第17話 愛するパートナーへ
通り魔にナイフで刺され亡くなったはずの涼子が鬼男達の前に出現。
だが、涼子はクロスが作った偽物の涼子であった。真実を受け入れられず、攻撃をためらう鬼男にカールは喝を入れる。
カール「いいか。次見つけたら躊躇無く倒すんだ。」
鬼男「俺には…できない。」
リリー「鬼男さん…」
カール「はぁ!?何言ってんだよ!お前の彼女はお前の知ってる彼女じゃないんだぞ?クロスとグルになってた、敵なんだぞ?」
鬼男「すまない。涼子はきっと……洗脳されているに違いない。」
カール「この期に及んで……何言ってんだよ…あいつは敵だ!」
鬼男「貴様に涼子の気持ちはわからん。横から口を挟むな。」
カールは鬼男の胸ぐらを掴み、鬼男に言い放った。
カール「んだとてめぇ……涼子の気持ちだぁ?んなもん知るかよ!てめぇがシャキッとしねぇーからだろ!いい加減切り替えろ!お前の知ってる涼子はもういねぇーんだよ!」
鬼男「それでも…それでもクロスから涼子を取り戻せたら俺は…」
カール「そうかい。よーくわかったよ。勝手にしろよ。バカ野郎が。」
カールはそのまま何処かへ行ってしまった。
リリー「カ、カールさん!?」
天子「カール!ちょっと見てくる。」
リリー「鬼男さん、いいんですか?」
鬼男「何がだ…」
リリー「本当にこれでいいんですか?涼子さんを助けられたとしても、もしかしたら裏切ら…」
鬼男「それは!それは…ないと信じたい。だから俺は…」
リリー「鬼男さん…」
鬼男「俺は、一人でクロスのとこに行く。」
リリー「いや、カールさんや天子さんを待ったほうが。」
鬼男「あいつらは、きっと来ない。だから俺一人で行く。」
リリー「鬼男さん!」
鬼男はリリーの言葉も聞かず、一人でクロスのいる所に行ってしまった。
その頃残党のアジトにクロスとマック、涼子が集まっていた。
クロス「にしても涼子の体、本当に完成度が高いな。」
マック「細部にまでこだわった。これが限界だろうな。」
クロス「…フッ…いい体してるぜ…よし、涼子、そろそろ行こう。やつを出迎えないとな…」
涼子「…はい…」
マック「完全にお前のもんになってるぞ。」
その頃鬼男はクロスを無我夢中で探していたが、そこにクロスが突然現れる。
移動する音「シュッ!」
鬼男「んっ?」
クロス「やぁ。誰をお探しかな?」
鬼男「クロス…」
クロスの隣には涼子もいた。
クロス「見ての通り、涼子は俺とマックが作った。無論、体だけな。魂は本人の物だ。マックが涼子の魂を呼び寄せて、手作りの器に魂を入れた。器が壊れれば魂はまた、さまよい続ける。ここまでで何か質問はあるかな?」
鬼男「マックとは誰だ?」
クロス「リリーという娘がいるだろう?そいつの父親だ。」
鬼男「そうか。ならば、潰すまでだな!」
クロス「ほぉ〜、ならば、この涼子がお相手しよう。男を落とす能力も凄いが、戦闘能力もずば抜けて凄いぞ。」
鬼男「んっ……」
クロス「行け。涼子。」
涼子「…はい…」
鬼男と涼子による、最悪なデスマッチが始まってしまった。
クロス「さぁて、お前に愛するパートナーを倒すことができるかな?」
涼子「……」
「ビューン!!」
鬼男「くっ!」
涼子「お願い…死んで…」
鬼男を刺そうとしたナイフで鬼男に攻撃をする。
「ヒュッン!!」
鬼男「涼子!こんなことはやめろ!お前と戦いたくはない!」
クロス「残念だが、君の声は涼子にはもう届かないよ。目的を果たすまで攻撃をやめない。止めたければ、涼子の器を壊すことだな。」
鬼男「貴様…」
涼子の攻撃を避けながら、鬼男は攻撃のチャンスを伺う。
涼子は間髪入れず攻撃を仕掛ける。
「ヒュッ!ヒュッ!」
涼子「お願い…死んで…死んで!」
鬼男「くっ!仕方ない…」
ついに涼子に打撃を食らわす。
鬼男「打撃魔法·爆撃波!」
「バゴッー!!」
強烈な一撃も涼子はあっさりとかわしてしまう。
「シュッ!」
鬼男「なっ!かわされた!ならば、これならどうだ!遠距離魔法·ファーストブレイク!」
「ブシュー!!」
だが、この攻撃もかわされてしまう。
「シュッ!シュッ!」
涼子「ごめんね…あなたの攻撃、遅いわ…」
涼子は物凄い速さでナイフを複数回突く。
「グサッ!グサッ!グサッ!グサッ!」
鬼男「くっ!かはっ!」
避ける暇もないぐらいナイフを突く。
「ヒュッ!ヒュッ!」
最後に涼子の強烈なケリが入る。
「バシュ!」
鬼男「うああ!あっ…くっ、くそっ…」
涼子「終わりね…さよなら…ハジメ…ううん…鬼男…」
クロス「いいぞ…やれ…」
その時クロスの後ろからカールがナギナタを持ってクロスに攻撃を仕掛けるが、クロスはそれを受け止める。
「ヒュッ!……ガキッン!!」
クロス「おやおや、カールじゃないか。」
カール「よぉ、クロスさんよぉ…ここで何してんだ。」
クロス「鬼男の最期を見届けにね。」
カール「そんなことしてる場合かよ。てめぇには俺の相手をしてもらうぞ。」
クロス「いいだろ。君にそんな力があればね。」
カール「なめんなよ。」
クロスはカールとの距離を離した。
「カキーン!」
二人は次なる一手を出すためチャンスを伺う。
「ザッ…ザッ…ザッ…」
「シューン!!」
クロス「はぁぁぁあ!!」
カール「はああああ!!」
クロスとカールはほぼ同時に手に持っている武器をお互いに斬りつけた。
「シュキーン!!」
クロス「はぁ…はぁ…はぁ…」
カール「はぁ…はぁ…はぁ…」
クロス「うっ…」
カールがクロスに勝利した。
カール「はぁ…やった… クロス、もうおしまいだ。観念しろ。」
クロス「フッ…まだ…終わっちゃいないさ…これからだよ…」
クロスは煙幕を撒き、カールの手から逃れる。
「ボンッ!」
カール「うわっ!マジか!くそっ、何も見えねぇ…クロス!逃げんな!」
クロス「はっはっはっ!! 油断は禁物だ!決戦の地で会おう!」
煙幕が消える頃にはクロスの姿はなかった。
カール「くそっ!逃げられた…」
勝負は鬼男と涼子に戻る。
涼子「終わりよ…さよなら…」
鬼男は必死に涼子の攻撃を避ける。
「シュッ!」
鬼男「はぁ…涼子、覚えてるか?初めて出会った時のことを。」
涼子「何。」
鬼男「こんな俺に唯一話しかけてくれた女性はお前だ。」
涼子「何なの。」
鬼男「お前と楽しかった日々は今でも覚えてる。俺が人間だった頃の涼子との楽しかった日々は1日だって忘れたことはない。」
涼子「何が言いたいの。」
鬼男「だが、一度死んだ者は二度と生き返らない。俺に今出来ることは、涼子の魂を成仏させること。」
涼子「何を…する気…」
すると鬼男は両手を胸の前で合わせ、地面から魔法陣を出す。
鬼男「これで最後だ。浄化魔法…永遠の眠り…」
「シューン!」
涼子「あっ…あっ…」
鬼男「さよなら…涼子…永遠に眠れ…」
涼子「あああ!やめてっ!」
鬼男「はぁぁぁぁぁあ!!」
涼子「あああああっ!」
すると涼子の身体はパズルのように崩れ去り、魂だけが空高く上がっていった。
最後は亡霊となり、鬼男の前に現れる。
「パァー」
涼子「ハジメ。」
鬼男「涼子…」
涼子「ありがとう。」
鬼男「ああ…空から見守っていてくれ…」
涼子「うん!じゃあね。」
涼子の魂は空高く上がり、雪のように散っていった。
「シューン…パァーン…」
涙をすする音「ぐすっ…」
鬼男「うぅ…涼子…」
カール「おーい!鬼男!」
リリー「鬼男さーん!」
天子「鬼男!」
鬼男「ぐすっ… みんな…」
リリー「涼子さんは…」
鬼男「成仏したよ…俺の手で…」
リリー「あっ…」
カール「そうか…」
鬼男「このまま放っておいたら俺はいつまでも前に進めなかった。みんなのおかげだ。ありがとう。」
リリー「いえ、鬼男さん自身で決断して決めたことです。鬼男さんは立派です。」
天子「そうね!」
カール「だな。俺の喝が効いたってことだなぁ〜」
天子「あんたもたまには役に立つことがあるのね〜」
カール「なんだよそれ〜」
鬼男「ははっ。」
カール「よし!景気づけにラーメン食いに行こう!」
天子「またラーメン?もういい加減飽きたんだけど。」
リリー「じゃあ、スイーツ食べに行きません?」
天子「スイーツ!?いいわね!甘いの大好き❤️」
こうして鬼男と涼子の戦いに幕が下りた。一方、クロス達は。
クロス「はぁ…はぁ…」
マック「よっ。派手にやられたなぁ。」
クロス「マック!なんで来なかった?」
マック「お前ならうまく逃げると思ったから行く必要ないと思った。」
クロス「ったく。涼子がやられた。次の刺客は用意できてるのか?」
マック「ああ。」
クロス「計画を少し変更する。奴らの戦力を落とすより直接里を襲う。」
マック「それは前から決まってただろ?」
クロス「里を襲うタイミングを少し早めるのさ。だが、まだその時じゃない。合図はこちらが出す。いいな?」
マック「わかったよ。」
次なる刺客を送り込むクロス。里の危機は徐々に迫ってきている。
天鬼族襲撃まで残り…5日




