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リベンジマッチ

赤い眼でブクマが結構伸びた笑

やっぱり主人公が苦しんでる展開って、感情移入しやすいですもんね。

「さて、リベンジマッチだ」


 俺の目の前には今、獰猛な牙を見せて威嚇している白虎がいる。

 前にあった時のような恐怖は感じない。俺はもう、やつの獲物にはなり得ないからだ。


 俺は魔力を回復させてから、すぐに白虎を探した。

 また西の方に歩かねばならないと思ったが、白虎も俺のことをずっと狙っていたらしく、巨大樹から少し離れたところで自ら姿を現した。


 俺は剣を正面に構え、ミスリルの耐えられるギリギリまで魔力を流す。その魔力量を感じ取った白虎は、警戒を高めた。

 緊張感がその場を支配する。時間の流れが遅く感じられ、世界に俺と白虎しかいないような錯覚に陥る。

 それに耐えきれなくなった白虎が、俺に向かって爪を立てて飛び込んで来た。

 前に会った時はあれだけ早く感じたのに、今ではしっかりと姿を捉えることができる。なぜかはわからないが、これは都合がいい。

 俺は少しかがんで、剣を横に倒し、白虎の後脚に向かって剣を横に薙いだ。すると、まるで紙切れでも斬っているかのような感覚と共に、剣は脚を両断した。

 空中でバランスを崩した白虎は、地面に顔から衝突し、何度か転がってから止まった。体と後脚が切り離され、痛みに耐えるようにもがいている。

 俺は苦しんでいる白虎に近づいていき、心臓に向かって剣を突き立てた。剣は、なんの抵抗も受けずに心臓へと到達する。

 白虎は体をビクッと痙攣させた後、動かなくなった。


「一瞬で終わったな」


 たったの一振り。それだけで、白虎を戦闘不能に追い込むことができた。

 武器に流せる魔力の量が増えたというのが、白虎にダメージを与えられた理由なのだが、なぜか動体視力と身体能力が上がっているということも、勝つことができた要因の一つだろう。

 魔石一つでいろんな弱点が克服できたな。ずいぶんと便利な体になったものだ。

 白虎の魔石を取り出してみると、五十センチほどの魔石が体から出てきた。

 このサイズだとSランクくらいだな。なんちゅう化け物だったんだ。それをあっさり倒す俺も、化け物の仲間入りかな?


 俺は一度巨大樹に戻り、体を休ませる。

 これは魔眼を使ってわかったことだが、この森には、四頭の強力な魔物がいる。その一頭が、さっき俺が倒した白虎だ。

 北に東、そして南に、それぞれ大きな魔力反応があるため、そいつらを倒すことが脱出の糸口になると、俺は考えている。

 つまりは、東西南北すべてを制覇しろってことだな。Sランクの魔物を四頭も狩れとか、ここ作ったやつは、絶対に頭がおかしいと思う。

 文句言っても仕方ないので、時計回りに倒して行こうと思っている。となると、次は北だな。


「よし! やりますか!」


 俺は立ち上がり、北を方へ歩いていく。

まだ日は高いが、帰るころには暗くなるだろう。そのくらい遠くに、強力な魔物の魔力が見える。

 そういえば、このダンジョンはトラップがないな。

 魔眼で見ているから、すぐに見つけられるはずなのだが、それが見当たらないとなると、少なくとも、魔法で作られたトラップは一つもないということになる。

 純粋な戦闘力のみを求めて、作られた場所なのかもしれないな。それがわかるのは、ここから脱出できた時かな。


 辺りを警戒しながら北に進んでいくと、だんだんと、重いもので潰されたような木が増えていく。そして、それと同時に魔物にも近づいていった。


「ここか?」


 到着すると、俺の前にあるのは山だった。地面が盛り上がっていて、木も生えている。

 そして、その山の中に協力な魔物がいるようなのだ。


「どういうことだ?」


 俺は周りを歩きながら、山のことを調べていく。

 すると、地響きとともに、蛇型の魔物が山の端の方の地面から飛び出してきた。

 こいつも見たことがない魔物だ。

 蛇はこちらを丸呑みしようと、口を開けて突進してくる。だが、そんな単調な攻撃が当たるはずもなく、俺はその蛇の首を断ち切ってやった。

 蛇の首は切り離されてからも、少しの間だけ地面でジタバタと暴れる。しかし、次第に力も弱っていき、動かなくなった…… 切り離された、首の方だけ。

 攻撃される気配を感じて上を見上げてみると、体は大きく振りかぶって、俺に攻撃を仕掛けようとしていた。

 一直線の叩きつけだが、体の太さもあり、普通なら避けるのが難しいだろう。

 しかし、俺は上がった身体能力を生かし、横に余裕をもって避けた。それから剣を上段に構え、振り下ろすことで、蛇の体をもう一度真っ二つにした。

 切り離された体の方は動かなくなったが、地面に生えている方の体は、俺から距離をとってはいるが、未だに動いている。

 よく見ると気持ち悪いな、あれ。

 蛇の魔物の攻撃が止んだと思ったら、山の方から地鳴りのような音が鳴り始め、激しい地震とともに山がせり上がってきた。

 そこから現れたのは、亀形で尻尾に蛇がついたような魔物。

 どうやら、あの蛇は尻尾だったらしい。形は完全に玄武だし、やっぱり狙ってるだろ。

 俺は、先手必勝という言葉に従って、玄武の脇腹に向かって横薙ぎに剣を振る。しかし、かすり傷しかつかなかった。


「甲羅は、上下ともに硬いのか」


 となると、切れそうなのは首か脚だな。ただ、首は高さの問題で届かないから、結局は脚一択ってことになる。

 俺は後脚のほうに走って行こうとするが、それを尻尾の蛇が邪魔してくる。厄介なのでもう一度蛇を切断しつつ、亀の左後脚を斬りつけた。


「やはりここも硬いな」


 刃は通らなくはないが、切断することはできなかった。

 だが、玄武の動きは鈍い。何度も攻撃すれば、問題なく切断できるだろう。

 俺は、玄武の右後ろに回り込んで脚を斬りつけ、次に右前足を斬りつける。そうやって、玄武の周りを回りながら斬りつけていくと、ついに四本の脚で自重を支えきれなくなったのか、玄武は、凄まじい音と揺れとともに倒れた。

 すると、玄武を覆い尽くす程の量の砂煙が舞い上がる。倒れただけでここまでとは、なんて重さだ。

 だが、これで頭に攻撃できるようになった。俺は玄武の頭の方に駆けていき、砂煙の中を突っ込む。

 ようやく玄武の頭が見えてきて、俺が剣を構えた時、玄武は口を大きく開けた。


「何をする気だ?」


 俺が疑問を口にした途端、玄武は息を大きく吸い込み、爆発のような咆哮をあげた。

 俺は咆哮によって発生した衝撃波で、後ろに大きく吹き飛ばされる。背中に木が当たり、その木をへし折ってさらに後ろに吹っ飛ぶ。

 百メートルは滞空していただろうか? 背中に光魔法のシールドでバリアを作り、常時ヒールを自分にかけ続けたおかげで、ほとんどダメージはない。

 シールドは、衝撃に耐え切れずに何度か壊れたが、そのたびに張り直すことができたので、連続で発動させることはできるようだ。

 戦闘中でも、魔法を発動させる集中力が保てるか心配だったが、それもまったく問題はない。

 俺は、上に乗っかっている木や土を退け、地上に出る。周辺を一望すると、玄武の周りに円を描くようにして木が吹き飛び、地面がむき出しになっていた。

 だが、玄武も今の攻撃で疲れ切ったのか、目を閉じて動かないでいる。

 俺は急いで玄武の頭の上まで登り、ミスリルの剣に魔力を込めて突き刺す。一発では死なないので、何度も何度も突き刺した。

 二十個ほど頭に穴を開けたところで、ようやく玄武の息が止まった。結構えぐいことをしてしまったが、命のやりとりなので仕方ない。

 玄武のおかげで、俺の課題も少しわかったな。どうやら、まだまだ火力が足りないらしい。今回は、決め手に欠けて手こずった。

 白虎はもしかすると、俺と相性がよかったのかもしれない。スピード特化で紙防御だったからな。

 それにしたって、倒したはいいけど、これは魔石を取り出すのが大変そうだなあ。


「やるしかないかぁ……」


 嫌々ながらも、魔石を回収するために、俺は玄武の硬い皮膚を解体し始めた。

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