表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/11

IFルート2:「変化なき世界、静謐の終末」

IFルート2:「第三の選択 “人間”ミナの物語」


この第三の選択は、魔王編とも神編とも違う、「何も起こさなかった」からこそ意味を持つルートです。

静かな終末こそが、最も観測者の心に爪痕を残す 儚くも美しいバッドエンド――。


兄・優斗の死の後、世界の人々はミナに跪いた。

彼女を「神」として崇める者。

彼女に「魔王」として復讐を望む者。

選ばれし者だと、誰もが口をそろえた。


だが、ミナはこう答えた。


「私は何者にもならない。ただ“私”として生きる」


 


彼女は剣も冠も受け取らなかった。

代わりに、誰も見向きもしなかった東の荒野に移り、

倒れた子供を拾い、弱き者に手を差し伸べ、小さな畑を耕した。


世界の大勢はミナの選択を嘲笑った。

「英雄の妹が隠遁生活だと?」「逃げたな」

けれど誰も気づいていなかった。


 


ミナの存在によって、世界は崩壊から救われていたことに。


 


観測者・優斗はそれを“外側”から静かに見ていた。

妹が何も選ばないことで、世界が“崩壊も奇跡も起きずに済んだ”という不思議な平衡状態を保っていたのだ。


だが、それは“観測者の目的”を果たせないということでもあった。


 


観測するべき「変化」が起こらない。

「奇跡」も「滅び」も訪れない。

世界は“静かすぎる”のだ。


 


その結果――

観測者の上位存在・**監督者オーバーシアは、

「この世界は必要ない」と判断し、“削除”**を決める。



優斗はそれを止めようと奔走するが、

観測者には干渉権限がない。

ただ見届けることしかできない。


 


そして、世界の終末の日――


ミナは子供たちと焚き火を囲みながら、静かに歌を歌っていた。

その瞬間、空が白くなり、すべてが崩れていく。


 


「……来たんだね、兄さん」


 


世界が塵となっていく中、ミナは空を見上げた。

観測者として立つ優斗の姿が、遠くに見える。


そして、彼女は笑った。


 


「私の世界は、優しかったよ」

「きっと、誰かの中に残ってくれる」


 


その瞬間、世界は完全に“観測の外”に消えた。


優斗はただ一人、無の領域で立ち尽くしていた。

観測者としての“存在理由”を一つ、失った虚しさと共に。




けれど――ほんの一瞬だけ、風が吹いた気がした。


どこからか、“ミナの歌声”が聞こえたような気がした。

終わりなき選択の果てに、彼らが辿り着いたのは、ほんのひとときの静けさでした。

傷ついた世界も、壊れかけた関係も、簡単には戻らない。

それでも、それでも——手を取り合うことだけは、まだできる。


監督者の沈黙が意味するのは、観察の終わりか、それとも新たな始まりか。

答えは誰にもわからないまま、IFは静かに幕を下ろします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ