メフィストに願う
気がついたときには、正気に戻ったときにはもう手遅れだった。
魅了を使う魔女の手にかかり、俺は魔女以外の女性を認識できなくなってしまった。
それは母親や最愛の妹も同じで、今までどう生きていたのかわからなくなってしまうほど、俺が俺じゃなかった世界には俺と魔女しかいなかった。
そんな俺が正気に戻ったのは、隣国の女傑が魔女を国家転覆罪で絞首刑にしたから。
なんでも、魔女が隣国の王子にも手を出したことに危機感を覚えた国王夫妻の判断らしい。
そのおかげで、俺は最愛の妹を思い出せた。
だが、気がついたときには遅かった。
妹はこんな不甲斐ない兄にさっさと見切りをつけ、家出したあとの足取りは追えず。
王太子は魔法が抜けきっていないようで傾倒している魔女が殺害されたことを理由に隣国に戦争を仕掛けた。
これでは、廃太子も時間の問題だろう。
さて、俺はそんなこんなで血生臭い戦場にいる。
こんなところにいる暇はないのだが、腐っても今はまだ王太子のお願いという名の権力に逆らえるはずもなく。
早く終わらせて、妹を探しに行かなければいけない。
そんなことを思いながら、いつのまにか例の女傑との一騎打ちになっていた。
さすがに男女の差が勝ち、なんなく女傑は斬ったが、なぜか鼻で笑った彼女と勝ち気な笑顔を浮かべる妹が重なる。
倫理的によろしくないことも貴族の嫡男として相応しくないこともわかってはいたが、遺体をまさぐってしまう。
是が非でも、彼女が妹でないことを確かめたかった。
だが、胸ポケットから見つかったのは、3人の親子の写真が入ったロケットペンダント。
血で掠れてしまい詳細は見えないものの、それは当主である父と病死した母、幼き妹が写っているように見えた。
四人で撮ったはずの写真だった。




