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第1話
兄貴が死んだ。
真冬の河川敷付近の川で溺死。
警察の調べでは自殺として扱われた。
葬式は家族だけで行われた。
あの強かった兄貴が、いまは小さな壺の中に収まっている。
おれは、兄貴が死んだのは自殺だなんて思っていない。
必ず、兄貴が死んだ真相を確かめる。
おれは、ただの白い粉となった兄貴の前で握りこぶしを作り誓った。
兄貴の葬式から、早くも数日経つ、親は全く立ち直らず、なにをやっても上の空だ。
おれは中尾リュウジ。高校一年だ。
死んだ兄貴は中尾リュウイチ。同じ高校の三年でボクシング部の主将をしていた。
たしか県大会にも何度も出場してインターハイにも出たほどの実力だった。
兄貴の夢はプロボクサーになってチャンピオンになることだった。
しかし、今となっては叶わない。




