表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/169

定番の巨大ダコ

「アル君、ビーチバレーってなに?」

「簡単に言うと、二対二で、ボールを地面に落とさないようにする競技だ」


  ソフィと湖でイチャついていたところ、アリスが私を無視するなと言ってきたので、ビーチバレーをすることになった。

  チーム分けは、俺とソフィチーム。アリスと王子チームとなった。

  俺は、バレーボールの基本的なルールを三人に教え、ネットなしの特別ルールで、ビーチバレーを開始する。


「やったことない競技だけど、ボクも頑張るよ」

「リューリク様なら、きっとできますわ!」


  王子は、運動神経はそこそこいい方だから、やればすぐに覚えるだろう。

 アリスとソフィは、剣を扱っているのだから、自分の体の扱いはわかるだろう。


「よし、じゃあいくぞー!」


  俺のサーブから始めることになり、最初は軽くアンダーサーブで飛ばす。

  王子は、そのボールをレシーブし、アリスは上がったボールをこちらに返した。

 二回目で返すとは、やはり初心者だな。こちらの本気を見せてやろう。

  俺は、ボールをソフィに向かってレシーブし、ソフィはそのボールを俺に上げる。俺はジャンプとともに振りかぶって、アタックを打った。

  俺の打ったボールに、王子とアリスは反応できず、そのままの勢いで地面につく。


「よっしゃ!」

「大人気ないですわ!?」


  アリスがなんか言っているが、これは勝負なのだ。つまり、勝てばよかろうなのだ。

  その後、三人とも徐々にバレーを覚えていき、俺のアタックにも反応できるようになってきた。

 成長が早かったため、俺の無双タイムも早々に終わってしまった。つまらん。

  試合が接戦になってきたところで、湖の方から悲鳴が聞こえてきた。


「なにかあったんですの?」

「あ、あれは……」


  そこには、全長十メートルはあるだろう、巨大なタコがいた。そして、その触手には、A組の女子生徒たちが絡まっている。いや同人誌かよ。


「アル君、早く助けに行こ!」


  と言って、ソフィが女子生徒たちを助けに行く。


「ソフィ、危ない!」

「え?」


  俺の忠告も虚しく、触手を伸ばしたタコに、ソフィは捕まってしまった。


「きゃー! な! ど、どこ触ってるの!?」

「ソフィ!」

「アル君助けて!!」


  俺のソフィに手を出すとはいい度胸だ。今すぐあの触手を木っ端微塵に切り刻んで、今日の夕飯にしてやる。


「助ける必要はありませんわ」

「アリス!?」


  アリスの驚きの発言に、ソフィも驚愕の表情を浮かべる。そんな顔も可愛い…… じゃなくて。


「どういうことだ?」

「あのタコは、人間の女を触手で捕まえるだけで、特に害はありませんのよ」


  な、なんというエロダコ。まさかの女限定だというのか。いいぞ、もっとやれ。


「害がないっていうのは、一体どういうことだ?」

「しばらく遊べば、砂浜にゆっくり降ろしてくれますわ」


  なんというの優しさ。エロダコとか言ってごめんな。いや、遊んでるのならエロダコには変わりないか。


「だそうだ、ソフィ! 少し待ってろ!」

「ええ!?」

「そうですわ、ソフィアさん。それにその哀れな姿もなかなかそそるものが…… へ?」


  なにか不吉なことを言った瞬間、エロダコの触手がアリスの腰に巻きついた。そのまま中に浮くアリス。


「きゃー! 助けてですわー!」

「アリス君!」


  完全に因果応報である。だが、なにかそそるものがあるのは認めよう。


  しばらくタコに遊ばれ、ソフィとアリスと女子生徒たちは無事に帰ってきた。

 よく見てみると、女子生徒たちはみんな可愛い子だった。根っからのエロダコらしい。


「もう! 見捨てないでよ!」

「本当ですわ!」

「悪い悪い…… って、アリスもソフィを見捨てただろうが」

「そんなことは忘れましたわ!」


  まったく都合のいい頭である。

  しかし、ソフィを怒らせてしまった。腕を組んで頰を膨らませ、こちらを向いてくれない。さて、どうしたものか。


「ああ、なんだ。ソフィさん?」

「ぷんだ」


  これは怒っているのか? それとも拗ねているのか?


「なんでも言うこと聞くから、許してください」

「…… じゃあ、後であの洞窟に一緒に入ろ?」


  と言って、ソフィは湖から少し離れた場所を指差した。

 指差した先には、入り江がある。


「もちろんだ」

「なら許す」


  俺の方に顔を向け、笑顔で許してくれた。最初から、あまり怒っていなかったようだ。

  自由時間はまだまだあるため、早速入り江に向かう。

  ちなみに、王子はギランに呼び戻され、砂浜で休憩を取っていた。しかも、女子生徒に周りを囲まれながらである。完全にハーレム状態だ。

  アリスは、俺たちについて来たそうにしていたが、王子の護衛任務で来れなくなった。ギランとは交代制なのである。


  入り江の中は円状になっていて、そこまで奥には続いていなかったが、入り口から光が差し込んでいて、水面がキラキラと光っていた。


「おお、これはすごいな」

「こういう入り江って、どうやってできるんだろうね?」

「うーん、入り江のでき方はさすがにわからんなあ」


  鍾乳洞とかなら説明できるのだが、入り江はよくわからん。


「…… ねぇ、アル君。もし私がいなくなっちゃったらどうする?」

「いきなりどうした?」

「いいから答えて」

「そうだなぁ。なにがなんでも探し出すかな。そして、必ず見つける」


  他人になにを言われようと、俺は必ずソフィを探すだろう。本人か、死んだ証拠を見つけるまで。


「ふふ、やっぱりそうなんだ。嬉しいなあ」

「やっぱり?」

「うん。逆の立場だったら、私もそう答えただろうなって思って」


  思考が似通っているのか、それとも互いがかけがえのない存在だからなのか。

  たぶん後者だろうな。俺とソフィの考え方は、正直言ってかなり違う。幼馴染だったおかげで、気は合うんだがな。


「まあ、もしそうなったら、絶対見つけてくれよ?」

「もちろん!」


  それから入り江の中で、水に仰向けに浮かびながら、たわいもない話をした。

 二人きりだったのは久しぶりで、学院のことやこれからのことなど、意外と話は広がった。


「付き合ってくれて、ありがとね」

「こんなことなら、いつでも付き合ってやるぞ」


  俺も、久しぶりの二人きりの会話は楽しかったからな。


「じゃあ、戻ろっか」

「もうすぐ自由時間も終わるしな」


  自由時間が終わったらすぐに夕食だ。次はどんな献立が出るのか楽しみである。

 個人的には、甲殻類とか出て欲しいな。


「アル君」

「どうした?」

「ずっと一緒にいようね」

「当たり前だ」


 俺はソフィの頭に手を乗せ、ぐしゃぐしゃと撫でる。

 安心したソフィは、ふにゃっと表情が崩れた。

 俺は、そんなソフィに向かって優しく微笑んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ