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「はあはあ」
唾液まみれになった肉の刀身がぬらぬらといやらしい光を放って下腹部に張り付かんばかりに勃起していた。
私は唇から先走りの液と伝わり落ちていくことを気にする余裕もなく、息を弾ませながら彼のものに見入ってしまう。
魔法にかけられてしまったかのように、目を逸らすことができなくなる。
「いい子だ」
彼が低い声を震わせて頭を撫でてきたかと思うと、私の手をとって立ち上がらせた。
そのまま私を壁に押し付けて、両手を顔の左右について逃げ場を封じた。
「……っ!?」
これが……いっとき世を騒がせていた壁ドン!?
胸を高鳴らせている私に彼は口づけると、私の片方の足を抱え込んであげさせる。
あれ?
想像していたのと何か違うと戸惑っているうちに、ショーツの股布を片側へと寄せられ、露わになった秘所に彼の先端が食い込んできた。
「あっ!?
あ……あ、あぁあっ……!」
慌てて口元を塞いで、必死に声をこらえる。
信じられない。
まさかこんな場所で本当にしてしまうなんて。
慌てて身を振って逃れようとしたけれど、壁に押し付けられているため思うように身動きできない。
太い肉槍に深々と貫かれたまま、まるで標本にされてしまったかのような錯覚に囚われた。
「だ……駄目で、す……こ、声……我慢できそうに……ないですし」
「ならば、私が口を押さえておいてあげよう」
彼はそう言うと私の手を口から外して、代わりに自分の手で覆った。
彼の手は大きいので私の目から下をほぼすっぽりと覆う形となる。
壁に押し付けられた状態で彼に口を塞がれた瞬間、身体の奥底から妖しく淫らな衝動がこみあげてくる。
(なんだかこんな風にされるのっていつも以上にエッチな気がする)
気のせいかと思うも、今までにない胸の動悸をごまかすことなんてできない。
何かとてもイケナイことをされているような気がして不謹慎とは思うけれどぞくぞくする。
顔が熱くなって目がとろんとなってしまうのが自分でも分かる。
そんな私の顔をじっと見据えながら、彼は腰を注意深く動かし始めた。
「んっ!?
んくっ!
ンンン……ンンぅううう……」
いくら口を塞がれていても、どうしても呻き声は洩れ出てしまい気が気ではない。
とはいえ、弓なりに反った剛直は私の弱い箇所を穿ってくるため、どうしても感じてしまわずにはいられない。
互いにスーツ姿のまま、淫らな行為に及んでいる。
誰かに見られてしまいかねない状況下で。
そう意識すればするほど心身が敏感になっていって、彼の半身をはしたなく締め付けてしまう。
「やはり、君はこういうのも好きか。
つくづく我々の相性はいい」
「ち……違いますっ!
こ、こんなことが好きだなんて変です」
「私の目をごまかすことができないのは分かっているはずだ。
そもそも君の言う『変』とは『一般的ではない』という意味ではないかね?」
「あ……」
「私は君が変だとは思わない。
とてもいとおしく愛らしい女性だと思っている。
私とその他大勢、信じるべきはどちらかね?」
「そ、それは」
こんないやらしい行為をしながら真面目な話をする余裕なんてないのに、彼は淡々と私を諭しながら悠然とした抽送を続けてくる。
乱されているのは私だけという気がして悔しくてならない。
どうしてこんな時であってもクールでストイックでいられるのだろう?
「ナゴミ、 答えなさい」
「あ……あぁ……」
私が視線を床に落として唇を嗜みしめると、彼は私の跡を自分のほうへと向き直させて目の奥を真剣なまなざしで探ってきた。
真摯でありながら嗜虐性が垣間見える彼の双眸は、私の抵抗心を屈服させ酔わせて従わせようとする。
彼は私がこの目と彼の低く渋い声色で命令されることに弱いということを知っていて敢えてそうしているのは明白だった。
歯噛みしながらも、私は彼に従わずにはいられない。
「あああ……陛下……です」
服従の言葉を口にした瞬間、子宮が激しく疼いて、肉槍をさらに締め付けると同時に軽く達してしまう。
ああ、今のも彼に伝わってしまったに違いない。
どうしようもなく恥ずかしくて私はきつく目を瞑ると首を左右に力なく振った。
「いい子だ」
彼はそう言うと、再び私の口を押さえて腰を弾ませ始める。
だんだんと鋭く重い衝撃が子宮口へとめり込んできて、私は壁に背中を預けたまま身悶える。
「んくっ!?
ンンンっ!
んぅうう、んんん……」
肉棒に最奥を貫かれるのと同時にくぐもった艶声を洩らしながら、罪悪感と背徳感とに苛まれながら、彼と一緒にさらなる頂上を目指していく。
腰の奥に刻み込まれていく力強い淫らな律動が脳に揺すぶりをかけ、たちまちくるおしいほどの快感へと昇華していった。
「ンッ……ンンン!?
ンンーっ!」
すぐさま私は全身を激しく痙攣させながら絶頂を迎えてしまうも、彼の動きは一向に衰えることはない。
むしろさらに激しく肉棒を穿ち続ける。
いつもの彼ならまだまだこんなもので済むはずもなく、私が気を失うまで延々とストイックにピストンを続けるはず。
しかし、今回は状況が状況なだけにいつもと同じというわけにはいかない。
早めに切り上げなくては。
行為が長引けば長引くほど誰かに気づかれてしまう可能性が高くなってしまう。
と、私の動揺を見抜いたのか、彼は不意に動きを止めたかと思うと、私の身体を力いっぱい抱きしめて熱く長いため息をついた。
「へ……陛下?」
「満足したかね?
続きは帰ってからにしよう」
「え?
で、でも陛下はまだ」
「ああ、だが、問題ない。
ホテルに戻ってからじっくり君をいつも以上に味わわせてもらえれば済むことだ」
そう言うと、彼は勃起したままの半身を私の膣内から引き抜いてしまう。
引き抜かれる瞬間に甘い感覚がはしりぬけ、私はもう一度浅く達してしまい、恥ずかしい蜜潮が蛇口を軽くひねったかのように床へと音をたてて滴っていった。
「あ……す、すみません……」
慌ててハンカチを取り出して床を拭こうとするも彼に制される。
代わりに彼はポケットチーフで私の濡れた秘所を拭ってから自身を拭い、最後に床を拭き清めた。
そして、何事もなかったかのように涼しい顔で外で控えていたらしいハロルドさんを呼ぶとホテルに戻る旨を告げた。
その間、私はハロルドさんがさっきまでの行為に気づいてしまったのではないかと心配と不安に押しつぶされそうになって小さくなっていた。
幸い気づかれてはいない様子だったけれど、彼も陛下同様、ポーカーフェイスなのでもしかしたら気づいているのかもしれない。
どちらにせよ心臓に悪いことだけは確かで。
ただでさえパパラッチに追われているというのに、万が一、こんなことをしている写真などが流出でもしてしまったらとんでもないことになる。
(どうか陛下がこれに味をしめませんように)
私はそう祈る他なかった。




