24.タクのいる場所(2)
「今日は、最後までお付き合いくださって、ありがとうございました。タクの意志を継いで、これからも続けて行きます」
コメントが飛んでくる。
―――そんなこと言っても、寂しいだろ
―――俺が慰めてやるよwww
―――俺と付き合えよ
―――タクの嫁より、俺の嫁www
心無い言葉の羅列。
「ありがとう、でも、私はタクを愛してるから」
画面の向こう側で、多くの人が涙していた。
揚げうどん、K、犬飯、乱気流……そのほかにも、本当にたくさんの人たちが、タクの死を悼み哀しんだ。
最後はタクの上手いとはいえない歌で締めくくり、時間を終えた。
タクの意志を継ぐことは、多くの人に生きることを伝えること、生きることの素晴らしさを伝え続けること。それには、まずルミ自身が生きなければならない。
今を生きることなのだ。
放送が終わると、通話申請が入った。
タクの言葉を思い出す。
『放送の後、通話が掛かってくるけど、その通話で生きることを選択する人が多いんだよ』
ルミは、疲れた心に言い聞かすように、通話を承認した。
『はじめまして、月子です』
一体誰からの通話なのだろうと、多少の不安を抱えて出た通話は、以外にも澄んだ声の少女だった。
「はじめまして、どなたかしら?」
『月子といいます。タクさんの放送はずっと聞いてました』
「そう、ありがとう」
『タクさんの放送のおかげで、私は自殺するのをやめたの。今は親と一緒にご飯を食べることもできるようになったんです』
「そう、良かった。きっと、タクもそれを聞いたら喜ぶわ」
『ルミさんは、タクさんと付き合ってたんですか?』
「ふふっ。そうね、恋人だった……わね」
『恋人でも、もう彼はいないから、あのコメントみたいにすぐに他の恋人を作ったりしちゃうんですか?』
「……どうして、そう思うの?」
『だって……タクが可哀相だから』
「そうか……私は、タクを愛してる。他の人なんて、考えられないわ」
『でも、今はそう言うけど、そのうち気持ちが変わるんじゃないですか? 長いこと、ずっと一人でいるなんてできないでしょ』
ルミは多少の困惑を感じていた。
この子は一体、何を聞きたいのだろう。
言う通り、次の恋を探しますと言って欲しいのか。
しかし、ルミにそんな気持ちはないのだ。タク以外に考えられないのだから。
「タク以外に、愛する人はいないわ」
『どうして、そんなことが言い切れるんですか?』
「……それはね、私の命に限りがあるから」
『え?』
「生きて、あと半年……かしらね。医者に宣告されてから、ずいぶん生きたから、残りの時間はそのくらいね」
『え、タクは? タクは知ってたんですか?』
「知ってたわ。全部話して、それでも結婚したいって言ってくれたの」
『そう……なんだ。死ぬの……怖くないですか?』
酷い質問かもしれない。それでも、聞かずにはいられなかった。
「怖くないよ。だって、彼が待ってるから」
月子は涙が流れる前に通話を切った。
それ以上、何を聞くこともできなかった。
大好きなタクが死に、婚約者がタクの放送を続けることに、妬みのような気持ちがなかったわけではない。だからこそ、放送後通話を申請したのだ。
しかし、そんなことになっているとは思いもよらなかった。
どこにでもいる、ごく普通のネット内の恋人同士なのだろうと、そんな軽い気持ちで聞いたのだ。
後悔と自責の念が、月子を襲ってきた。




