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レクイエム

 俺は〈シールド〉を使って、少女を憲兵のもとまで運んでいた。


「お願いだから出して〜! 僕はまだやることがあるの〜!」

「お前が今やるべきことは、自分の罪を償うことだ」

「嫌だ〜!」


 半べそをかきながら駄々をこねる少女に、ソフィはなんともいえない顔を向けていた。


「一生のお願い! 僕は、急いでビューレを助けに行かないとなんだ!」

「アル君、話くらいは聞いてあげよ?」


 俺が少女を無視していると、ソフィが少女に慈悲を与えた。


「お! そこのお姉さん! ありがとね! ふふ、やっぱり僕の魅力に惹かれたのかなぁ?」

「女が女に惚れてどうするんだ?」

「失礼な! 僕は男だ!」


 これは驚いた。見た目は完全にオカッパの女の子なんだが、どうやら男らしい。


「なんでわからないかなぁ…… あ、そこのお姉さんならわかるよね?」

「え? うーん、まあ、ちょっとだけなら」


 ソフィは完全に困った顔で、苦笑いをしながら頷いた。


「お姉さんも…… わかってなかったのか……」


 少年は、そんなソフィの様子を見てがっくりとうなだれてしまった。


「それで、そのビューレってのはどうしたんだ?」

「そうだ! ビューレが危ないんだ! 今すぐ離してくれ!」


 少年は、『ビューレ』という名前を出した途端、思い出したように〈シールド〉の中で暴れ始めた。


「もっと具体的に説明しろ。危ないだけじゃわからん」

「ビューレは…… たぶん、レクイエムに連れていかれたんだ……」

「レクイエム? 音楽団体かなにかか?」

「表向きの活動目的はそうなってる。だけど、裏では色々と犯罪行為をしている団体なんだ」


 その内容の一つが人さらいか。一体裏の目的はなんなんだか。


「それで、なんでそいつは捕まったんだ?」

「それは……」

「言えないか。まあいい、助けたら聞かせてもらおう」

「手伝ってくれるの!?」

「ここまで聞いて、『だからなに?』とは言えないからな」


 それに、『レクイエム』について少し詳しく知りたい、という気持ちもある。


「ありがとう! なら、早く探さなきゃ!」

「その前に、俺のポーチを返せ」

「あ…… 覚えてた?」

「当たり前だ。ちゃっかり盗もうとするな」


 俺が〈シールド〉を消して手を出すと、少年は俺の手の上にポーチを乗せた。


「僕の名前はファブリ。よろしく!」

「俺はアルフレッドで、こっちはソフィアだ。それで、ビューレってやつの特徴を教えてくれるか?」

「ええと、身長が百六十五センチくらいの女の子で、膝まで伸びた紺色の髪が特徴かな」

「魔法適性はなんだ?」

「確か、光だったはず」


 俺は魔眼を使って教国中を見渡す。すると、その特徴に当てはまる人物を発見した。


「見つけた。行くぞ」

「え!? どういうこと!?」

「あんまり細かいことは気にするな」


 俺は、ファブリの疑問を軽く流しつつ、ビューレという女の子を見つけた場所に向かって歩き出した。


 ✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽


 ビューレが捕まっているのは、とある料理店の地下にある空間らしい。

 その料理店は街の裏道にひっそりと構えており、俺たちが表通りから裏道に入ってしばらく歩くと、建物によって周りがだんだんと薄暗くなってきて、まさに犯罪の匂いがしてきた…… 気がする。


「この店の中だな」


 そこにあったのは、ボロボロの扉。老朽化によって蝶番が緩まっており、扉の上下には隙間が空いていた。

 俺はその扉を軽く押し、中に入る。中も予想通り汚れていて、客はいないようだ。


「…… いらっしゃい」


 髭を長く伸ばしたおっさんが出迎えてくれた。

 俺は地下への入り口を魔眼で探す。すると、どうやらキッチンの方に、地下に続く扉があるらしい。

 俺は無言でキッチンの方に進みだす。


「おい! ちょっとあんた! なにやってーー」


 その行動を見たおっさんは、俺の元へかけよろうとした。だが、その途中で膝から崩れ落ち、白目で泡を吹き始めた。そのおっさんの肩には小さな刃が刺さっており、俺の手には柄が握られていた。

 これは、ヨハンとアリスの共同開発で作られた痺れナイフだ。魔力を送ることにより、刃を飛ばせるようになっている。

 ちなみにこのナイフ、俺とアリスの決闘で使われた物を、俺が頼んで改良させたものなのだが…… 痺れ効果、強すぎるだろ…… 一瞬で泡吹いて倒れるほどって、闇の魔法陣を何回重ねがけしたらなるんだ?

 ヨハンは、対魔王様専用痺れナイフとか言ってたが、まさかここまでとはな。というか、これを受けてもぎりぎり動けていた俺の体はいったい……


「それが昨日言ってた魔道具?」

「そういうことだ」

「すごい威力だね……」

「…… 早く行こうか」


 俺たちは倒れたおっさんを適当に放置して、地下室へ続く階段に入っていった。

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