10.タクという名の(4)
「他の連中だって、そうだよ。タクは二十二歳、Kは二十一、乱気流は十八、揚げうどんが十九」
「……」
まさか、自分より若いとは思わなかった。
タクとKが年上としても、他の人たちが年下だとは考えもしなかった。
「あはは、後で伝えといてあげるね」
「ダメダメ、やめて」
「冗談だよ。でもさ、年下だと分かったんだから、もっとリラックスして遊べるでしょ」
それは、犬飯の優しさからの言葉だった。
(そうか、そういうつもりで教えてくれたんだ)
「でさ、そんな時にタクの放送にであったの。最初は、なんだコイツって思った。だって、一人で楽しそうに、仲間とじゃれあって。こっちなんて、一人で苦しんでるのに。そう思ったら、めちゃくちゃにしてやりたくなって、言いたい放題だった」
「……」
「でも、タクはひとつも言い返すことなんてしなくて、全部笑って交わしてくれるんだ。何を言ってもダメだと思ったから、『つまんねーヤツ』って言って出て行こうとしたんだ。そうしたら『またおいで』って言ったんだ」
「……」
「変なヤツだよね。普通ならさ、言いたい放題言われたら、反論しまくって、もうその日の放送なんてめちゃめちゃになるのに、タクは笑ってたんだ」
「……」
「後で聞いたら、そうやって言いたい放題言ってくるのって、参加したいから言うんだって言われた。だから」
「だから俺は、何も言わない。いつでも、戻って来れるように、何も言わないんだ」
しんみりしていた犬飯の言葉を受けたように、揚げうどんが言葉を続けた。
ルミは揚げうどんの方へ、顔を向けた。
その顔は、ダンスで汗だくになりながらも、心地よい達成感を宿していた。
「俺も同じなんだ。やっぱり、イジメ。親には言えないからさ。どんなに親に泣かれても、怒鳴られても引きこもりに徹した。親からしたら、何でこうなったのかって、わけわかんねーって。でもさ、俺もやっぱり死のうって考えてた。こんな俺はいらない、親にしてみたら迷惑なんだって。そんな時に、タクさんに会ったんだ。会ってなかったら、俺、死んでたよ」
「そうそう、タクのおかげで、みんな生きてるんだ。それに、好きなことをしようって思えるようにもなったしね」
「乱気流だって、俺たちと似たようなものだし。乱気流が、どうしてここにいるのかは知らないけど」
「おいー。俺も仲間に入れろよ」
やはり、汗だくになった乱気流たちが立っていた。
「乱気流さんは、タクさんとどうやって知り合ったんですか?」
揚げうどんが聞くと、乱気流がニヤリとしながら口を開いた。
「それ、聞いちゃう~? 真面目な話になっちゃうけど、聞いちゃう?」
「何話してるんだと思ったら、そんな話してるの? 詰まんないからやめろ」
タクが恥ずかしそうに口を挟んだ。
「俺もお前たちと変わらないさ。結局は、人生の敗北者側にいたんだ。それをタクが救ってくれた」
「救ってなんかいないって、俺は思ったことを言っただけだよ」
誰もがタクのおかげであるという。
そして、ここにいる人だけではなく、コミュニティの大半が、タクに救われたのだと。今なお、救われたいと願っている人が多いのだと話してくれた。
ルミは、どうしてこれほどまでにタクを好くことができるのか、理解できないまま、その日はお開きとなった。




