あきら兄妹の旅・浄化2
十分程歩くと駅に着いた。
昼下がりの郊外の駅。
降りる人は少なく、乗る人の大半を高校生達が占め、いくつもの集団を作り、会話に夢中であった。
活気があった。
もう二三時間もすると、都心から帰宅する人達でいっぱいになる。
きっと疲れ切って、生気の抜けた表情が溢れるのであろう。
駅は主要駅に挟まれており、上りと下りが各一本づつあるだけであった。
、二人は上りのホームへ進むと、入場券を買って改札を抜けた。
下り方面に人が集中していた。
上り方面は、下り方面と相反するように人が少なく、数人の高校生と、ひと組の五歳くらいの幼稚園帰りの女の子を連れた親子がきちんと列を作って電車を待っていた。
兄妹はホームの先端まで行くと、金網で囲われた壁の一番端に花束を置いた。
二人はお互いに目を見やると、同時に手を合わせ合掌し黙祷した。
場内放送が、上り電車がくる事を告げた。
放送が終わると規則正しい雨音が二人の耳には、心で唱えているお経に添える木魚のように響いた。
あきらとあけみは閉じた眼の奥から、また幻影達がよみがえって来たのを感じた。
電車がホームに入って来る。
と、キーッという音を発した時に、二人は蒼ざめて眼を見開いた。
あきらはあけみの手を取った。
あけみはあきらの腕にもたれかけた。
二人はホームのベンチに腰掛けた。
女の子が「オシッコ、オシッコ!」と騒いでいた。
幻影達も五年前、このベンチで震えながら目の前の光景に蒼ざめていた。
それは羽川に退職金を届けて、街を離れる矢先の出来事であった。