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15.生きるための声(2)

「それでも、全くの無智無学なわけではないさ。親が学校だけが勉強する場所ではないといって、とにかく本を読むことを進めてくれた。そのおかげで、どこの誰よりも多くの本を読み、多くの知識を得ている。本が自分の先生であり、自分の恩人だ。」


「うん、タクは本当にいろんなことを知ってるよね」


「それでも、学生を見ると胸が苦しくなるんだ。どんなに偉そうなことを言っても、結局は引き込もりさ。」


「……」


「ある時、一冊の本に出会った。その本には、イジメにあって学校に行けなくなった少年のことが書かれていた。彼は、『他人を変えることはできないが、自分が変わることならできる』ということを、親からもらったその本で知った」


「……」



 春風が、タクの髪を揺らし、ルミの心を揺らして通り過ぎていった。



「どうやったら変われるのか、彼は必死に考え、本を読み進めた。そして、今までの自分を捨てた。まず最初にやったことは元気に挨拶することだった。大きな声を出すこと。それが彼の人生の最初の一歩だった」


「……その人も頑張ったんだね」


「俺は、もっと早くこの本に出会いたかった。でも、出会ったのは今だ。きっとこれもタイミングなんだ。『今』じゃないとダメだった」


「……」


「その意味は分からないけど、俺は思った。俺も自分を変えようと、学校へは行かなかったにしても今の自分を変えて、そして今苦しんでいる人に自分なりのメッセージを伝えよう。そう思った。だから、俺は放送を始めたんだ」


「そうだったんだ……」


「放送をしていて思った。文句を言ってくるヤツ、罵倒してくるヤツ。それは、寂しいからだ。相手をして欲しいからだ。寂しい、苦しいと言える人はまだいい。殆どの人が言えないんだよ。だから、俺はヤツらがどんな罵声を浴びせてきても、受け止めようと決めたんだ」


「タクはすごいよ。みんな、タクのおかげで生きてるって、感謝してるよ」


「そうじゃないよ。本当にすごいのは奴らだ。俺は、掛け声を掛けてるだけなんだから」


「そんなことないよ」


「放送が終わってから、通話をしてくる人が結構いるんだ」


「うん」


「そういう時、面倒だなって思うことがある」


「そりゃぁ、疲れるもんね。当たり前だよ」


「でも、通話にでて、話をすることで相手は生きることを選択してくれる。そういうことが何度もあった。逆に、放送の後も罵るために通話してくるヤツもいた。それでもいい、声を出してくれればいいんだ。いつか、生きることを選べるときが来るから」


「……」



 ルミの手がかすかに震えた。


 その手を、タクに分からないように、後ろに回す。


 これほどまでに、生きることに前向きな人と自分は一緒にいられる。それが幸せでありながら、怖くもある。


 タクは起き上がると、最後にこう言って笑った。



「俺はヤツラに言い続けてきた『生きよう』『まずは、声を出してくれ』それだけだよ」



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