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帝国の惨状

  俺とソフィが帝国に到着した時、帝国は、既に火の海と化していた。

  逃げ惑う者、泣き喚く者、家族を助けようと燃える火の中に飛び込む者。そこはまさに、地獄のようだった。


「ソフィ、魔法でなんとかならないか!?」

「帝国全土が燃えてるんだよ!? 私だけじゃ絶対無理!」


  俺たちは逃げ惑う人々を導き、泣き喚く人々を立ち上がらせ、火の中にいる人を助けながら帝都中を走り回る。


「アルフレッド! これはどういう状況だ!?」


 しばらくして、アレックスたちが走ってきた。


「アレックス! 俺たちは少し遅かったんだ! 人命救助を急げ!」

「くそ! 間に合わなかったのか!」


  勇者一行は急いで方向を変え、火の海の中に入っていった。

 人助けのためだろう。

 すると、四人の魔族が俺の元へ寄ってきた。


「「「「魔王様、我らはどういたしましょう」」」」

「お前たちも人命救助に行ってこい! なるべく多くの命を救え!」

「「「「はっ!」」」」


  ナディア、セルジオ、カルロ、ステラの四人は、勇者たちとは別方向に走っていった。

  魔族の中心人物であるあの四人が人間を助けたとなれば、人間の魔族への見方も多少は変わるだろう。

 あの四人を連れてきた、ヨハンの英断には感謝だな。


「リベル様! 急遽お伝えしたいことが!」

「なんだ?」


  魔族の次は、帝国で情報収集をしていたリベリオンのリーダーが俺のそばに現れた。


「ホムンクルスが現れました! その数、五百以上! 市民を襲っています!」

「アレックスたちにホムンクルスの処理を任せる! それを伝えてきてくれ!」

「了解!」


  次々に問題が起こるな。この状態だと、ジンやエドを探すのもあとになりそうだ。

  俺がソフィとともに市民を誘導していると、五体のホムンクルスが、こちらに向かってきた。


「ソフィ! 頼む!」

「わかった! 〈コキュートス〉!」


  五体のホムンクルスは、ソフィの魔法によって凍りつき、動きを止めた…… と思った次の瞬間、突然ホムンクルスの体が真っ赤に染まり、破裂した。


「きゃあ!?」


 その破裂の近くにいたソフィが、後ろに転がる。


「ソフィ! 大丈夫か!?」

「うん。ちょっとびっくりしただけ!」

「よかった…… それにしても、今の魔法は」


  俺が、頭の中に一人の人物を思い浮かべると、一人の人影が上から降ってきた。


「ホムンクルスと、俺の破裂魔法のコンボ…… うまくいなせるかな?」


 やはり、エド。


「エド、自ら出てくるとは、自信ありげだな」

「ほぅ、俺の名前を知っているとは。もしかして、エレナに会ったかな?」

「ああ、おかげで今は仲間だよ」


  俺は腰からナイフを抜き、エドに向かって突き出した。


「おおっと! へぇ! 裏切られるとは思ってないんだな!」


  エドはそれを軽く躱し、燃えている家の屋根の上に飛び乗った。


「当たり前だ。仲間だからな」

「まあ、今更エレナがお前に渡ったところで、この状況がどうにかなるわけじゃないけどな。さあ行け、ホムンクルス」


 エドが支持を出すと、さらに十体のホムンクルスがこちらに走ってきた。

 俺はホムンクルスに向かって走り、すれ違いざまに首筋を切りつけることで、破裂をくらわずに十体のホムンクルスを倒した。


「やるなあ。だが、あれはどうだ?」


  俺がエドの指差した方を見ると、五十以上のホムンクルスが、ソフィに飛び込んでいた。

  俺はソフィを守るため、ソフィの周りにシールドを張ろうとした。だが、その必要はすぐになくなった。


「〈ダークネス〉!」

「〈ライトニングボルト〉!」


  ホムンクルスたちは唐突に視覚を失い、雷によって吹き飛ばされた。

  一方でソフィは、雷の衝撃波から盾で守られていた。

  そう、勇者御一行様である。


「アルフレッド! そこの義手は俺に任せろ!」

「俺のお相手は勇者様ですか」


  エドは、ケラケラと笑いながら屋根から降りてきて、アレックスの正面に立った。

  アレックスは、それに立ち向かうようして一歩前に出た。

  逆に俺とソフィは下がり、俺は魔眼を使って、ジンを探し始めた。


「アレックス、俺はジンを探すから、少しだけ守っててくれ」

「わかった。ランベルト任せたぞ」

「おう! アルフレッド! 集中しとけ! 絶対に守ってやるからな!」


  俺は魔眼の透視能力を駆使して、燃えている建物の中を次々と確認していく。すると、帝都にある時計台のような建物の最上階に、見覚えのある二つの魔力があった。


「見つけた! ソフィ、行くぞ!」

「うん!」

「待ってください!」


  俺とソフィが走り出そうとすると、後ろから止められた。

  振り向くと、そこにはクラリスが立っていた。


「私も連れていってください! ほら、私最終兵器ですし!」

「自分で言うのか……」

「アルフレッドさんがそう言ったんでしょう!?」

「冗談だ。この状況だと、クラリスの存在はありがたい。ついて来てくれ」

「わかりました!」


  俺たち三人は、エドとホムンクルスをアレックスたちに任せて、時計台へと走り出した。


「アレックス! エドを頼んだ!」

「了解!」

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