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引き抜かれるときには腰が浮くような感覚。
奥に穿たれるときには、体の中心から揺さぶられて一瞬頭の中が真っ白になる。
鋭すぎる愉悦が幾度となく押し寄せてきてはさらなる高みを目指していく。
もうこれ以上は駄目だと思いながら昇りつめるのに、彼の猛々しいピストンはひるむことなく果敢に私を攻め続けてくる。
私は彼の膝上で身をくねらせながらたまらず彼にしがみついてしまう。
「はぁはぁっ……あぁっ、ん、あ、だ、駄目えっ……も、もう、変……に、なって。
あ、ああぁあっ!
ま、またぁあっ!
ン、んんんんぅううううっ!?」
「もっともっと乱れていい。
私のことだけを感じて、私だけにしか見せない姿を見せてくれたまえ」
「あああ、そ、そん、な……っ」
そんな風に言われると、余計に彼に痴態をさらけだしていることを意識してしまい、羞恥心が燃え上がる。
本当は彼にこそ恥ずかしい姿なんて見られたくないのに。
激しいジレンマに苛まされるも、取り繕う余裕なんてあるはずもなく、数えられないほど達してしまう。
絶頂を重ねるたびに、頭が朦朧として視界がぶれてくる。
恥ずかしいのに、もっともっとしてほしい。
そんな欲望が肥大していき、ワケが分からなくなる。
「ふっ……あ、あ、あぁあ……ん、う、うぅっ……も、っと……んんん」
気が付けば、唇からそんなはしたない言葉が吐息混じりに零れ出ていた。
慌てて口を塞ぎ、ぎゅっと目を瞑る。
どうか今の……聞かれていませんようにと祈る。
だが、彼は私の頭を丁重な手つきで撫でながら喜色を滲ませた声で囁いてきた。
「もっとしてあげよう。
全ては君のお望みのままに」
忠誠を誓う騎士のような言葉だが、それとは裏腹に彼は私の腰を抱え込むと、角度を変えて突き上げてきた。
「っ!? あぁあっ!」
出っ張りに弱点を抉られ、引き攣れた嬌声をあげながらイってしまう。
「あ、そ、そこ……や、あ、あぁ……っひ、あ、あ、あぁああっ!」
「ああ、知っているとも」
耳たぶを甘噛みされながら囁かれ、ねっとりとした腰つきで明らかに同じ箇所ばかりを狙って抉ってくる。
腹部側の膣壁。
私自身知らなかったのに、彼に暴かれてしまった秘密の場所。
そこだけではない。
首筋や背筋、耳など、特に敏感なところをあますことなく愛撫されながらの熱のこもった抽送にたちまち蕩けてしまう。
どうしてこんなにも彼は私の全てを知り尽くしているのだろう?
心も身体も彼のことで埋め尽くされている。
それなのに、どうして独占したいなんてことあるごとに言うのだろう?
もうとっくに彼だけのものになっているはずなのに。
切ない思いの丈を込めて、ぶれる視界の中、目を凝らして彼をじっと見つめる。
すると、彼は目を細め鷹揚に微笑んできた。
それはまるで子供のように無垢なもので、胸が熱く締め付けられる。
その次の瞬間、さらに力強く抱きしめられた。
同時に、一番奥を穿たれ、ひときわ強い痙攣がはしる。
限界まで張りつめきった糸がついにぷつりと切れてしまった。
ひときわ深い絶頂に、硬直しきった身体が弛緩する。
「はあ、はぁはぁ、はぁ……あ、あ、あ……」
乱れた息に、掠れて上ずった声が混ざる。
少し遅れて、彼の半身が雄々しくしなり、じわりと熱いものがお腹の中を満たしていくのが分かる。
一つに溶け合った実感を嚙みしめながら、彼の逞しい肩に頭をもたせかけた。
すると、彼はその長い指で私の髪を梳く。
いつものように優しく丁重に。
このひとときが私は何よりも好き。
柄にもなく、「時間よ止まれ」なんて無茶なことをつい願ってしまうほどに。
彼は深くつながり合ったまま、何も言わずに私の乱れた髪を指で梳き続ける。
穏やかな沈黙が心地よい。
甘えたい。
そんな思いに駆られて、彼の肩に頬を擦り寄せた。
彼は私の頬を指でくすぐると、こめかみにキスをして独り言のように眩いた。
「ようやく独占できた」
「ようやくですか?」
唇を尖らせて抗議のまなざしを向ける。
私はもうとっくに貴方だけのものになっているのにという思いを込めて。
しかし彼は苦笑して肩を竦めてみせるだけ。
「君には実に大切なものが多いからな」
遠まわしな言い方。
だけど、彼の言わんとすることは分かる。
家族や友人、のみならず飼い猫のことまで言っているのだと……。
恋人は別格で他とは比較しようがないものだし、飼い猫はそもそも論外というのがフツーだと思っていたけれど、彼にとっては違うのだろうか?
「ですから、それは陛下だって同じことでしょう?」
「いや、私には君しかいない」
「え?」
思わぬ返事に虚を突かれる。
私以外に大切なものは何一つない?
まさかそんなこと……。
きっと大げさに言っているだけに違いない。
そうは思うものの、彼の陰りを帯びたまなざしが気になって仕方がない。
もしかしたら本気で言っているのかもしれない。
そんな思いを拭いきれず、たまらず私は彼を抱きしめる手に力を込めた。
「……そんなことないはずです……きっと気づいていないだけです」
「だといいのだが」
どこか諦めきっているような彼の口調に胸がぎゅっと締め付けられる。
確かに彼の立場は特殊だから、私のような一般人の「普通」は当てはまらないのかもしれない。
トップは孤独とも聞くし……。
そう彼は何せ皇帝なのだから……。




