20.涙のプロポーズ(4)
「ルミ……検査したって言ってたね。どうだったの?」
ルミの目が苦しそうに、タクを捕らえた。
「悪い結果だったんだね。それで、俺にこんなことを言ってるんじゃないの?」
「……」
「どんな結果でも、一緒に乗り越えるよ。病気があるからって、俺はルミと離れることなんてできない」
「……」
「ルミ、話してくれ」
「……」
どれほどの時間が経過したのか、黙りこんでいたルミの口が開いた。
それは、苦しそうに。その苦しみを吐き出すように、ゆっくりと、ゆっくりと。
やっと、全てを聞き終えたとき、ルミは涙でくしゃくしゃになった顔でこう言った。
「だから、別れよう……」
タクはじっとルミをみつめ、言葉を返した。
「……一生、そばにいたい。どんなことになっても、ルミは俺のルミだから」
どれほど流してきた涙だろう。
もう、枯れてもいいはずなのに、その言葉を聞いて、更に溢れて止まらない。
でも、その気持ちに甘えることなどできない。
「ルミ、逆だよ。ルミがいなくなったら、俺は発狂してしまう。せっかく、働くことができて、仕事をすることの喜びも分かったというのに、今ルミがいなくなったら、全てに対して無気力になるだろう。そんなことは、考えなくても分かるよ。そうならないために、ルミがいる。ルミが俺に甘えているというのなら、俺はそれ以上にルミに甘えている。でも、それでいいと思う。本当に必要な存在だから、それでいいんだと思うんだ」
「……」
「一緒にいてくれ。俺の為に、結婚してほしい」
全てが解けていく。
心の中に積み上げられた、氷のような塊が、すごい勢いで解けていくのが分かる。
ルミは、嬉しさを心が破裂するのではないかと思うほどだった。
「この話、ご両親にはしてないの?」
「うん、できないよ」
「どうして?」
「親が哀しむわ。何も、今教えなくてもいいかなって」
「そうかな。それは、ルミの勝手な思い込みじゃないか? ご両親にしてみたら、ルミを助けたいと思うだろう。どんな小さなことでもいいから、ルミの支えになりたいと思うだろう」
「……」
「病気になったことを親不孝と思うより、どう生きるかで親孝行ができるんじゃないのか? ルミがどう生きるか。それで、ご両親がそんなルミを支えて、共に生きることが本当の親孝行なんじゃないかな」
「……でも、親は苦しむわ」
「何も知らせずに、後でルミが苦しんでいたことを知るよりはいい。一緒に涙を流すこともできる、一緒に苦しむこともできる。それが、ご両親の生きる力になる」
しばらく考えてから、小さく頷くと、二人で階段を降りていった。
それは、悲しみと苦しみと、幸せな報告をするために。




