11.カフェ
その日を境に頻繁に集まるようになった。
その都度、メンバーが変わることがあったり、増えることがあったりするが、減ることはなかった。
月に一度はミーティングと称して、地方の方からも集まってきていた。
何をするのかといえば、いつもと同じこと。
広い公園に集まって、生放送を炎天下で繰り広げるのだ。
そして、ダンスをしたり歌ったりする。
下手でもいいから、まずは最初の一歩を踏み出そうというのが狙いのようだった。
毎日家の中、部屋の中に閉じこもっていないで、どんどん外へ出て、やりたいことをやろう。
一人ではできなくても、みんなでやれば怖くないだろう。
そうやって、タクの周りには人が集まるのだ。
(タクさんは、いい人だね。みんなのことを考えて、とても素敵な人だな)
タクと近くなればなるほど、タクの魅力に魅了される。
しかし、タクはみんなのタクでなくてはならない。どんなにいい人だと思っても、それ以上に発展することはないのだ。
そんなことを思っていたある日、タクから連絡があった。
「大事な話があるんだけど、時間作れないかな」
一体何が起ろうとしているのか、タクの声はいつになく硬かった。
「うん、いいけど。大事な話って何?」
「電話じゃ言えないから、会って話したいんだ。電話で話して、聞き違いとかになっても嫌だからね」
「うん……分かったわ。じゃ明日、仕事が終わってからなら、時間を作れるけど。それでもいい?」
一体どうしたのか、できることならすぐにでも聞きたいが、どうすることもできない。
ルミは明日の仕事が終わる時間を約束すると、電話を切った。
翌日は、落ち着かないまま何とか仕事をこなすことができた。
最近はタクたちと会うことが生活の一部になっているせいか、それとも仕事になれたせいか、先輩から叱られることはなくなっていた。
それどころか、褒められることすらあるのだ。
せっかくついた信用を落したくない。
それゆえ、落ち着かない気持ちを何とかごまかして、仕事に専念したようなものなのだ。
仕事が終わると、急いで店を飛び出した。
いつもなら、みんなの中間地点で会うのだが、今日は仕事のこともあるし、早く話を聞きたいという焦りもあったので、職場の近くのカフェで待ち合わせをした。
カフェに着くと、先にタクが来ていた。
「ごめん。遅くなっちゃったね」
秋も近くなってきているとはいっても、まだまだ暑さが体にまとわりついてくる。体中をねっとりと空気が絡みつき、呼吸困難になりそうだ。
そんな不愉快な空気も、カフェに入ることで一気にホッとする。
今まで、空気に殺されるのでないかと思っていたのに、カフェに入った途端、冷気が救ってくれたように感じる。
「どうせ暇だから」
「そんなこと言って」
ルミは笑いながら、タクを見た。
その目は『それで、話はなに?』と聞いている。
「うん……」
いつになく、言いよどむタクにルミはよほどのことなのだろうと、じっと待った。
「実は……」
「うん」
「好きな人ができたんだ」
「……おめでとう」
何も、好きな人ができたことを私に言わなくてもいいのにと、寂しい気持ちを抑えてお祝いの言葉を口にした。
「いや、あの」
「その人は、タクを好きだと言ってるの? もちろん言ってるのよね、言わないはずないもの」
「そう思う?」
タクの体が押されるように前に出る。
「うん、思うよ。タクなら、必ず好かれるしね」
「そうか、よかった」
安堵と共に椅子に落ちるように座った。
(そんなことを確認しにくるくらいなら、本人に直接言えばいいのに)
「じゃぁ、付き合ってくれるね」
「ええ、付き合うわよ、きっと大丈夫……ん?……誰が、付き合うの?」
タクは満面の笑みでルミを見ていた。




