赤い眼
徐々にブクマが伸びてきて、すごい嬉しいです。
私の全くない文章力でも、なるべく楽しんでもらえるように頑張ります。
ついでに章も設定してみました。これで見やすくなればいいな。
俺はここから脱出する方法を、頭をフル回転させて考える。
俺の中で最も足りていないもの、それは魔力だ。結局、昔から足りていないもので悩んでいるわけだ。
それなら、魔力を増やす方法を考えよう。魔力操作で地道に鍛えるか。いや、何年かかるんだよ。
うーん、他にいい方法あったかなあ。
何かしらヒントが欲しくなり、適当にポーチを漁る。中に入っているのは、パンチラビットとレッドファングの魔石、それにサイクロプスの魔石、って魔石ばっかりだな。
「魔石か…… あ、いいこと思いついた」
魔物は魔力のある生物を喰らって、自分を強化する。この世界の人たちなら誰でも知っている常識だ。
では、人間はどうなのか。魔物の研究家なら誰しもが思った疑問だ。
結論を言ってしまうと、人間は魔物の肉からは魔力を吸収できない。だが、それはあくまで肉からはできないという話であり、人間が魔力を吸収できないことを指し示しているわけではない。
では、なになら魔力を吸収できるのか。勘のいい人ならすでに気がついているかもしれないな。そう、魔石だ。
魔石は超高密度の魔力の集合体である。そのため、これを体内に取り込めば魔力を吸収できる。
しかし、これは理論上では可能だが、実質不可能なことだ。
なぜなら、これをすると、体内の魔力が暴走して体が破裂してしまうのだ。
だが、もしこの破裂を抑えられるとしたら、魔力を体内に取り込めるのか。これをやろうとした人はいたらしいが、全員が死んでしまったため不明だ。
だが、挑戦してみる価値はある。
俺は昔から、魔力操作だけは誰にも負けなかった。魔力が暴走し始めたら、魔力操作で無理やり循環させればいい。
一か八かの賭けだ。だが、だからこそ、俺が人類史上初めて、魔石からの魔力の吸収を成功させてやる。
ポーチからサイクロプスの魔石を取り出して、じっと眺める。そのままの状態で何秒くらいいただろうか?
俺は、重要なことを忘れていたということに気がついた。
「この魔石、大きすぎて食えなくね?」
そう、サイクロプスの魔石のサイズは手のひら並みのサイズなのだ。他の魔物の魔石も、とても丸呑みできるような大きさではない。
「まあ、噛み砕いて食べればいいか」
そうだ。俺には、立派で真っ白な歯があるじゃないか。魔石相手に折れなければいいんだが。
「ふぅ…… いただきます」
緊張で心臓の鼓動が早くなり、呼吸が乱れる。魔力が暴走したら死に、循環させれば生きる。成功するかわからないが、やってみるしかない。
俺は、意を決して魔石にかぶりつき、バリバリと食べていく。
破片が口に刺さって痛いし、無味無臭で美味しくない。なにより、これがサイクロプスの体内にあったと考えると気持ち悪い。
すべて食べ終えると、体の中の魔力がかなり増えた感覚があった。だが、それと同時に魔力が暴れ始める。体の外に出ようと、必死にもがいてるような感じだ。
そいつを無理やりコントロールし、循環させる。
「ぐぅっ!」
正直かなりつらい。骨や肉がミシミシと不気味な音をたてているし、全身を切り刻まれるような痛みに襲われる。
俺は、地面の上で丸くなって痛みに耐えつつ、魔力の暴走を無理やり抑える。
そのせいで内臓が傷ついたのか、腹の中を掻き回されるような気持ちの悪い感覚とともに、口から血を吐き出した。
こいつはいつまで続くんだろう。俺は、ついに痛みに耐えきれなくなり、手足をばたつかせながらもがき始める。
早く終わってくれ!
その願いが叶うのは、それから一時間が経ち、俺が気絶した後だった。
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どのくらい眠っていただろうか? 頭が、顎を殴られて気絶した時と同じくらいに、ガンガンと軋んで痛い。
俺は、身体中の痛みが徐々に引き始め、魔力の暴走が沈んだのを感じ取ってから、糸が切れたように気を失った。
あれは、永遠に苦痛を味わっているような感覚をも覚えた。もう二度とやりたくない。
ゆっくりと、自分の体をいたわるように起きる。あたりには、俺を中心に血の水たまりができていた。
「とりあえず、生きてるな……」
俺は生きている。賭けに勝ったぞー! よっしゃぁぁ!!
さて、生きてることを確認したところで違和感が一つ。左目がおかしい。
なにがおかしいのかというと、サーモグラフィーのような視界になっているのだ。
とりあえず周りを見てみる。バカみたいな本数の木があるだけだ。
次に自分を見てみると、白く光っていた。
「は?」
なんだこれ。なんで俺だけ白いんだろう。うーん、わからん。
とりあえず喉が渇いたから、水を汲みに川へ向かった。
巨大樹から川までの距離はそこまで遠くなく、五分も歩けば到着する。
俺は、水を汲むためにしゃがみこんだ。その時、自分の顔が水面に反射して映る。
「左目が…… 赤い」
この世界の人間の眼の色はたくさんあるが、赤だけはない。
原因は不明だが、アルビノとして生まれてきた人間以外に、赤い眼を持った者がいないのだ。
だが、この世界でも、赤い眼を持った生物は存在している。
そう、魔物と魔族だ。
そして、魔物は獲物を判断する時、魔力を見ることで獲物かどうかを判断する。つまり、
「俺の左目は、魔物の視界と同じようになったってことか」
それにしてもオッドアイとか、中学校二年生かよ。
俺の左目が疼くってか。完全に邪気眼とか魔眼の類だな。次から魔眼って呼ぶか。
それにしてもこの魔眼、人のいる所に出たら、隠さないといけないな。
この世界では、赤い眼ってのは不吉の象徴で、そういう眼を持った子が生まれるだけで、厄災が訪れると言われるほどなのだ。
ここを出たら眼帯を作ろう。今のこの格好に眼帯をしたら、完全にビッ○ボスなんだけど。
革袋に水を汲んで、クリアで浄化する。だが、まったく魔力が減った感じがしない。サイクロプスの魔石一つで、こんなに魔力が増えるものなのか。
この魔力量だと、最上級相当の魔法まで使えるだろう。最上級の魔法なら、俺の左腕だって再生できるはずだ。
「〈ヒール〉」
俺は左腕に魔力を集め、回復魔法を使う。俺の腕に、徐々に白い光が覆っていく。
俺は、そこに俺の魔力をどんどん注ぎ込んでいった。すると、どんどん光が強くなっていき、俺の左腕が肘からにょきにょきと生えてきた。
再生はしたが、腕の生え方がちょっと気持ち悪いな。
でも、これで戦闘する時も困らないな。
それに、最上級相当の魔法使っても、魔力がまだ半分くらいは残っている。これなら、このダンジョンでも生き残れそうだ。
「さて、待ってろよ、あの虎野郎。絶対にぶっ殺してやる」
左腕のツケは、その命で支払ってもらおうか。
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《特殊魔法》
光と闇の二つの種類の魔法のことである。
色魔法は使用できる者が少なく、独自で開発した魔法を使っていることがほとんどなため、使用者自らが魔法の名前を考える。
したがって、魔法にランクをつけることができない。だが、魔法の使用による魔力の消費で、だいたいのランクを予想することはできる。
魔眼は、魔力と魔法適性を色で判断できるだけなので、どんどん影が薄くなっていってしまいそうな予感……