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私、気になります

某学園謎解き小説が、私は大好きなんです。

 急いで戻ってきて巨大樹を見たとき、俺は唖然とした。

 なんと、巨大樹の幹がパックリと、中心から二つに裂けていたのだ。そしてその中には、魔法陣がこちらを向いて浮かんでいた。


「この中に入れってことか?」


 なら、ここで一旦寝よう。正直、魔力枯渇と疲労でまともに動けん。このまま言ったら、すぐに死ぬ未来が見える。

 だがその前に、ずっとやりたかったことをやらせて貰おう。この四獣の魔石、絶対食ったら魔力増やせるだろ。

 また体が悲鳴をあげるかもしれないが、まあそれは仕方ない。

 魔法陣の先がモンスターワールド的な所だったら、それこそ魔力がなくなって死ぬからな。

 欲を言えば、これで脱出ってのが一番いいんだが。

 俺は正面に魔石を四つ並べ、あぐらをかいて座る。


「いただきます」


 まずは白虎の魔石からいただく、俺の左腕を喰いやがってこの野郎。

 全部飲み込むと、体内の魔力がまた暴れ始めた。だが体に痛みは生じない。あれは最初に食った時だけなのか。

 魔力を無理やり循環させて、暴走を防ぐ。次第に吸収した魔力も自然と循環し始め、安定する。

 よし、この調子で全部食っていこうか。


 魔石をすべて取り込んで、俺の魔力は相当なものになった。さっきまで枯渇していた魔力が、戻るどころか増えているくらいだ。

 身体能力の方は変わってなさそうだな。変化をまったくを感じない。サイクロプスの魔石を食った時は、体が軽くなったように感じたんだが。

 左目にも変化はないな、さっきまでと変わらず、魔力が見える。自分を見てみると、さっきよりも魔力が増えているのが確認できた。輝きが、さっきの何十倍にも膨れ上がってる。

 さて、ここで寝るのも最後だな。俺のことを守ってくれていた巨大樹よ、ありがとう。明日でお別れだ。

 俺はそのまま巨大樹に背中を預け、目を閉じた。


 ✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽


 朝はやはり、日の出とともに目を覚ます。習慣は、そう簡単には崩れないのだ。

 巨大樹の方を見ると、しっかり幹が半分に割れていた。もちろん中には魔法陣が浮いている。

 あの魔法陣、どこかで見たような気がしてたのだが、おそらく俺をここに連れてきた転移魔法陣と同じものだろう。ここから、いったいどこに転移させられるのやら。


「よし!」


 覚悟は決まった、どこにでも転移しやがれ。これで脱出とか言ったら、表紙抜けだな。

 俺は、巨大樹の中の魔法陣に向かって進んでいく。

 魔法陣をくぐり抜けると、一瞬で風景が変わった。どうやら洞窟のようだ。

 後ろを振り向くと、後ろは行き止まりになっていた。森の方には戻れないらしい。


「暗闇の洞窟…… ではないみたいだな」


 所在地不明の謎の洞窟だった。横幅がかなり大きく、俺が二十人は手を広げて並べるだろう。それに比例するように、天井が見えないほどの高さがあった。

 このくらい暗くなっていると、全身真っ黒な装備を着てよかったと思う。ちょうど保護色になっているからだ。


「脱出までは、まだ長いようだし、ゆっくりと進んでいきますか」


 洞窟を進んでいくと、グールが三体ほど出てきた。

 グールは、アンデット系の魔物でランクはB。特徴として、人肉以外を食べない。

 こんな所で、よく今まで生きてきたな。まともに人肉が手に入るとは思えんのだが。

 グールは怪力だが、動きは速くない。三体並んで襲ってきたので、俺から見て一番右のやつから狙う。

 まず、グールの右側を通り抜けつつ抜刀する。その勢いのまま横薙ぎに剣を振って、上半身と下半身をさよならさせた。

 次に、こっちを振り向いた真ん中のグールの首を刎ね、反応の間に合っていない最後のグールを縦に斬り裂いた。

 Bランクなら、ほとんど魔力を使わなくても十分だな。まあ、魔力の消費は一番気にするところなので、苦戦して回復魔法を使うよりも全然いいことだ。

 この調子で進んで行こう。


 ✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽


 洞窟に入ってから一週間が経過した。わかったことが二つある。

 まず一つは、まずこの洞窟が階層型だということだ。

 一週間ずっと探索していたのだが、どうやら、どんどん下に降りていかなければいけないらしい。短いと嬉しいな。

 もう一つは、各階層に水があるということだ。天上から水が降ってきて、それが小川になって流れている。

 上の階層から降っているのかはわからないが、水があることはラッキーだった。なければ、自分の尿を浄化して飲むところだったからな。水魔法が使えないのは、なかなかに痛い。

 食料の方も、魔物を食うことでなんとかなっている。ここは、アンデット以外の魔物がいるので助かった。

 食えるものがなくなったら、アンデットの骨でもしゃぶって進むかな。

 ようやく九層目から降りる階段を見つけたので、十層目に向かって、階段を降りていく。

 十階層はドーム状の部屋で、真ん中にはAランクのキメラが立っていた。


「ボス部屋みたいなもんか?」


 キメラに聞いてみるが、唸り声で返された。コミュニケーションは大事だから覚えとけよ。なんて思っていると、キメラは真っ直ぐ俺に突っ込んできた。


「知能が発達してない魔物って、突っ込むことしか能がないよな」


 俺は体を横に少しだけずらし、最小限の動きで回避する。そのままガラ空きの脇腹に、剣を下から上に振り上げてやった。

 剣は、キメラの腹の肉をあっさりと断つ。

 キメラは、腹から臓物をぶちまけながら死んだ。

 すると、俺が降りてきた階段とは逆の方の扉が開き、下に降りる階段が出てきた。


「さて、どんどん行きますか」


 一応Aランクなので、キメラの魔石を回収し、階段を降りる。

 次は十一層目だが、何も変わらずにただの洞窟だ。少しは見た目を変えてくれないと、こっちも飽きてくるな。

 ちなみに、探索をする時は迷わないように、右側の壁に沿うようにして動いている。迷路を攻略する時のイカサマの筆頭だな。ただ、こっちは命賭けてるんだし、イカサマくらいは許されるよね。

 すると、明らかに人口で加工された壁を発見した。そこはなんと、引き戸になっているのだ。

 こんなもの誰が作ったんでしょう? そして、なんでこんなところにあるんでしょう? 私、気になります。

 罠かもしれないが、気になるものは仕方がない。戸を開けて、中を確認する。

 小さい洞穴のようになっているようだ。奥は暗くて、よく見えない。


「誰かいるのか?」


 俺が声を出すと、暗闇の中から息を呑む気配が感じられた。やはり、誰かいるらしい。

 俺は剣を引き抜き、洞穴の中に入って行く。そして、暗くなっている方に近づいていくと、


「…… で」


 小さく掠れた声で、なにかを言われた。


「なんだって?」

「来ないで!」


 女の声が聞こえた瞬間、暗闇の方から中級の風魔法が大量に飛んできた。


「うおっ!?」


 俺は急いでシールドを発動させて、風魔法を防いだが、どんどん新しい魔法が飛んできて、なかなか前に進めない。


「来ないで! 私に近寄らないで!」

「一旦魔法を止めろ! 俺は敵じゃない!」


 本当に敵じゃないかはわからないが、少なくともいきなり襲うつもりはない。

 次々に飛んでくる魔法を、すべてシールドで防ぎつつ、十分ほど待っていると魔法が止んだ。ようやく魔力が切れたらしい。

 俺は、奥の方へと進んでいく。


「いやぁ! 殺さないで! 助けて!」

「少し落ち着け。俺は、お前に危害を加える気はない」


 女、いや少女は大粒の涙を流し、俺から逃げるように後ずさろうとしていた。だが、うまく逃げられていない。

 暗い中でよくよく見てみると、少女には両脚がなかった。


「おいおい、ひどい怪我じゃないか」

「やめてぇ! 来ないでぇ! 誰か助けてぇ……」


 ついには頭を抱えてうずくまってしまった。なんか少しだけ、怖がらせてしまったという罪悪感がある。


「はぁ、少し待ってろ。治してやるから」


 俺は少女の両脚を、最上級相当のヒールを使って治してやった。もちろん両脚は、にょきにょきと生えてくる。やはり気持ち悪いな。


「もう大丈夫だ…… って、気絶してるし」


 仕方ない。少しだけ面倒を見てやるか。


 ✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽


 《グール》


 グールとは、Bランクのアンデットの魔物である。

 人肉のみを捕食対象とし、それ以外の肉には興味を示さない。

 動きが鈍いため、攻撃を避けることが容易い。だがもし当たってしまうと、人間が簡単に死ぬほどの怪力を有している。


 《キメラ》


 キメラとは、Aランクの魔物で、ライオンの顔に羊の胴体、尻尾は蛇という、複数の動物を混ぜ合わせたような魔物である。

 それぞれの部位が意思を持っており、三匹のコンビネーションにより動いている。

 素早い動きで敵を翻弄し、ライオンの牙や蛇の毒でトドメを刺す。

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