6 概要とかそのあたり
私たちが住んでいるのは市の中でも北の山手である事に対して、南田は南の平地にある。ようは、同じ市の中でも結構距離がある。そして、坂が急である。自転車で坂を下りると、下手したらバイク並みのスピードが出てしまう。
先生は安全運転で来いよーと良く口を酸っぱくして言っているが、正直こんな日曜の朝、出歩いている人はほとんどいない。
人が居なかったらスピードが出したくなるのは皆の共通事項のようで――
先輩たちは勢いよく坂を下って行った。それに私たちも続くようにして降りていく。
傍から見れば中学生十六人が勢いよく坂を下りている光景だ。ただただ迷惑でしかないと、自分でも感じる。
ちなみに、私たちのほとんどは電動自転車を持っているので、帰りも立たずに坂を登りきる事ができる。
中学生が電動自転車なんて持って贅沢な、と思う人もいると思うが、正直私たちの地域はきつめに言うと電動付きでないと女性は生きていけないと思っている。
何せ、ちょっと買い物に行くためだけに長い坂を二本も三本も上り下りしなくてはならないほど坂が多いのだ。しかもそのほとんどが急な坂。
きっちり舗装されていてきれいな道は整っているのだが、頑張って立たずに上るよりも降りて走ったほうが格段に速いとなると電動なしでは効率が悪いだろう。
自転車を走らせ約四十分、無事私たちは南田中の門をくぐった。
ここの中学校は、私たちが住んでいる市の、ソフトテニス部がある学校で唯一五コートあるところだ。
だからか私たちの顧問の先生はここで良く練習試合を開いている。
何故だか知らないけど、うちの顧問は南田の先生よりも権力が強いと傍から見ていて感じる。
いつも試合の説明をするのはうちの顧問だし、南田の先生も、うちの顧問が居なかったらここまで練習試合は開けなかったと言っている。
「でさー、のの、今日はどこの学校が来ると思う?」
「多分また京都からどっか来るんじゃない―?桂のほうから。とか、あれじゃない?また兵庫からどっか来そう」
「……あそこまじ嫌い。何で一年なのにあんなに強いのかほんとに分からんから。後、兵庫のほうの学校は強いけど、私たちにほとんど関係ないからいいや。もうどうにでもなれーーってな感じ」
荷物を置きながら、私たちはほとんど毎回交わしているであろう会話を今回も交わす。
正直、もうどこが来てもどうせ負けて五コート、良くて四コートに押し込められるんだから興味はない。
私たちは南田の一年生とと楽しく試合します―。
「ラケット持って集合」
先生の声が響く。私たちは急いでラケットを取り出し、先生の元へと走って行った。