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ココロドール  作者: 佐藤 皆無
信の出来事
1/2

昔は今に繋がっている。今が昔に繋がることは無いのに。

えと、闘わない超能力学園ラブコメです!

今回は皆の心に着目してます。

超能力で闘う事はありません。

主に恋愛したり、トラブル解決したりしてます。

たまにすれ違ったり。

そんな超能力学園ラブコメ第一弾!

良かったらどーぞ!

 男は淡々と言う。

「欲しいものがある奴は、俺に何かを捧げろ、すればその分を望むもので返してやる」

 それは、普通の中学の普通のクラスの中で、唯一ゆいいつの異常だった。

 しかし、男はそれにはそぐわない普通の姿で言った。

 いつも通り、男の目に光は映らず、周りの不審な者を見るような眼すら意に介さず。

 そんな男に興味を持った者は沢山たくさんいた。

 これは、その中の二人の話。

 二人の内の一人は言った。

「俺は異常を求める、捧げるものは」

 そして、もう一人も別時刻に男に言う。

「私は愛する者を失わない事を求めるわ、捧げるものは」

 そして、偶然にも同じ言葉を言った。

「「全部!」」

 これは、そんな二人を中心に回る物語である。


 大貝冬おおがいとうは焦っていた。

 冬は初めての学校へ、向かわなければならないからだ。

 冬の家から一番近い学校に余裕で受かり、徒歩で10分と掛からない。

 冬が準備も終わり、登校最終時刻まで30分とあるのに焦っている理由は、幼馴染と待ち合わせの約束をしてるのだ。

 待ち合わせの時刻まで10分も無い。

「かーさん、飯早く!」

 椅子に座りご飯がでてくるのを待つ。

「はいはい、そこまで焦る必要ないでしょ?」

 言いながらも、もうテーブルに料理を置いている辺りを冬はやっぱり要領がいいなと思う。

 テーブルに置かれたトーストにバターを塗りながら言う。

「そうかな? だって、あと10分だよ? ご飯を5分で食べなきゃ」

「朝ごはんなら5分で余裕じゃない」

 冬は母の大貝彩夏おおがいさやかに言われて納得してしまう。

「うぅん、そうか」

 するとドタドタと冬の妹が二階から下りてくる。

「あれ? 佐保はまだ、出てなかったの?」

 冬に言われて大貝佐保おおがいさほも反論しようとする。

「お兄ちゃんだって、あれ? 何そのかっこう」

「いや、制服だけど」

 答えると佐保は納得したように「あー」と呟く。

「お兄ちゃんも今日で高校生? そっかそっか」

「いや、知ってただろ?」

 佐保の言葉に冬が呆れて答える。兄が高校生になる事に入学式まで気付かない妹はそうはいない。

「あー、なんてーの? いつもの違うお兄ちゃんの姿に慌てたって言うか。こんなこと言わせないでよ」

 照れて言う佐保に冬は慌ててしまう。

「え? いや、俺もそう言われるのは、悪い気はしねえっつーか、嬉しいけど」

「ん? 冗談だよ~」

 佐保はさらっと言う。

「ああ? もう、いつまでからかうんだよ」

「お兄ちゃんが効かなくなるまでっ」

 こういうのは二回、三回で慣れるようなもんじゃないし、実際何回もからかわれてるが、バリエーションが豊かなので冬はいつも騙される。

「そういや、勢いよく下りて来たけど」

「ああ、そうだった。急いでるんだ」

 そんな佐保に優しく彩夏は言う。

「佐保は遅刻するレベルね」

「うぅ~。お兄ちゃんの所為だかんねっ」

「わりーわりー。じゃあ、行ってきます」

 冬は佐保を軽くあしらうと(さっきまでは逆だったが)鞄を持つ。

「トーストだけで大丈夫?」

「ああ、どうせ入学式は短いだろうし。いってきまーす」

 冬は玄関を開ける。

「なんでお兄ちゃんって、こんな早くに出るの?」

 佐保は冬が出ていくと彩夏にごく自然な質問をする。

名月なつきちゃん、待たせてるんでしょ?」

 冬が待ち合わせをしてる相手、幼馴染の長安ちょうあん名月。

「まぁ、そうだけど、早すぎっていうか」

 反射的に呟いた言葉に、彩夏は佐保が予想もしなかった言葉を言う。

「もっとかまって欲しいかもしれないけど。遅刻はしないようにしてよ~」

「なっ、違うし。そういうんじゃないから」

 慌てて弁明するも、

「はいはい」

 と軽くあしらわれてしまう。

 佐保はもし、私とお兄ちゃんが『そういうの』になったら母はどう思うのだろうと思った。


 仙崎信せんざきしんは歩いていた。

 高校に向かう道だ。高校は冬と同じ。

 信は通学路を通る皆を『見て』、『知って』いた。信は「楽しいなぁ」と思う。

 信は少しだけ、今までの人生を振り返ってみる事にした。

 この高校に通おうと思ったのは、頑張らずに受かるくらいの普通の偏差値で且つ、ある程度綺麗だからだ。

 信は中学を卒業する時、とっても名残惜しかった。しかし、だからその中学に残るのでは意味が無い。

 信はそのクラスの、その年の仲間を含めた学校から抜け出したくは無かったのだから。

 そして、その感情は中学一年生の頃は全く無かった。

 今、死んでも構わない。信の中学一年生の時の心情はそんな感じだった。

 やりたい事も、楽しい事もわからなかった、『自分』もわからなかった。

 そんな信は救われた。少なくとも信の主観では。

 だからこそ、卒業にやるせなさを感じれたし、それを今は入学の楽しみで上書きできている。

 そんな信は今日も普通では無い『力』を使って、人生を愉快に楽しむ。


「つまらないわね」

 青柳莉子あおやなぎりこは『独り言』を呟く。

 でも、それはあくまで客観的に見たらの話。

 莉子の主観では確実な会話。

 だから、勿論返答がある。

『そうか? 入学式なら、楽しいだろ?』

 返答をした、『偽』仙崎信に言う。

「そう? 億劫じゃない」

『早く帰れるし、新しい仲間とも会えるだろ?』

 莉子は客観では誰もいない空間に話し続ける。

「あなたって、そういうの嫌いじゃなかった?」

『ああ、嫌いだ』

「だったら、なんで入学式を楽しいと思うのよ」

『お前に会えるからじゃないか? 今じゃ、いつでも会えるけどな』

 その言葉に莉子は目に少し後悔の色を浮かべる。

「そう、ね」

 莉子も信と同じように『力』を使っているのだ。

『じゃあ、行こうぜ』

「ええ」

 ただ、違う所は楽しむ為では無く、無くては耐えられないから、そして使う度に後悔が押し寄せてくる所。

 そして、前を見ると二人の生徒を見かける。

 莉子は『偽』信との会話を止めた。


「ふう、間に合ったか」

 冬は待ち合わせ場所である公園に着く。一分前だ。

「よっ」

 後ろから声を掛けられる、長安名月だ。

「なんだ、いたのか」

 どうやら、丁度視界に入らなかったらしい。

「うん、だから間に合ってないね」

 時間では間に合っても女の子が着く前にいるのが男というものだ。

「わるい」

「いーって、別に。じゃあ、行こうか」

「ああ」

 冬は少し、考える。

(こうして一緒に登校してるけど、小学校からずっとこうしてるんだよな。待ち合わせ場所も同じ公園だし。時間は変わってるけど)

 歩いていると確実に変わっている景色に冬は辛くなる。

(時間の経過を確実に知らせてくる。景色の移り変わりは何度見ても慣れない)

「どうしたの?」

 長い間考え事をしていた所為か、名月は心配そうに冬に言う。

「景色が変わっていって辛いって思ったんだ。俺らが変わらずに、今もこうして一緒に学校に行ってるのを考えるとさ」

 実際、景色に対するように冬と名月の関係は変わらない。

 中学の頃、冬は友達に「名月と付き合ってるのか」と聞かれた事がある。

 勿論、付き合ってなどいない、だからそう告げた。するとその友達は「おかしい」と言っていた。

 付き合ってないし、付き合う気も無いなら、一緒に登下校するメリットが無いと。

 正直、冬は付き合う気があるか無いかなんて、わからなかった。

 ただ、もし名月に告白されたら断るだろうとも思っていた。冬にはもう好きな人がいるから。

 でも、メリットとかじゃないんだ。

 確かに、このまま登下校を続ける事は冬の恋を確実に妨げる。しかし、冬は今が壊れるなら恋は叶わなくて良いと思った。

 彼は10手に入れられるとしても、1失うなら止めるタイプだから。

 だから、何を噂されても、名月とはこの関係のまま不変だったのだが。

 そんな昔の事を思い出していた冬は、自分の言葉が途中で終わっている事に気付かなかった。

 その言葉に名月が返す。

「冬は、景色に合わせて変わりたい? それともこのまま?」

「俺は変わる事で何かを失うなら、変わりたくない」

「そう」

(だって、変わるって事は今を失うって事だろう?)

冬は今を失ってまで欲しい変化が無い。

況してや、全部を失ってまで欲しい変化なんて、まるで無い。


 さっきの質問は自分を苦しめるだけだったな、名月は思う。

 いつも、冬は変わる事に否定的だ。

(だからもし私がありのままの気持ちを伝えたら、好きだって言ったら、断るだろう。それに)

 下を向いて考えていると、隣を莉子が通る。

 中学二年生の時に私と冬と同じクラスだった(それ以外の学年は違うクラスだった)。そして、

「あ、青柳さん。おはよう」

「おはよう、大貝君。あなた達、相変わらず仲良いわね」

 おそらく、莉子は冬の好きな人。

 だから、このまま登下校を続ければ今みたいに勘違いされて、冬に良くない。

 でも、冬はきっと止めない。だから私が冬を拒絶しなくては。

「そうかな?」

 冬はなんでも無いように莉子に言う。

 名月は今まで何回も拒絶しようとした。

 でも、名月には好きな人を傷つける事ができない。それが、その人に為でも。

(私、悪い女だな。都合良く冬を……)

 莉子は二人を見て言う。

「本当に、うらやましいわ」

 その時、莉子は悲しげな顔をしていた。

(うらやましい? 私はあなたがうらやましい)


 冬は学校に入る。

 この学校は入学式が終わるまで、部活の勧誘は禁止されている為、そこまで学校は騒がしくない。

(入学式の後は騒がしいだろうけどな)

 冬が憂鬱になっていると、信に話しかけられる。

「ひっさしぶり~」

 信は後ろを歩いていて、今学校に着いたようだ。

「うん、久しぶり」

「で、どうなの? 進展した?」

 何が? とは聞くまでも無い。莉子との仲の話だ。

 信は中学三年生の頃、何故か冬が莉子の事を好きなのを見抜き、「応援する」と言ってきたのだ。

(そういえば。中二の春に、転校する直前の他クラスの生徒が変な発言をしたっていう噂があったな。あまり覚えてないけど)

「全然」

「相変わらずだな、まぁ、ゆっくりでいいんじゃないか? 新しく三年、チャンスが増えたからな」

「ああ」

「それより、重要なのは」

「なんだ?」

「クラスだ! 俺とお前が同じクラスであること、それから莉子も同じクラスじゃないとな」

「あ、ああ」

(そういえば、忘れてた。同じクラスが良いな~)

「まあ、こればっかりは運だけど。てかお前、中学の三年間、長安さんと同じクラスだったよな?」

 冬は信の口から長安という言葉が出てきて、驚いてしまう。

 だって、冬に名月と一緒に登下校するのは「おかしい」と言ったのは紛れもない信なのだから。

 しかし、信の口からは冬が驚く言葉が出てくる。

「そんなに一緒ならまた、同じクラスになれるよな」

「え?」

「どうした?」

「いや、てっきり俺が名月と仲良くしているのは、反対してんのかと思ってたから」

「いや、不利っちゃ不利だぜ? でも、親友みたいな人は大切にした方がいいだろ?」

「あ、だよな」

「ああ」

はい、前書きにたまにすれ違うと書きましたが、スタートから微妙にすれ違っています。

とりあえず、次で決めている事は、闘わない事です。

絶対、闘いません。

少なくとも超能力では。

喧嘩とかはするかもしれませんが。

あと、これが一番重要なんですが。

読んでくれてありがとうございます。

別に読んでくれてなくても、このページ開いてくれただけで嬉しいっすわ。

ありがとうございます。

また、次のとか読んでくれると嬉しいです!

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