プロローグ1
「お兄様…お兄様?…ふふふ、お兄様ったら寝顔が可愛いです」
東雲舞は雲の上、東京行きの旅客機の中で兄の修司の隣の席で寝るのをひそかに待ち望んでいた。
遂にこの日この時を待ってました!とばかりに舞は修司の肩にゆっくりと慎重に寄り添いあう。
舞と修司が兄妹だということはこの中では後ろの席の両親しか知らない。知らない人から見たらきっとこう思うだろう「リア充死ねよ」「甘い、砂糖より甘いよ!…早く爆発しないかな?」「ちくしょぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」(血の涙を流しながら)と。
お兄様、私今、物凄く幸せです!もう天国に行ってもいいくらいに!お兄様の普段は悪い目つきも整った顔立ちもお兄様の唇も…お兄様の…口…お兄様の…
「ふぁっ…///」
舞はこの時間、やりたい放題だった。それに加えて、ここまで読んでくださった読者の皆さんにも分かる通り舞は重度のしかも末期のブラコン。それに加えて両親は後ろの席、しかも寝てる。
もう誰にも舞を止めるものはいない。例え神だろうと今の舞の前では裸足で逃げ出すだろう。つまりそれくらいやりたい放題だった。
「お兄様…お兄様のファーストキスは妹が貰うって決まってます。なので私のファーストキスも貰ってくれますね?」
舞は寝ている修司に囁きながら、左手を膝から太ももへ、右手を修司の肩にそっと乗せてキスをする。
修司の唇と舞の唇が重なり合い_________
パァーーンッッッ________
乾いた空気を震わせて客室に発砲音が響き渡る。
「騒ぐな!今すぐ殺されたいか!殺されたくなかったら俺達の言う通りにしろ!」
…高度一万メートル以上ある高さで旅客機に穴が開いたら空気が逃げてさらに穴が開き、酸欠状態になったりしてハイジャックどころの騒ぎになることを知らないのだろうかこの犯人…?」
修司は発砲音で寝ぼけ様にそんなことを考えていた。
「いいかお前等、今のは空砲だ、次は本当に撃つぞ、妙な真似は命が惜しかったらするなよ?」
ファーストクラスに座っている修司の後ろからぞろぞろと黒タイツの筋骨隆々な男達が溢れてきた。
うわぁ…キモイ…しかも汗だくだよこの人達。
ぞろぞろと沸いてきたハイジャック犯…黒タイツ一号でいいやもう。黒タイツ一号が液体の入った袋を上に掲げながらうるさい声で叫ぶ。
「俺達はサリンを持っている、もしこの中に魔術師がいたとしても動くんじゃねぇぞ!!もし動いたらこの劇薬をばら撒く、いくら魔術師だろうと人間だ。大人しく……え?…」
「気持ち悪い、五月蝿い、声を出すな、息をするな、お兄様と私の恋路を邪魔をする邪魔者は黙って馬に蹴られて私に斬られなさい。」
…さっそく殺っちゃったよ…この人。恋路の部分はもちろん受け流す
先ほど騒いでいた黒タイツ二号の背中を足で踏みつけて舞は日本刀を軽く振った。
魔術師は公共の場ではKMSと精霊鉱石を使用してはならない。ましては旅客機の中で使用するのは論外だ。しかし正当防衛や緊急の場合は使用してもいいようになっている。ちなみに舞が持っている日本刀もKMSに該当する。
KMSとは機巧魔術装置の略だ。精霊鉱石は鉱石自体に強力な因子を持つものを指す。
舞が振った日本刀、銘刀紫電の刃から鮮血が飛び散る。
「黙って私に斬られなさい」
「え?嘘?ち、ちょっと待って!ここにサリン持ってるん___」
ブシュッ_____
黒タイツ二号と三号、あと四号も…数えるのも面倒なほどの黒タイツを舞は瞬時に斬り倒す。
「悪即斬、成敗完了です。お兄様」
黒タイツ犯の屍の上で爽やかな笑顔に返り血がついた舞が修司にむかってVサインしていた。
修司はもう苦笑いするしかなかった。




