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闇に潜む者

読んで下さる皆様ありがとう御座います。


「御前の事を理解する者は、今の帝国の幹部にはいない。新たなる皇帝は、御前を陥れる事しか考えていないのだ。まだ解らないのか、我が身心を知れアレク・シュタールよ。」


 闇夜の監獄の鉄格子より籠れ、落ちる月の光が、獄中を照らす世界。部屋の真ん中で東洋の禅を組み、精神を集中させる青年の姿が有る。銀髪の彼こそが、アレク・シュタールである。


 彼は、三年前まで帝国の千人もの兵士を、束ねていた光翼の騎士、団長である。そして、帝国の守護の(かなめ)となっていた。しかし、皇帝が、現皇帝と成った時に、国家反逆の罪で、孤島の監獄へと送られたのである。


 今でも、彼の処罰に対して国民たちは、不満を感じてはいるが、帝国の力は絶対的なもので、誰も口を出せないまま今日にまで来たのである。


 アレクは、徐に立ち上がりながら半眼を開き、呟く。


「そんな事は、分かっているよ。誰に言われる訳でもなく私が一番分かっている。」


 アレクは、闇へと消える言葉と共に、固く握られた拳を見つめる。息を吐きながら、鉄格子より見える、月の光を浴び、光が彼の身体を包み込み、彼の銀髪を映えさせる。見開かれた眼が、月の光を捉え、碧眼を美しく照らし出す。アレクは、訊ねる様に言葉を(つむ)ぐ。


「今日は、何時になく静かだな。何時もの饒舌(じょうぜつ)さは如何したのだ。気配も消えてしまった。今日はゆっくり眠らせてもらうよ。」


 アレクは、置かれているベッドへと向かう。そして、深い眠りへと落ちて行く。


 見た事のない世界に、響くいつもの声と、懐かしく温かい声が、アレクの回りに響く。


「やはり、我等は、命を取り合う運命に会った様だな、レオン。」


「我等の闘いも、ここで終わりの様だな。御前とは、別の出会い方をしていれば、違った終わりもあったはずだ。行くぞ、○○○。」


声と共に見える画面が移り行く。

次の言葉と共に、別の画面へと移り行く。


「何故だ、○○○。何故、攻撃しなかった。」


「我は、我が人間界に生き残るより。レオン、御前に生き残って欲しかった。我は、憎い。我を召喚し、貴殿と闘わせた奴が。」


先程と同じように、言葉と共に、次の画面へと移り行く。


「我が、魂と肉体の事任せるぞ。我が友レオン・シュタールよ。」


「任されよう、○○○。御前の、肉体と魂の封印は、必ず私が()そう。」


その画面と共に、五月蠅いまでの音が、アレクの意識を、現実へと導く。      


 響くと共に、他の独房から、鍵の開く音と扉の開く音が響き渡る。それは、アレクの独房も同じである。アレクは、独房の外へ出て採掘所へと向かう。


 部屋より出た時、受刑者だけでなく、監守も動きを、止めアレクの姿が見えなくなるまで見送るのが、この監獄での暗黙の決まりと成っていた。何故なら、この監獄に入れられて、三年も生きている囚人は、アレク以外いないのである。


 魔鉱石の採掘所には、人の健康に害する物質が、立ち込めているからである。しかし、アレクは、高濃度の採掘へ始めから送られたが普通に生活しているのである。


 高濃度の採掘は言わば、死刑執行と変わらないのである。普通なら三日も行けば、死んでしまう場所なのだ。故に何も知らない人間位しか、アレクに近づく者はいないのだ。


 アレクには、理由が理解出来ていた。それは監獄に入れられた時に、魔術封じの焼鏝(やきごて)で魔法を封じられたからである。


 アレクは、魔力を身体に浸透させることにより、内外からの毒素を解毒し、純度の高い魔鉱石からも魔力を、奪い生命へと転化する力を、自然と身に付けていたのである。その為アレクは、外の世界と同じような生活が出来るのである。


 アレクは、何時もと同じように、最下層の採掘所へと(おもむ)く。アレクの心に、いつもと違う声が響き渡る。


『こちらに来るが良い。我が声を、聞きし者よ。』


アレクは、声に導かれる様に奥へと歩み始める。


『この島の最下層へ。ご案内しましょう。』


その声と共に、大地が罅割(ひびわ)れ、地の底へと導かれるさなかに、声が響く。


『ようこそ、闇の世界へ。アレク・シュタール君』


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