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田島健二と上司

俺は、とある大手企業に勤めている。

社会人駆け出しの頃は、将来会社の重要なポストにまで登りつめてこの会社を変えてやろうなどと考えていた、かもしれないし、そうでないかもしれない。この会社はブラック企業ではないが、ホワイト企業でもない。年功序列で長く勤めれば上に行けるというわけでもない。勿論個人の成績を重視してくれるいい企業といえばそうだが。しかしそれは結果を出せる人の言い分だ。俺のように何の結果も残さない奴は、ただ会社にこき使われて退職を待つだけ。


「田島さん、ちょっと」


「はあ、何でしょうか主任」


自分より年下の上司に敬語を話すときが来るなんて、昔は考えても見なかったな。


「この資料、またミスしてますよ。数字がズレてます。至急作りなおしてくれますか?」


くそッ、またやってしまったか。どうして俺はこう学者しないのだろう。ああ、上司よ。そんな蔑むような目で俺を見ないでくれ、、。俺だって、俺だって、、!もしものことがあれば、何か役に立てるはずなんだ!そう、例えば、、、



◇◆◇◆◇◆◇◆

(※ここから田島さんの妄想に入ります。)


「主任!この資料のこれは、実はミスではないんですよ。」


「何だって?田島さん、どういうことですか?」


「一見数字がズレているようですがよく見てください。その数字の前のアルファベットと合わせて見るとある暗号が示し出されるはずです」


「ん?こ、これは、、Y.O.K.A.N、、?よかん?」


「いいえ、真ん中にもう一本線がありますよね?」


「本当だ。OとKの間にーがある。つまり、YOーKAN?ヨーカン?何の暗号ですか?」


「正確には羊羹ですよ。お菓子の」


「ああ、水羊羹とかの羊羹ですね!それでそれがこの資料と何か関係が?」


「ええ。この資料、取引先へのプレゼンに使うものですよね?実はここの取引先のお偉いさんが羊羹が大好きだそうで。プレゼンの時に出して差し上げたらどうかなと思ったんです。」


「な、なんと!そうだったんですか!そんな情報どこから手に入れてきたんですか?田島さん!」


「まあ、私の情報網を駆使すれば、こんなのはお安い御用ですよ。主任ならこの暗号に気づいて、察してくれると思ったのですが、、少し難しすぎましたかね?」


「いやあ、参った。田島さんの賢さには敵いませんねえ!早速羊羹を買いに行くように、部下に言っておきますよ。」


「ええ、そうするといいでしょう」




ー取引当日ー


「主任、私はこの取引先の担当ではありませんよね?どうして今日になっていきなり参加することに?」


「あんなすごい情報をいただいたのに横取りなんてできませんよ。お偉いさんへの羊羹はぜひ田島さんから出して欲しいと思ったんです!お願い、できますか、?」


「わかりました。主任がそこまで言うなら、私から羊羹を出しましょう」


「お任せしましたよ。田島さん!」


俺は、今か今かと羊羹を出すタイミングを伺った。お偉いさんが営業のプレゼンを聞いて難しい顔をしている。次に女子社員がお茶出しをしたタイミングで、羊羹突入で決まりだな。


「失礼致します。お茶をお持ちしました。」


「ああ、すまないね。ありがとう。置いておいてくれ」


今だ!!!


「失礼します!お茶のお供に羊羹はいかがでしょう?実は先日日本有数のお茶菓子協会から有名な羊羹をいただきましてね。ぜひ食べていただきたく取っておいたのですよ。」


「な、なに、、?!この羊羹は、、!日本中を回っても食べれるかわからないと言われているあの、、?!」


「そうです。日本中どころか、世界中の羊羹マニアたちが狙う、まさに羊羹の中の羊羹。羊羹の王様といってもいいでしょう。1日限定10個しか売られないと言われていて、しかも販売場所や時間は未知!選ばれしものにのみ与えられる幻の羊羹です。」


「こんな、夢にまで見たあの羊羹が、思いがけずこんな場所で食べれるなんて。ああ、美味しい、美味しすぎる!ほっぺたが落ちそうだ。幸せだ、、!!」


お偉いさんはみるみるうちに羊羹を平らげた。


「幻の羊羹をいただいて、取引をやめにするなんてそんな人外なことは流石の私でもできないな。ここは羊羹に免じて取引を承諾しよう。」


「ほ、本当ですか?!ありがとうございます!!」


「君、名前はなんと言うのだね?この羊羹を手に入れるなんて、只者ではあるまい。」


「田島健二と申します。なあに、ただのしがないサラリーマンですよ。」


「そうか、ありがとう田島君。」



「「田島君、バンザーイ!!羊羹、バンザーイ!!」」


その後、みんなによる田島羊羹コールはしばらくの間続いたのだった。



ー完ー

(※この話は田島さんの妄想であり、現実とは一切関係ありません。)

◇◆◇◆◇◆



なんてことがあればなぁ、、。


「、、じまさん、田島さん!」


「は、はい?!」


「聞いてるんですか、全く。ボーッとしてないで早く直してくださいよ。自分のミスなんですから。今日にお願いしますね。」


「、、、はい。すぐ直します。」


さてと、やるか。今日も帰りが遅くなりそうだ。とほほ、、、。


田島さん、しょうもない妄想してないではやく仕事しなさい!!

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