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約束の決闘

 今朝はいい朝で目覚めが良く、シャルとソフィが作ってくれた朝食を美味しく頂いていた。


「うん、やっぱり美味いな、二人の料理は」

「喜んでもらえて良かった〜。五年の間で訛ってないか、結構心配だったんだよ?」


 五年どころか、勇者パーティに入って活動していた時もほとんど料理はしていなかった。だが、ソフィの料理の腕は健在だったようだ。


「ソフィアお姉様の料理が、お兄様のお口に合わない訳がありません。なにせ、愛がこもってますからね」

「確かに、腕よりも大事なモノかもな。というか、ソフィもそうだが、シャルの料理も美味いぞ? 今度アレックスにも作ってやったらどうだ?」


 その瞬間、シャルは吹いた。


「ぶふぁ!?」

「え!? シャルちゃんってアレンとつきあってるの!?」

「あわわわ! お兄様! なんてこと言うですか!? お姉様にバレてしまったじゃないですか!?」

「別にいいだろ? このままいけば、みんな家族になるんだし。魔王一家ってな」

「勇者が魔王の妹と結婚って、教国からの苦情が殺到しそうな話だね」

「その時は、俺とシャルの二人で黙らせよう」

「そ、そうですね。教国なんかに負けません!」

「二人とも、これから教国と同盟を結ぶために頑張るんでしょ? それで大丈夫なの?」

「「それはそれ、これはこれ」」


 俺とシャルは、ソフィに向かってウィンクとサムズアップをしながら言った。

 ソフィは案の定呆れ顔になって、やれやれと言った風な動作をしていると、突然部屋の扉が勢いよく開いた。


「アルフレッド! いますわね!」

「ん? アリスか。なんの用だ?」

「あなたに決闘を申し込みますわ!」

「決闘? いきなりだな」

「いきなりでもなんでもありませんわよ! なぜなら、今こそ約束を果たす時なんですから!」

「約束…… あ、そういえばあったな。確か、アリスが魔法と剣を両立させてからもう一度決闘する、だったか?」

「だいたいそんな感じですわ! さあ! 私と勝負ですわ!」


 学院時代、巨大熊の一件でアリスと決闘をした。結果は俺の圧勝。だが、その際に剣術と魔法を同時に使えるようになってからもう一度挑んで来い、と言ったのだ。


「アリス、正直に言うとな。たぶん、相手にならん」

「そりゃ天下の魔王様ですもんね。そんなことはわかっていますわ」

「それでも決闘するのか?」

「ええ、もちろんですわ。ただし、ハンデをくださいまし」

「ハンデか。どんなのだ?」

「アルフレッドだけ、魔法禁止。そして私は魔道具を使いますわ!」


 学院時代の俺と同じ状態かつ、アリスが魔道具を駆使して闘うことになるのか。体が魔族化しているおかげで、あの時よりも身体能力は高いが、アリスが成長していることを考えると妥当なところだろう。


「よし、わかった。それでやろう」

「望むところですわ!」


 ✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽


 アリス、ソフィ、シャル、ヨハンとともに庭に移動し、見合った状態で剣を持った。


「今の私を見せてやりますわ!」

「おう、かかってこい」


 すると、ヨハンが前に出てきた。


「それでは、アルフレッド対アリスの決闘を始める。試合開始!!!」


 そして、あの時と同じように試合開始の合図を叫んだ。十年ぶりに聞いたな。

 アリスは動かずにじっと待っていて、こちらの隙を伺っている。

 学院の頃の構えとはまるで違うな。中段に構えた姿がしっくりとくる。どうやら青さがなくなったようだ。

 俺は、アリスと同じように中段に構えて待っていた。するとアリスは、俺が自分から動かないことを察したのか、一気に突っ込んできた。

 俺はそれを正面で受けようと待っていたのだが、アリスは〈ウィンドショット〉を正面に撃ち、俺の右脇に回ってきた。

 俺は魔法を体を捻って避け、アリスの方を向く。

 アリスはそれを見て、一度後ろに引いた。


「さすがですわね」

「こんなでも、一応魔王なんでな」

「それでも負けられませんわ!」


 アリスはポケットから丸い魔道具を取り出すと、こちらに向かって投げた。そして、その魔道具に向かって風と火魔法を同時に放った。

 二つの魔法が魔道具に触れた瞬間、魔道具の魔力が急激に大きくなり、白く光り始めた。

 俺は魔道具に高速で接近し、横一文字に剣を振る。すると、魔道具は真っ二つに斬り裂かれ、輝きを失った。

 それを横目に見て、俺はアリスに突っ込んだ。

 アリスは驚きを隠せていなかったが、俺が接近してきたことに気がつき、剣を構えた。

 そして、俺が剣を上に振りかぶろうと足を踏み出した時、俺の足の裏になにかが刺さった。

 それがなにかと考えるようとした束の間、身体中が痺れて動けなくなった。


「ぐっ!」

「もらいましたわ!」


 アリスは、隙だらけの俺の首元に向かって剣を振った。

 剣が俺の首に触れる寸前、俺はアリスの剣に向かって口を前に出した。そして、そのまま勢いよく迫りくる剣を口に咥え、思いっきり噛み砕いた。


「な!?」


 俺は手首だけで剣を動かして、アリスの首元に持っていった。


「勝、負…… ありだ、な?」

「…… 完敗ですわ!」

「勝者! アルフレッド!」


 俺は〈クリア〉を使って、全身の痺れを取り除いた。


「いやぁ、驚いた。まさか同時に二つの魔法を使えるようになっているとはな」

「修行の成果ですわ。それでも、勝てないんですわね……」


 アリスは顔に影を落とし、俯いてしまった。


「アリス……」


 俺が慰めてやろうとすると


「まあ、いいですわ。むしろ、魔王アルフレッドとここまでいい勝負ができた、という自慢話になりますわね!」


 と、パッと顔を上げた。


「大人になったな、アリス」

「当たり前ですわ! もう二十二歳でしてよ!」

「早く、いい婚約者が見つかるといいな」

「うるさいですわ!」


 余計なお世話とでもいうように、あっかんべーをするアリス。こういうところは子供のまんまだな。いや、むしろ幼児退行してないか?


「でもまあ、頑張ったんだな。いい勝負だったよ」

「そう言ってもらえるとありがたいですわ。努力すれば報われる、なんて思ったことはまったくありませんけど、いいところまではいくもんですわね」


 アリスにしては深みのある言葉だな。と思っていると、急に城下町の方から悲鳴が聞こえた。

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