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友美と一緒に久しぶりの休日を満喫すべく、あらかじめ予約しておいたクラシックホテル内のレストラン、グラン・アドリアーノでコースを楽しんだ後、真っ白な砂浜にエメラルドグリーンの海に雲一つない青空の下、一緒にビーチを散歩しながらとりとめもない会話を楽しんでいた。
もちろんSPつきではあるけれど。
高校時代、夏休みとか互いの家に泊まり合って夜を徹しておしゃべりを楽しんだことを懐かしく思い出しながら、彼女とのとりとめもない会話が楽しくて楽しくて。
久し振りの自由な時間、気の置けない友達と過ごす時間が、こんなにも贅沢なものとは思いも寄らなかった。
もちろん、ハロルドさんとの話はずっと心の隅にひっかかってはいたし、それを友美に見抜かれてしまって少し相談もしてみたけれど。
やはり、すぐに解決できる問題ではないし、これから少しずつ彼のことを知っていくしかないという結論に落ち着いた。
今悩んでもどうしようもないことはとりあえず悩まない。
いかにも友美らしいモットーで見習わねばと思うものの、それでも、時折頭をよぎるのはやはり彼のことだった。
今頃どこで何をしているのだろうか?
本当は彼の側にいるべきなのでは?
そんな思いに心搔き乱されていたそのときだった。
ホテルの軒先で色とりどりの花を売っている少女に目が留まる。
(そうだ……せめてお花だけでもお土産に……)
別にわざわざ言葉にしなくても彼にそっと寄り添う手段なら他にもある。
少女が売っている花の中に、大振りのダリアを見つけて私はそれを買っていくことにした。
友美が波女と現地語で話してくれて、白いダリアの花束をつくってもらった。
「ありがとう!」
と現地語で感謝をすると、彼女は「どういたしまして」と最高の笑顔をくれた。
「ちなみに白いダリアの花言葉は『感謝と豊かな愛情』だそうよ」
「ああ、そうなんだ。
教えてくれてありがとう」
今の気持ちにぴったり。
私はうれしくなって花束をじっと見つめる。
だが、そのときだった。
少し離れたところで周囲を見張っていたSPの人たちが血相を変えて私たちの元へとはしってきた。
一体何があったんだろう!?
戸惑う私に代わって、友美が険しい表情で彼らと言葉を交わす。
なんだかものものしい空気に、花を売ってくれた女の子も怯えた表情で花かごを抱えて足早に立ち去っていってしまった。
「友美?
どうしたの?」
「すぐに宮殿に戻るようにって。
陛下自らお迎えに来ているわ」
「っ!?」
確かにビーチ添いの道の、少し離れたところに、彼のクラシックカーと彼のSPの車が停めてあるのが見てとれる。
ただごとではない予感に胸がざわつく。
「とりあえず行きましょう。
急いだほうがいいみたい」
「う、うん……」
SPたちに囲まれ友美に手を引かれながら、私は彼の車へと足早に向かった。




