7.タクという名の(1)
約束の場所へいくと、かつて動画の中で見てきた人たちがいた。
その姿は、凛としていて、清清しく。彼らのいる場所だけが涼しい風が吹いているように感じた。
「やぁ、ルミさん」
ルミが来たことに気がつくと、タクが手を上げて声を掛けてきた。
すると皆が一斉にルミを見た。
全員が今風のイケメンと言うわけではないが、やはり光輝くオーラでも持っているのだろうか、見られただけで自分が場違いな場所に来てしまったようで、今朝のわくわく感がしぼんでいくのが分かる。
硬直しながらも、今更逃げることもできず近寄っていくと、タクよりも早く犬飯が近づいてきた。
ショートヘアで、Tシャツにパーカーを着て、腕をちょっとまくっているところなどは、どこから見ても男性そのものだ。
「二人で並ぶと、まさしく彼カノだな」
犬飯に挨拶され、ホッとしているルミ。
そんな二人の光景を見ていた揚げうどんが、含み笑いをうかべながら言うと、他の四人
が笑ってないよというように、横を向くが肩が震えている。また、別のものは後ろを向いて見てないというポーズを取るが、やはり笑いを堪えているようだ。
「おまえらなぁ、そう見えるのは別にいいが、いやらしく笑うな!」
「しゃーねーじゃん。やっぱ、男だよ。いっそ、性転換手術してみたら? 俺たち、金集めてやろうか」
「余計なお世話じゃー!」
動画で見ているだけではどんな人なのかは分からないが、こうして会ってみればみんな普通の人だ。
ルミはホッとするものを感じながらも、こんなにステキな輝きを持った人たちの仲間に入れたことに感謝していた。
「よし! 今日はなにするよ」
タクがそう言うと、一斉にタクを見る。
「おまえさー。会おうって言っておいて、何するとかって、酷くね」
Kがそういうと、誰もが頷く。
「何が酷いんだよ」
「何をするかなんて、先に決めておいてくれよ。時間の無駄だろう」
そう言ったのが、乱気流だ。
「そんなことを言われても、会ってから決めようと思っていたからなぁ。じゃぁ、俺がこうしたいと言ったら、みんなついてくるのか?」
「そりゃぁ、タクのおごりなら誰も文句は言わないよ」
犬飯が楽しそうに言うと、誰もが『そうだ、そうだ』と連呼する。
「俺に金があるわけないだろ」
「そこはお互い様だね」
どうやら、みんなお金がないのは同じようだ。
あれだけ有名な人たちが集まるのだから、遊ぶにしても結構なお金が掛かるのではないかと心配していたルミは、ホッとしていた。