コンビネーション
俺たちはアルフレッドを信じて、ランベルトの魔道具で傷を癒していた。
しかし、次の瞬間、アルフレッドが消え去った。
「ア、アルフレッドが……」
「自爆した…… のにゃ?」
ランベルトとターニャの声、そして、先ほど起こった現象を見て、俺は唖然とした。
『アルフレッドの魔力が…… 完全に消えたわ』
ジュリアが報告してくる。
「そんな馬鹿な……」
爆発が起こった場所を目を凝らして見てみると、ものすごく巨大な穴が空いているのが確認できる。
あのアルフレッドだぞ? 魔法をほとんど使わずに俺を圧倒し、果てには魔王にまでなった男だぞ? それが、あの一撃で消滅?
『ついでに、ジンが消えてくれればありがたかったんだけど……』
「まだ生きてるのか!?」
『残念だけど……』
本当に体力を削っただけで、倒しきれなかったっていうのか……
『来たわよ』
ジュリアがそう言うと、俺たちの目の前にボロボロになったジンが現れた。
「まさか、瞬間移動に無理やりついてくるとは…… さすがはあのアルフレッドですねぇ。しかし…… ふふふ、ふははは! これでもう、脅威はありません!」
脅威はない…… だと?
「ジュリア」
『わかってるわよ。戦うんでしょ?』
「当たり前だ。アルフレッドが作ったくれたチャンスを、ここで無駄にするわけにはいかない!」
「それもそうにゃ。私たちを操った恨み、ここではらさせてもらうにゃ!」
「おう! アレンがやるってんなら、オレもやるぜ!」
ありがとう、みんな。
ただ、問題は……
「あぁ…… アル君……」
「…… ソフィ……」
ソフィが完全に戦意喪失していることか…… オリヴィアに慰められてはいるようだが、あの状態はもう、完全に心を折られている。
俺はジュリアを持って、剣先をジンに向けた。
「ほぅ…… まだ立ち向かってきますか……」
「当然だ。お前を倒して、この大陸を救う!」
「あなた方に、それができますかねぇ?」
この……!
「はぁっ!!」
俺はジュリアを、思いっきりジンの方へと突き出した。
ジンはそれをひょいと横に躱すと、俺に向けて拳を構えた。
「隙だらけですねぇ」
『くらいなさい!』
「なに!?」
ジンの拳が俺に近づいてきた時、ジュリアの魔力が剣先から伸びて、ジンを切り裂いた。
「くっ!」
ジンは一度後ろに退がる。
「なるほど。隙を作ったのはわざとでしたか……」
俺はアルフレッドに負けてから、とことん体術に力を入れてきた。そんな俺が隙など、そうそう作るものではない。
「ジン、お前は俺を舐めすぎだ!」
「確かにそうかもしれませんねぇ。しかし、それも想定内です!」
ジンは俺に飛びかかろうと、重心を低くした。
…… かかったな。
「なっ!? ぐぁっ!?」
飛びかかろうとしたジンの両肩には、鋭い短剣が突き刺さっていた。
「にゃあ〜。アレンにばかり集中しすぎだにゃ」
「生意気ですねぇ!」
ジンが無理な体勢からふるった拳を、ターニャは柔軟な体を活かして避ける。
「今度は後ろがガラ空きだぜ! うおおお!」
「ぐぅ…… 厄介な!」
ターニャに集中して隙のできた背中を、ランベルトが盾を持って突撃する。
背中に直撃を受けたジンは、ランベルトと力比べをして、なんとか盾を押し返した。しかし……
「周りが見えてないな!」
やはり、ジンは近接戦闘に関しては初心者だ。魔法戦術はともかく、俺たちの体術のコンビネーションには対応できない!
俺はジンの上にジャンプをして、ジュリアを大上段に構え、振り下ろした。
「ちっ!」
ジンは舌打ちを一回だけすると、突然俺の下から消えた。
『瞬間移動したわね』
どこから現れるかわからない。これは確かに厄介だ。だが、俺のパーティの前では無駄だな。
「二人とも! 三角形を作るんだ!」
「「了解!」」
俺たちは三角形の作るように、背中合わせになってジンを待ち構える。こうすれば、どこから現れても問題ない。
『さあ、どこから来るのかしら?』
「どこから来たとしても大丈夫だ。俺たちなら……」
俺は目の前に集中する。
さあ、来い。次に俺の視界に現れた瞬間、あのいやらしい笑みを叩き斬ってやる!
「ふふ…… こちらは隙だらけですねぇ……」
来た! どこだ? どこに……
周りを見渡すと、ジンは、しゃがみこんでいるソフィとオリヴィアの目の前で、貫手を構えていた。
「卑怯な!」
「戦いは、卑怯な方が勝つんですよ!」
ジンは貫手をソフィに向けて突き出す。
「やめろぉ!」
「ふははは!…… は?」
次の瞬間、貫手は…… ジンの胸から生えていた。
「な…… なぜ、この私が……」
血を吐くジンの真後ろにいる人物の顔を見て、ソフィは目を大きく開いた。
「…… ア、アル君……!」
「おう、ただいま、ソフィ」
そこに立っていたのは、身体中がボロボロな…… 詳しく言うと、左腕が肘のあたりから欠け、両目も潰れたらしいアルフレッドが、そこには立っていた。
製作裏話
アレックス「なあ、作者。俺って勇者だよな?」
作者「え? そうですけど、いきなりどうしたんですか?」
アレックス「俺さ、登場してからいいとこあったか?」
作者「………… ラスボス追い詰める役、任せますね」