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謎のダンジョン

 目を覚ますと、俺の目の前にはサイクロプスがいた。


「っ!」


 俺は急いで剣を構える。しかし、サイクロプスは動く気配がない。

 俺はサイクロプスを周りを回るように歩いていき、反対側に回ってみると、体の半分がちぎれているのを見つけた。


「なるほど、これは死ぬわな」


 俺は剣を鞘にしまい、警戒を解く。

 しかし、なぜサイクロプスは体がちぎれたんだろう? というかまず、ここはどこなんだ。

 周りを見渡して見ると、どうやら森のようだ。

 木が生い茂っていて見通しが悪い。そんな中に俺と、半分になったサイクロプスだけがいる。うん、わけがわからん。

 少し思い出してみよう。俺の最後の記憶は、ソフィが俺を呼ぶ声と、死にかけのサイクロプスと……


「魔法陣か……」


 あの魔法陣によるなんらかの効果により、ここに来たってところだろうか?

 となると、あの魔法陣は、転移魔法陣ってところか?

 なんでそんな上級のダンジョンにしかないトラップが、あんな初級のダンジョンにあったんだ……? まあ、それは考えても仕方のないことか。

 ただ、サイクロプスの謎は解けたな。魔法陣に入っていなかった体の半分は、こっちに転移されなかったってことだろう。

 とにかく、早くここからの脱出しないとな。そして、ソフィとシャルにもう一度会う。それが今からの目標だ。

 そうと決まれば、まずは状況を確認しないとな。木に登って、高いところから周りを見てみよう。

 近くの木に近づこうとして、一歩目を踏み出す。


「さて、この木に登るか…… って、痛っ!」


 そういえば、サイクロプスとの戦闘で大怪我してたんだった。

 さっきまで、頭が追いついていなかったから痛みを感じていなかったが、冷静になってみると全身が痛い。とりあえず回復しよう。

 俺の光魔法は、ここ数年で比較的上達した。

 まず、複数の部位を同時に回復できるようになった。

 これにより、今のようにいろんな部位に大怪我をしたとしても、部分的に治すことによって消費魔力を抑えている。

 そして魔力が増えたことにより、光の壁を作れるようになった。物理も魔法も防げる万能な壁だ。名前は〈シールド〉だ。

 だが、こっちは実戦ではまったく使えない。発動できるようになったといっても、やはり俺の魔力が足らず、耐久性が絶望的だった。

 まあ、使えるようになったこと自体が成長だろう。

 とりあえず回復し終えたので、木に登って周りを見渡してみる。見渡す限り木しかなかった。地平線の先まで木だ。

 これは…… 広すぎて、脱出できる未来が見えないんだが。

 いや、よく考えてみると、ここはまだダンジョンなのか。森を出るとは別に、なにか脱出する手段があるはずだ。

 とりあえず一際大きな木を見つけたので、そこに行ってみることにする。

 周りの木が十メートルくらいだとすると、その木だけ五十メートルはある。超大型の巨人なんかが出てきそうな高さだ。


「近くで見ると、本当にでかいなぁ……」


 巨大樹の根元に来てみると、根の太さが俺の身長よりも大きかった。しかも、一周するのに、何分もかかりそうなほどに幹が太い。立派な木だ。

 木を見上げながら幹の周りを回る。ずっと見上げていたら、だんだん首が痛くなってきた。


「ん? なんだあれ?」


 白っぽい何かが木の根の間に挟まっている。とりあえず、近くに行ってみよう。


「こいつは……」


 根を飛び越えて行ってみると、そこには人間の白骨死体があった。ここに来た人間が、俺の他にもいたんだな。

 それにしても装備がいい。有名な冒険者だったとお見受けする。

 うーん…… この装備、別に貰ってもいいよな? どうせ誰にも使われていないのだし、俺が使っても問題ないよな。

 よし、そうと決まれば物色開始だ。


 死体の持ち物を頂戴していると、高価な物というか、役立ちそうな物が結構あった。

 まずは亜空間ポーチ。腰に付けるタイプの革製のポーチで、見た目に反して中には大量の物を収納しておける。

 これからは、回収した物はここに入れておけば、かさばらずに済むだろう。

 そして、そのポーチの中に、学院の制服よりも頑丈な装備がいくつも入っていた。おそらく予備の装備だったのだろうが、なかなかいい素材でできている。これで服には困らなそうだな。

 一番嬉しかったのがナイフだ。ナイフはナイフでも、ただのナイフではない。刃の素材がヒヒイロカネなのだ。

 ミスリルに並ぶ、最高級の金属で作った武器が手に入るとは、俺は運がいい。

 いや、こんな所にいる時点で運は悪いか。不幸中の幸いってやつだな。

 しばらくは、ここを拠点として行動しようと思う。明日から森の探索だ。さっそく、サバイバル訓練で得た経験が役立つな。

 服はポーチの中に入っていた物で、迷彩柄のものを選んだ。森で隠れるにはちょうどいい。

 ちなみにヒヒイロカネのナイフは左胸に装備してある。左手の逆手持ちで、すぐに抜けるようにするためだ。

 まるで、スネ○クだな。魔物に見つからないようにスニーキングもするしな。しかも、森の中を。

 一応、王都の武器屋で買った鋼のナイフも右腰につけておいた。剥ぎ取り、もしくは対人戦の近接戦闘のための物だ。対人戦があるかどうかはわからないがな。

 今日は、巨大樹の根元に隠れるようにして寝る。寝込みを魔物に襲われたくないからだ。

 今のところ見かけていないが、おそらくこの森にも魔物はいるだろうから、しっかり注意しながら眠ろう。


 ✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽


 朝は日の出とともに起きる。習慣だから勝手に目が覚めてしまう。

 このダンジョンは、太陽がしっかりと出るらしい。あれが本物かどうかはわからないが。

 今日から森を探索する。そのためにまずは、この巨大樹を中心として、東西南北の四方向にわけたい思う。

 まずは西からだ。そこから時計回りに探索していく。

 なぜ西なのかというと、俺が転移してきた方向が、巨大樹から見て西側だっただからだ。

 それに、亜空間ポーチを手に入れたから、サイクロプスの魔石を回収しておきたいというのもある。

 探索をする時は、迷わないように木に印をつけて進もうと思う。ここは確認済みだということを、簡単に知らせるためのものでもある。

 巨大樹のおかげで方位はわかるが、同じところを何度も探索していたんじゃ、意味がないからな。


「さて、行くか」


 木に、鋼のナイフで印をつけながら西に進む。

 しばらく歩いていると、魔物発見した。レッドファングという魔物で、危険度はCランクだ。

 木が多いおかげで、見つからずに済みそうだな。無駄に戦闘して、体力を使うのは避けたい。

 そこからしばらく歩いていると、少し開けた場所に出た。幹の半ばで折られている木が何本もあり、太陽の光が差し込んでいる。


「なんだこれは?」


 折れている木は、なにか鋭利なもので切断されていた。ここにいる魔物がつけたものだろう。

 これだけ太い木を切断できるような魔物となると、確実にAランク以上だな。

 そんな魔物が出てきたら、倒せるのかが心配だ。 サイクロプスでさえ、傷一つ付けられなかったのに。まあ、戦わなければなにも問題はないんだが。

 俺はそれから、転移してきた場所に行き、サイクロプスの魔石を回収した。

 サイクロプスの魔石の大きさは、手のひらサイズだ。Aランクの魔物だと、だいたいこの大きさになる。

 それなりの高級品で、金貨五枚くらいの価値になるだろう。このダンジョンを出てからは、金に困らなそうだ。

 ちなみに、魔物から取れる魔石は、大きさだけで価値が決まる。魔物別でも、質がほとんど変わらないというのが、主な理由だ。


「今日は巨大樹の所に戻るか」


 もうすぐ日が暮れる。完全に暗くなる前に戻ろう。


 ✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽


 《ヒヒイロカネ》


 ヒヒイロカネとは、ミスリルに並ぶ金属の最高級品である。

 特徴として、金よりも軽くミスリルよりも硬い。そして、錆びることがない金属である。

 魔力伝導率はあまり高くはないが、常温で驚異の熱伝導性を持っており、その刃は常に熱で赤く輝いている。

 小さい武器で、魔力を使わずとも致死性の高い武器が作れるというのと、ミスリル並みに発掘されにくいため、長剣などの大型の武器が作られることはほとんどない。


 《レッドファング》


 レッドファングとは、Cランクのサーベルタイガーのような魔物である。

 自分の牙に火魔法を使い、高熱で赤くなる。その牙で噛みつく攻撃は強力だ。

 爪を使って攻撃することもあるが、長くないはため、あまり驚異ではない。


 《シールド》


 魔法使用者が、自由に反物理もしくは反魔法の性質を決められる万能な壁。

 だが、万能なかわりに、魔力を圧縮して強度を高めることも、形を自由に変えることもできない。つまりは、シールドの強度は魔力量のみによって決まるということだ。

 反物理は個体、液体、気体ごとに、反魔法は各属性ごとに耐性を変えることができる。

 簡単に言えば、水は止められても空気はすり抜ける壁や、火魔法は止められても水魔法が貫通する壁を作ることが可能ということである。

アルは物知りだなぁ。

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