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青龍とフェニックス

過去に書いた話の中で、意図せずルビになっていたところがあったので、少し記号を変えました。


《ヒール》

〈ヒール〉

 玄武を倒したあとは巨大樹に戻り、肉を食べて体力を回復した。ついでに寝ることで、魔力も回復させる。

 魔力というのは、寝なくても徐々に回復していくが、寝ることによって効率がよくなるため、早く回復させることができる。

 次は東の魔物を狩りに行く。白虎と玄武には勝てているので、この調子なら問題なく狩れるだろう。

 森に入り、真っ直ぐ東側へ向かう。

 こっちは西や北と違い、木が折れたりなどはほとんどなかった。いや、ほとんどではなく、まったくと言ってもいいだろう。つまり、ごく普通の森だったのだ。

 しばらく歩いていると、東のボスらしき魔物のいる場所に到着した。

 道中、Cランク程度の魔物が出てきたが、すべて一撃で屠ることができた。

前までは、一人だと、このくらいの魔物が限界だったんだがな。


「これは…… 泉か?」


 湖というほど大きくはない。大きな池という感じの場所だ。そして、その水の中に魔物の魔力が見える。

 覗いてみると、細長い蛇のような影が見えた。

 もしかして、また蛇なのだろうか? それなら、首チョンパして終わりなんだが……

 魔物の方を、泉の端っこからじっと見ていると、水面の方に昇ってきているのか、影がどんどん大きくなってきた。

 そして魔物が泉の中から姿を現した瞬間、俺は息を飲んだ。


「東洋の龍…… だと!?」


 実はこの世界には西洋の竜しかおらず、蛇のような形をした東洋の龍がいなかったのだ。

 それを父様の書斎で知った時、東洋の龍好きの俺はかなりがっかりしたのだが、まさかこんなところで拝めるとは。

 ちなみに目の前にいる龍の色は青かった。完全に青龍だ。となると最後の一匹は――

 俺がそんなことを考えていると、青龍は空中から水の球を圧縮したブレスを撃ってきた。


「あぶねっ! おい、空中からは卑怯だぞ!」


 人間の言葉が通じるわけもなく、いや通じてもやめないだろうが、青龍は水のブレスを連続で放ち続ける。

 俺は、青龍が口を向ける方向から弾道を予測して、回避をしつつ、シールドを使って、空中に地面と平行になるように壁を作る。そして、それを乗りついで行き、青龍のところまでたどり着いた。

 青龍は、近づいてきた俺を尻尾で叩き落そうとするが、俺はそれをシールドで防ぐ。

 俺は青龍に接近し、ジャンプして首元に乗る。そして首元に剣を突き立て、落とされないように固定した。

 青龍は痛みで暴れるが、俺は剣と足でがっちりとしがみついているため振り落とされない。

 俺は首に捕まったまま、青龍の頭にヒヒイロカネのナイフを突き刺した。ついでにそのナイフに魔力をたっぷりと注ぎ込む。すると、刃のヒヒイロカネがさらに高温になり、青龍の頭から火が噴き出した。


「あちっ!」


 俺の左手も青龍の頭も一緒に燃え上がるが、〈ヒール〉し続けているため問題はない。ただ、めちゃくちゃ熱いだけだ。

 青龍は、俺を振り落そうとめちゃくちゃに暴れるが、それによって体力の限界を迎え、泉に落ちる。

 泉の水がナイフに触れた瞬間、急激に温度が上昇。爆発的な速度で液体が気体に変わったことにより、水の体積が一気に増えて、水蒸気爆発を引き起こした。

 俺は体に纏うようにして、シールドを展開する。そのおかげで、吹き飛ばされるだけで済んだ。

 今回は空高く舞い上がったため、木の枝に引っかかって、地面に衝突することはなかった。


「いてて…… なんか俺、毎回吹き飛んでないか?」


 体についた木の葉を払いながら、泉に近づいていく。

 泉の水はずいぶんと減っていて、なおかつ青龍の血で赤く染まっていた。ついでに肉塊も浮かんでいた。

 鼻につくような生臭さを我慢しつつ、魔石を探す。

 魔石はちょうど泉の真ん中あたりに浮いていた。


「もしかして俺、この血の海を泳がないと行けないのか?」


 うわぁ、なんでよりにもよって、あんなド真ん中にあるんだよ、あいつ。

なんか、俺――魔石――のことを取ってみろって、煽ってきてるような気がする。

 俺は血の海――泉――に入り、魔石を回収する。案の定、体がベトベトになった。もう一生、こんなことはやりたくない。

 俺は巨大樹に戻り、川に洗濯と体を洗いに行った。こんな状態で戦いたくない。

 体を流しつつ服も洗って、水につかる。そういえば、久しぶりに体を流したな。ここ最近は拭いてばっかりだったから、行水が気持ちよく感じる。

 さて、ゆっくりもしてられないな。さっさと最後の一匹を倒しに行こうか。

 今まで使ってきた、左腕の破れた迷彩服は干しておき、新しい服に着替える。全身真っ黒な装備だ。

 これを持っていたあの冒険者は、重い鎧はつけずに軽さを重視して、スピード勝負をするタイプだったみたいだ。実にいい、俺好みの戦い方だ。


「よし、じゃあ行くか」


 荷物の整理をして、南に向かう。整理と言っても、全部亜空間ポーチに入れただけなのだが。

 南は、進めば進むほど気温が高くなっていった。しまいには木も枯れ果て、砂漠になっている始末だ。

 そんな砂漠の中心に、大きな鳥の巣があった。鳥の巣と言っても枝でできているわけではなく、岩でできているものだ。

 その岩を登っていこうとすると、ジュゥゥゥと音をたてて、手がこんがりと焼けた。結構驚いたが、ヒヒイロカネよりは熱くないな。

 ヒールを手にかけつつ、いいことを思いついた。手をシールドで覆えばいいじゃないか。

 手にバリアを張りつつ、岩に触れてみると、まったく熱くない。

 そのままひょいひょいと岩を登っていく。我ながら猿になった気分だった。いや、岩山だと鹿かもな。たしかそんな鹿がいた気がする。

 岩と岩の間から中を確認する。すると中には、火で全身が覆われている鳥がいた。

 あれは朱雀と呼んでもいいのかな? どちらかというと、フェニックスって言った方が正しい気がする。

 フェニックスは俺に気づくことなく、巣で悠々としていたので、こちらから中に入ってやった。

 すると、こちらに気がついたフェニックスは、甲高い鳴き声をあげた。

 俺は高速で近づいて、フェニックスに飛ばれる前に、シールドをフェニックスの周りに正方形に展開し、拘束した。親父ギャグじゃないぞ。

 フェニックスは訳がわからずもがいている。もちろん俺は何もしない。

 フェニックスは火のブレスを放った。もちろん俺は何もしない。

 フェニックスが自分の体から炎を噴き出した。もちろん俺は何もしない。

 フェニックスは倒れた。もちろん俺は何も…… って解体しないと。


 さあ、問題です。なぜフェニックスは倒れたでしょうか?


 1. 失血死

 2. ショック死

 3. 酸欠


 はい、正解は3. の酸欠でした。


 魔物は生物だ。そしてこの世界の生物は、必ず酸素が必要になる。それは、体全体が燃え上がっている生物でも例外ではない。

 つまり、バリアを使って空気の出入りを封鎖してしまえば、その中の酸素を火が勝手に消費してくれるため、フェニックスは酸欠で死ぬのだ。

 まあ、常時シールドを張り続けるなんてことをしたせいで、もう魔力がほとんど残っていないのだがな。

 フェニックスの体は熱かったが、ヒヒイロカネのナイフで解体できた。普通の金属だったら絶対に溶ける温度なんだが、ヒヒイロカネの融点が高いおかげでなんとかなった。

 俺が魔石を取り終わり、巨大樹に戻ろうとすると、いきなり大きな地震が起こった。玄武のものよりも大きい。しかも巨大樹の方から、バキバキという不気味な音がする。

 早く戻って、何があったのか確認しよう。

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