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一回り年上な皇帝陛下に溺愛結婚されました  作者: アルケミスト


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 果たして彼の行動は私の想像以上に早かった。


 思い立ったら吉日どころの話ではなく、


 彼は私との話を終えるや否や、すぐにハロルドさんに命じて会社を通して友美にアポイントメントをとり、パパラッチの目を逸らすための策を講じた。


 それこそ、私と朝食をとりながらものの十分程度で……。


 さまざまな問題に対処しなければならない皇帝にとってみれば、この程度は造作もないことなのかもしれないけれど、人の倍以上何をするにしても時間がかかる私からすれば驚異的なスピードこの上なかった。


 本当に同じ人間とはとても思えない。


 でも、考えてみれば、だからこそ彼は国を背負って立つにふさわしい人なのだろう。


 凡人と比べること自体がそもそも間違っている。


 スイートルームでのルームサービスで優雅な朝食をとりながら、ハロルドさんに次々に指示を与えていく彼に戦々恐々とする一方でつい見とれてしまった。


 いかにも仕事ができる大人という感じがして改めて惚れ直してしまう。


 しかし、私は失念していた。


 そもそも仕事ができる人というのは、相手から求められた以上の働きをすることを。


 私が勤めている会社はホテルから徒歩十分とかからない場所にある。


 にもかかわらず、彼はわざわざリムジンで堂々と乗り付けたのだ。


 パパラッチの目を逸らすために、私と彼のフリをしてくる役者さんたちを乗せたもう一台別なリムジンを先に行かせた上で。


 あまりにも大胆不敵な行動に慄くあまり何も突っ込めずにいた私を伴って、彼はリムジンから颯爽と降り立った。


 そんな彼をビルの玄関前にずらりと居並んだ重役の面々が出迎える。


「お、お目にかかれて光栄です……皇帝陛下……」


「こちらこそ。

 ミスター野瀬木、いきなりの申し出にもかかわらず、ご多忙な中、時間をつくっていただき感謝しています」


「いえいえ!

 そんな陛下のご要望でしたらいくらでも」


 いつもいかめしい表情で偉そうだった社長が、彼の前では平身低頭で握手に応じているのを私は信じられない思いで眺めていた。


 っていうか、なぜ社長まで出てくるわけ!?


 アポイントメントっててっきり友美にだけだとばかり思っていたのに。


 でも、考えてみれば、友美一人にアポイントメントをとるなら別に会社を通す必要もないわけでホテルに招けばいいだけのこと。


 今更のようにそれに気づいて彼を見上げると、彼は口端をわずかにあげてみせた。


 してやったりという風に。


 あああああ、何か企んでいるのは分かっていたけれど何もできなかった自分が恨めしい。


「私の婚約者がこちらでお世話になっていたと話を聞きまして、ぜひご挨拶をさせていただきたく思ったのですよ」


「そ、それはもう!

 和クンは我が社でも非常によく働いてくれていまして……我が社の誇りです!」


 社長……私みたいな末端社員のことなんて絶対覚えていないはずなのに。


 まるでよく見知った直属の部下のように私を呼び、これでもかというほどよいしょしてくるなんて思いもよらなかった。


 しかも、我が社の誇りとか……どの口が言うのか!?


 社長の後ろにいる本当の直属の上司をチラ見すると、ものすごく焦った表情で目くばせをよこしてきた。


 とにかく口裏を合わせてくれと言わんばかりに。


 な、なんだろう。


 この茶番は一体。


 こんな小さな人にあれだけ悩まされてきたのかと思うと途端にバカらしくなる。


「で、では、とりあえずまずは社長室へご案内しましょう。

 その後、社内を見学していただいて……夜はぜひ一緒に会食でも……全て用意してございますので」


「いや、その前に事前にお願いしていたとおり会議室をお借りしたい。

 ナゴミは何よりもまず友人に自分の口から我々の婚約を伝えたいそうですか」


「は、はいっ!

 それはもうっ!

 会議室とは言わず社長室をぜひ使ってください!」


 社長にかぶせるように彼は言い放つと、勝手知ったる自分の会社のように堂々と私をエスコートしていく。


 彼がその広い肩で風を切って歩いていく先々で、皆が慌てふためきながら道を譲っては恭しく頭を下げる。


 まるで時代劇の一場面、モーゼの十戒のようにも見えて変な笑いがこみあげてくる。


 本当に一体これは何のコントかと。


 それにしても、社長たっての誘いを無下に断って友美を優先してくれるなんて。


 少し焦りはしたものの、正直ものすごくうれしかった。


 私が苦笑しながら彼を見上げて目で感謝の気持ちを伝えると、彼は相変わらずのポーカーフェイスのまま私の手を握り締めてくれた。


 なんだかそれだけで妙に泣けてきてしまって視界が滲む。


 私は慌てて斜め上を見上げると、必死に涙を乾かすことに努めた。


 満身創痍に等しかった自尊心がじりじりと癒されていくのを感じながら……。


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