表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/11

IFストーリー:4「転生の果て、ただ誰かを想う」

2人とも記憶を失った転生世界」のIFストーリーを文章として丁寧に書き出します。

世界が終わった。

 神も、魔王も、観測者も、すべてが役目を終え、

 ふたりは“まっさらな存在”として、新たな世界に転生した。


 


 名前も、記憶も、絆さえも失って。


 


 少年は「ユウ」と名づけられた。小さな村の片隅で、誰よりも優しい心を持つ青年に育った。

 一方、少女は「ミナ」と名乗っていた。遠く離れた街で、夜空を見上げることを好む、不思議な瞳の持ち主だった。


 


 ふたりは、出会うべくして出会う。

 世界を巡る旅の中で、偶然にも同じ宿に泊まり、偶然にも同じ夢を見た。


 


 ――炎に包まれた塔。

 ――血に染まった兄の胸。

 ――神として崇められる少女の瞳。


 


 夢の意味はわからない。だが、胸が痛む。

 何かを、取り返さなければいけない気がした。


 


 ふたりは意気投合し、旅を共にすることを決めた。

 けれど世界の誰も、彼らがかつて“兄妹”だったとは知らない。

 彼ら自身も、それを思い出すことはない。


 


 だがある夜。焚き火の前で、ユウはミナに問う。


 「……なあ、ミナ。前にどこかで会ったこと、ないか?」


 ミナは少し考えてから、ふっと微笑んだ。


 「うん。なんとなく、そんな気がする」


 


 それだけだった。


 


 ふたりはそのまま旅を続けた。

 どこか切なさを残しながらも、笑い合いながら。


 


 観測者の視点は、そこにはない。

 奇跡も、滅びも、英雄譚もない。


 ただ、誰かの隣で目を覚まし、誰かと夕陽を見て、

 「生きている」と感じられる――そんな日々が、そこにあった。


 


 けれど、空のどこか。誰も気づかない高みから、微かな声が届く。


 「……ミナ。今度こそ、幸せに……」


 


 それが誰の声か、彼女はもう知らない。

 けれどミナは、涙をこぼした。


 理由もわからないまま、温かい涙だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ