不器用な想い
その日、ねぇちゃんは早く帰ってきた。
「たまには手料理を食べてもらわないとね」
そう言うねぇちゃんの手には、今日の料理に使うであろう具材が入った手下げ袋。
ぎこちなくエプロンを身につけ、台所に立つ。
数分後、不慣れな手つきでまな板に包丁を落とす音が、かすかに響いてきた。
少し焦げた炒め油の匂いが、廊下に漂っている。
それを見て言った。
「何作るの?」
ねぇちゃんは正直、料理が下手だ。
そんなねぇちゃんが何を作ろうとしているのか、ちょっと気になった。
「カレーだよ。カレー好きでしょ?」
それはきっとまずい。分かりきっている。
でも……カレーは好きだ。
だからその言葉にちょっとだけ期待している自分がいた。
「どうせまたコンビニで買ったもので済ませようとしてたんでしょ?」
「いいじゃん、別に。いつものことだし」
返事をする前に、部屋に入ろうとした。
ドアを閉める前に見たねぇちゃんは、どことなく寂しそうな目をしていた。
台所の明かりに照らされた横顔が、廊下の暗がりににじんでいた。
僕はその顔を見た時、気づくのだ。
心の奥に無理やり閉まっている「ありがとう」に。
でもそれは口には出ない。
そう……ただ静かに後悔になって蓄積していくだけなんだ。
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※この短編にあわせて制作したインスト曲をYouTubeで公開しています。
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[不器用な想い](https://youtu.be/bUy4qPj7mbM)




