「…… つまり、一撃で倒せる威力を見極める?」

「わかってるじゃないか。さて、準備はいいな?」

「…… 問題ない」


 十九層の階段を降りていき、二十層に入る。やはりドーム状の部屋で、真ん中にはブラックタイガーがいた。Aランクの魔物だ。

 白虎と比べるとかわいいもんだな。


「俺があいつを惹きつけるから、魔法が発動できるようになったら言ってくれ」

「…… わかった」


 俺は剣を構え、ブラックタイガーにジリジリと近寄っていく。

 ブラックタイガーは、俺に対して威嚇をしていたが、いずれ我慢できなくなったように、俺に飛びついて来た。

 それを俺は横にステップして避け、ブラックタイガーの首に思いっきり蹴りをいれる。足に毛が刺さり、傷ができるが、即座にヒールを使って治す。

 俺に蹴られたブラックタイガーは、三メートルほど吹き飛んでから、体勢を立て直した。

 オリヴィアは驚きで目を見開いている。俺が、体重が二百キロもある魔物を、蹴り一発で吹っ飛ばしたからだろう。

 この戦闘は、俺の体術のみの戦闘力の測定も兼ねているんだが、Aランクくらいなら、剣を使わなくても勝てそうだな。

 ブラックタイガーは俺を警戒して、唸り声をあげながら距離をとったままでいた。


「…… アルフレッド、いける」

「了解」


 どうやら、オリヴィアの魔法の準備が整ったようだ。

 俺はブラックタイガーに接近して、剣を上段に構える。そして、そのまま振り下ろすと見せかけて、顔面を蹴ってやった。

 怯んだブラックタイガーを横目に、魔法に巻き込まれないようにオリヴィアの元に戻る。


「〈トルネード〉」


 上級の風魔法が発動した。

 突然発生した竜巻に、ブラックタイガーは呑み込まれ、体が宙に浮く。竜巻によって、ぐるんぐるんと空中を回って、魔法の終了と同時に、ベチャッと音をたてて地に落ちた。


「よし、合格だな」

「…… ありがと」


 見極める目も悪くはなさそうだ。これなら、足手まといにはならないだろう。

 なかなかにいいパートナーができたな。


 ✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽


 《ブラックタイガー》


 ブラックタイガーとは、Aランクの体毛が黒い虎の魔物である。

 黒い体毛には魔力が流れていて、とても硬く、そして鋭くできている。そのため、触れただけでも相手に傷をつける。

宮部さんの作品を読んだのですが、自分の文章のお粗末さと表現力のなさ、物語の構成の下手さがわかりますね。もう、格が違います。

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