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一つ目の怪物との死闘

 サイクロプスは、その大きな一つ目でこちらを見ている。

 A組は唖然としていて、誰も動けない。先生が死んだことも、サイクロプスが壁の向こう側からあらわれたことも信じられないのだろう。


「リューリク王子、みんなを先導して、ダンジョンの外まで連れて行ってください」

「アルフレッド君はどうするんだい?」

「俺はサイクロプスの足止めをします」


 それ以外、全員が助かる方法はないだろう。王子なら、クラスのみんなもついていくはずだ。


「アル君、私もやる」

「死ぬかもしれないぞ?」

「アル君と一緒なら大丈夫」


 困ったほどに信頼されてるな。まあ俺も信頼しているが。


「ではリューリク王子、みんなをお願いします」

「わかった。君たちも気をつけて、あとで絶対に合流しよう」


 俗に言う死亡フラグだぞ、それ。やめてほしい、俺はまだ死にたくないからな。


「みんな! アルフレッド君とソフィア君があの魔物の足止めをしてくれる! 今のうちに逃げるぞ! ボクについて来い!」


 王子は普段出さないような大声で、みんなを先導して、ダンジョンの出口に向かって走っていった。

 さて、最低でも五分は時間稼ぎしないとかな。


「ソフィ、使う魔法は火か雷にするんだ。その他の魔法は、サイクロプスとは相性が悪い」

「わかった! 〈フレアボール〉!」


 ソフィが中級の火魔法を発動させ、俺はその魔法の後ろをついていくように、サイクロプスに接近する。

 サイクロプスは、ソフィの放ったフレアボールを片手で薙ぎ払った。あっさりとかき消される魔法。

  だが、その時間で俺は、サイクロプスの股下まで潜り込んでいた。

 剣に最大限の魔力を込め、アキレス腱を狙って剣を振る。すると、剣はあっさりと弾かれた。


「マジかよっ……! って、危ねぇ!」


 俺に気がついたサイクロプスが、俺を叩き潰そうと足を踏み込む。それをギリギリのところで避け、ソフィの所まで戻る。


「全然攻撃が通用しないな」

「うん。中級があんな簡単に防がれるとなると、上級でも倒せなさそう」

「最上級使うとしたら、時間はどのくらいかかる?」

「一分は欲しいかな」

「一分間、時間を稼ぐ。だが、その魔法で倒せなかったら、全力で逃げるぞ」


 ソフィは、「了解」と言って魔法の準備をし始めた。

 俺は一分の間、サイクロプスを引きつけなければならない。できるかはわからないが、やるしかない。

 サイクロプスは待ちかねたように、拳をこちらに向かって振り下ろしてきた。

 俺はその攻撃を紙一重で避け、腕を斬りつける。かすり傷もつかないが、気にせずにサイクロプスの足元に走っていく。

 右足正面、次は左足の後ろ。そのまま流れるように正面に回り込み、足を斬りつけていく。傷はつかないが、気を引くことはできるだろう。

  三十秒ほどで動きに慣れてきたサイクロプスは、正確に俺のいる場所を殴ってきた。

 その攻撃を、俺は大きく後ろに飛んで避ける。すると、ドォン! と音がして、地面が陥没した。

 なんて威力だ。これは、先生が余波だけで死ぬのも頷ける。

 俺は恐れずにサイクロプスに突っ込み、足の指を斬りつける。だが、これもあっさり弾かれた。どうやら指まで硬いらしい。

 サイクロプスは俺に向かって蹴りを放った。

 俺はそれを避け、逆の足を数回斬りつけて、サイクロプスの気を引く。

 すると、サイクロプスは、逆の足でもう一度蹴りを入れてきた。

 俺はそれを大きく転がることで回避して、サイクロプスの方を見る。

 左の拳で殴りつけてくるのが見えたので、避けようとして後ろに下がった。しかし、そこには壁があった。


「やべっ!」


 とっさに体を反転させて横に飛ぶ。それでも衝撃波を避けきれず、俺の体は大きく吹き飛んだ。

 受け身を取りながら転がるが、それでも体は悲鳴を上げ、骨が折れる音が聞こえてくる。

 俺は無理やり立ち上がり、サイクロプスの方に視線を向けると、醜悪な笑みを浮かべて右の拳を頭の上に掲げていた。

クソッ! 間に合わない!

 拳を振り下ろそうとした瞬間、サイクロプスは後ろに発生した強大な魔力を感知し、振り返った。

 そこにあったものは、とても小さな雷の塊。

 ソフィによって圧縮されたその魔法は、ビー玉サイズになり、手のひらの上に浮かんでいた。

 それを見たサイクロプスは、焦りと恐怖をまぜたような表情を浮かべていた。これを受けたらマズイと、本能が告げているのだろう。

 俺は急いでソフィの元に戻る。痛む体に鞭を打ち、サイクロプスの真横を、走って通り過ぎる。

 俺が戻ってきたのを確認したソフィは、手のひらに浮かんでいる雷の玉をサイクロプスに投げつけた。


「〈ライトニングボルト〉!!!」


 ソフィの手を離れた魔法は、サイクロプスに向かって一直線に飛んで行く。

 サイクロプスは避けようとするが、魔法の速度の方が圧倒的に速い。案の定、体を動かす前に魔法が直撃した。

 その瞬間発生したのは、閃光と轟音。一瞬で視界を奪われるほどの光量と、鼓膜が破れそうになるほどの爆音が、洞窟内に響いた。

 光と音が収まり、煙の中から現れたのは、右腕を失い、腹から大量の血を流したサイクロプスだった。


「やったか?」


 あ、やべ。これ生存フラグだ。

 サイクロプスはゆっくりと立ち上がり、こちらに向かって吼えた。やっぱり生きている。

 頭に響くような鳴き声。声を出したせいで、サイクロプスは腹からの出血がさらに激しくなった。


「ソフィ……」

「アル君……」

「「逃げよう!!!」」


 俺たちは、ダンジョンの出口に向かって全速力で走る。

 ふと振り向くと、サイクロプスは姿勢を低くして、そのまま飛び上がったのが見えた。

 そのジャンプ力は見惚れるほどで、俺たちの頭の上を軽々飛び越えていく。

 そして、それと同じタイミングで、俺は妙な石を踏んだ。その石は少し凹み、洞窟の壁からガコンという音がした。

 すると、俺とソフィの周りを囲むように魔法陣が展開し、銀色に輝き始めた。

 その魔法陣に体を半分乗せるようにして、サイクロプスも地面に着地する。


「きゃっ!?」

「ソフィ!!!」


 俺は、サイクロプスの着地の震動でバランスを崩したソフィの腕を掴み、魔法陣から出すように投げた。

 魔法陣に乗っているのは俺と、未だに俺を睨みつけているサイクロプスだけだ。


「アル君!!!」


 魔法陣の輝きが最高潮に達し、ソフィが俺の名前を呼んだのを最後に、俺の視界は真っ白に染まった。


 ✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽


 《魔力を込めた剣》


 剣は魔力を込めると切れ味と頑丈さが上がる。これは込めた魔力の量に比例する。

 込められる魔力の上限は、材料によって決まる。硬い金属であるほど、込められる魔力も多くなる傾向がある。

 だが、流した魔力が百パーセント活用できるわけではない。

 例えば、 魔力伝導率が五十パーセントの金属に魔力を百だけ流すと、五十の魔力を剣に込めることができる。だが、魔力伝導率が七十パーセントの金属に同じように百だけ魔力を流すと、七十の魔力を剣に込められるのだ。

 このように魔力伝導率が高ければ高いほど、込めた魔力を活用できるようになるのである。

学園モノを書いていたくて、ここまで長くなってしまった……

僕はソフィとアルのイチャイチャを書きたかっただけなんだ!

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