第二章:過酷な世界と最初の別離
神に導かれるようにして転生した新たな世界。
だが、それは救いではなく、新たな試練の始まりだった――。
二人の兄妹に迫る運命の影を、少しずつ紐解いていきます。
第二章:過酷な世界と最初の別離
森を抜けるまでに、三日かかった。
野草を食べ、濁った水をすすり、獣の咆哮を聞きながら、兄妹は命を繋いだ。
そして四日目の朝、ようやく道に出ると、 一台の馬車が現れた。
「……町か!? 町ってあるんだ、この世界にも!」
優斗は必死に手を振り、馬車を止めた。
胡散臭そうに彼らを見る商人に、何とか言葉を通じさせ、町の場所を聞き出す。
目的地は「ディアノス」。この辺りではそこそこ栄えているという。
道を進みながら、二人は久しぶりに笑った。だがそれは、ほんの一瞬の安堵だった。
町に着いた時には、すでに陽は傾いていた。
だが、宿には金がいる。二人の手元には、何もない。
「俺……この町で何とかする。少しでも稼いで……宿代を」
「私も……役に立ちたい」
「ダメだ、ミナ。危ないことには関わらないでくれ」
けれど、現実は過酷だった。
優斗は通りで物乞いをしたが、誰も立ち止まらなかった。
その間に、ミナは姿を消していた。
夜になってようやく見つけた妹は、華やかな衣装に身を包まれ、店の裏口に立っていた。
化粧をされ、笑うように言われた顔はどこか虚ろで――
「お兄……ちゃん。ごめんね。私……役に立ちたくて」
「誰にそんなこと……させられたんだ……!!」
その日、優斗は店の男に殴られ、血を流して倒れた。
それでも立ち上がり、妹を抱きしめる。
「こんなこと、しなくていい……お前は……ただ、生きていれば、それだけでいいんだ……」
だが、優斗の願いは叶わなかった。
数日後、ミナは連れ去られた。
目撃者は「東の谷を越えた場所にアジトがあ
る」と証言した。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
この章では、新たな世界での違和感や変化を描きながら、少しずつ真実に近づいていく過程を描いています。
次回もお楽しみに!