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14.生きるための声(1)

 お互い仕事を持つようになり、デートの時間もとりづらくなってきた。


 それでも、二人で過ごす時間を大切にしたくて、できるだけ共にいるようにした。


 今日も、ルミにとって一ヶ月に一度の日曜日だ。


 今までなら、コミュニティの仲間と過ごしただろう。しかし、今は大切な時間として、隣にルミがいる。


 コミュニティの仲間との時間なら、今日でなくても構わないのだ。それが、来週でも再来週でも。だが、ルミとの時間は今日という日でなければならない。



「ゴメンね。サービス業は休日が違うから、なかなかデートできないね」


「いや、ルミが仕事してるのは好きだよ。どうしても、会いたいときは店にペットを見に行く振りをするから」


「いやだ、仕事がやりづらい」



 そう言って笑うルミは嬉しそうだ。


 今日も、公園の大きな木の下で、ルミは腰を下ろし、タクはルミの膝枕でのんびりと時間を費やしていた。


 お互いの仕事の話をしてみたり、上司や同僚の話だったり、友達の話になったりと、以前に比べたら話の幅はかなり広がってきている。


 それもこれも、タクが社会人として成長してきている証しなのだろう。


 時には暗い顔をしていることもあるが、それでも弱音を吐くことはなかった。


 ルミは心の中で、ひたすら『頑張れ!』と応援し続けてきたのだ。



「最近、仕事が楽しいんだ。俺にもできることがあったんだと思うと、なんだか嬉しいし。俺が作った製品が社会に出て行くんだと思うと、わくわくするんだ」


「そう、良かったね」


「ルミも仕事が楽しいだろ」


「うん、始めは辛かったけど、仕事を覚えたせいかな。楽しいって思えるようになってきた」


「働けるって、幸せなことだな」


「そうだね」



 友達が働きだし、自分たちと同じ年齢の人たちが社会に出て行くのを見るにつけ、働きたくても働くことのできない自分に不甲斐なさを感じてきた。


 バイトすらまともにできず、我慢することもできない。


 それらを全て、誰かのせいにして生きてきた。


 だからこそ、心から出る言葉なのだろう。



―――働けるって、幸せなこと。



 ルミはその言葉を聞きながら、深く頷いていた。



「俺さ、勉強なんて全くしてこなかったんだ。小学校でイジメにあって不登校。中学校に行ったらきっと上手くいくと思ってたら、そこでもイジメの的になって、あっという間に不登校。高校は楽しいって、誰もが言っていたのを聞いて、きっと今度こそって……」


「……」


「バカだよな。まともに勉強してこなかったのに、まともな学校に入れるわけなんてないのに。結局、名前が書ければ合格するような学校に行ってさ。そんなところ、不良のたまり場みたいな場所だって、なんで分からなかったんだろう。結局、中退」



 過去の自分をあざ笑うかのように、吐き捨てるように語り続けるタク。



「お決まりの引きこもりの出来上がりさ。それでも、高校だけは名前だけでもいいから卒業しないと。そう思って、通信に転校した。俺の最終学歴は高卒だ。でも、いくら高校を卒業しても、所詮は引きこもりだ」


「タク……」



 吐き捨てるその言葉に苦しみを感じたのか、ルミがタクの手を握り締めた。すると、タクも握り返してくる。


 握り返してくるその手は、強く、決して過去を悔やみ哀しんでいるばかりではないことを伝えていた。




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