プロローグ2
「すみませんもう一度お伺いしてもいいですか?」
何度聞いても信じられない。私の担任になった生徒が現在警察から事情徴収を受けてるなんて…。しかもハイジャック犯相手に無双乱舞だなんて。
芹沢講師は額に手を当てたい気分になった。今年新任したばかりで入学式の途中に校長に呼ばれて電話を代わったらこの有様だ。
…覚えてろ、校長、メンドクサイと判断して断れない私に厄介事を押し付けたに決まっている。絶対そうだ。
口にも表情にも出さず芹沢講師は校長を思い浮かべながら密かに呪詛を唱える。
はぁ…これからの学園生活は嫌な予感しかしない…。芹沢講師は精一杯ため息をついた。
それから入学早々、ハイジャック犯を撃退したという噂はどこからか漏れたのかは知らないが、学園中に知れ渡ったのは時間の問題だった。
入学式も終わり、山中翼と四之宮秀光、東條有紗は開放された仮想シミレーション室にて仮想世界で自主訓練していた。
仮想世界は現実と区別にならないくらいリアル今回はコレを体験する為だけに来たようなものだ。自主訓練という名目で使わせて貰ってるけど、訓練なんてどうでも良かった。
しかし真面目な性格なツバサちゃんをみて秀光は「自主訓練だしそこまで本気にならなくていいのに…」と思う。
どうせ評価されないし元々は暇つぶしにオレにとってゲームするついでに軽く暇つぶしにこの仮想世界を体験するためにきたものだし、どうでもいい。
そんなツバサちゃんの様子を見かねて有紗はツバサちゃんのために真面目に訓練してみるようだ。
有紗もおせっかいだねぇ…と思いながら目の前のPSSに夢中になっていつしか時間の感覚も曖昧になっていく…お、幼女はたまらんねぇ…
「つ…ひでみつ…秀光…おい」
有紗は夢中で美少女ゲームをしている秀光のPSSをぶんどった。
「なにしやがる」
即座に奪い返す。
「せっかくだし秀光も訓練に参加してみたら?」
「えー…訓練なんて面倒なだけじゃん?、それよかオレは舞ちゃんとお医者ごっこして遊びたいんだ」
秀光がしているゲームは18禁ゲームで改造してPSSに移植したものだ。内容は主人公は小学校の保健室の先生で、幼女にえっちぃ診断をするといういわゆる抜きゲーと呼ばれる分類のエロゲーだ。
爽やかな笑顔で言い放った有紗に対して、自信満々にPSSの画面を突き出し貧乳ロリキャラを突き出す秀光。有紗は笑顔のままPSSを奪い、教室のゴミ箱にポイ捨て。
「ああああああああぁぁぁぁぁぁああああああああああああああ!!!!舞ちゃんになんてことをおおおぉぉぉぉ!!!」
[天誅…」
「てんめぇ~~!!!今度こそ許さねぇ!舞ちゃんの仇とらせてもらう!」
「ほぅ、この私に格闘戦しようなんて命知らずがいたとは・・・かかってきなさい」
この後、有紗の一方的な制裁という名の蹂躙が始まったのは言うまでもない。
授業をまるっきり無視して始めた有紗と秀光の夫婦喧嘩(?)を眺めながら翼はハイジャック犯を撃退したという噂の転校生っていつくるのかなっ・・・とほのぼのと考えていた。
それから時間はすこしだけ流れた昼頃のことだった。
噂の転校生は肩で息しながら妹から差し出されたハンカチで汗を拭きながら、少しだけ休憩していた。
「気が進まないけど行こうか、舞」
「はい、しかしお兄様からそんなこと言うなんて珍しいですね」
「ははっ、まったくだ、沖縄から東京行きの飛行機に乗ったらテロリストとばったり遭遇、そのままハイジャックされるとは思わなかった・・・このまま擦り傷だけ負ってこんな面倒そうな学園サボりたい気分なんだけどね」
「お兄様は妹に護られるものなんですっ!、お兄様には誰であろうとも指一本触れさせません!・・・お兄様、気持ちは分かりますが転校初日ぐらい、しかもお父様がせっかく推薦状をお知り合いの理事長さんから貰ってきたのですから、サボりなんて許しませんよ・・・ハイジャックされるなんて珍事件滅多にありませんし、学園には連絡してありますから、諦めてください」
舞は爽やか小悪魔スマイルで修司に有無を言わさぬ迫力で迫っていた・・・怖すぎる・・・
「・・・そうだったね、行こうか、舞」
舞からお兄様と呼ばれていた少年、修司は、妹に半ば強制的に手を繋がれて魔術学園へ手を繋いでゆっくりと連行されていた。